【かき氷シリーズ】カーテンとかき氷
今日は町内の祭りだから
それで晩御飯お願いね
部活から帰ってきたら、その置き手紙が台所に置いてあった。
そうか、今日は町内の祭りか。
毎年恒例、お母さんが「せっかく町内会費を払ってるんだから」と、晩御飯を夏祭りで振舞われるご飯で済ませる日だった。
小さい頃はおめかしして行った日もあったけど………まぁ、このままジャージでいいや。
もぅ食べ物でてるだろうし。
祭りといえば聞こえは良いが、この町内の夏祭りはどちらかと言うと祭りに似せた大きいバーベキュー大会のようなものだ。
町民はタダで(とは言っても町内会費から出ているのだけれど)食べられる。
おかわり無料。かき氷も食べ放題。
焼きそばと焼肉はおっちゃん達が焼いてくれたのを紙皿でもらう。
ドリンクはクーラーボックスの大きいのに入っている缶や、ペットボトルを各自でプラスチックのコップに入れて。
お祭りみたいに食べ歩きが出来るのは、かき氷ぐらいなものか。
到着すると、公民館の縁側が開放されて出入り自由になっている一階の席はすでに満員だった。
隣の家のおじさんが焼いた焼肉と焼きそばをもらい、かき氷にレモンシロップをたっぷりかけて、二階へ上がる。
二階の和室では小学生たちがはしゃいでいるが、穴場なのは集会室の方だ。
ここは長机が並んでいるから、小学生も鬼ごっこで追い詰められた時にしか来ない。
すでにエアコンがついていて涼しい。適当な長机の上に食事を置く。
誰かがいたのだろうけど、下ではそろそろビンゴ大会が始まるから、もぅここには誰も来ないだろう。
スマホ片手に、友達の様子をインスタで眺める。
私は見る専。
紙皿の焼肉を上げたって虚しぃだけだし。
これが彼氏となら、まぁ、映るんだけど。
「ミヤ?」
誰に呼ばれたのかと振り返ると、透也がいた。
「………とうや?久しぶり〜。透也も晩御飯?」
中学校の卒業式以来だから、半年ほどぶりに顔を合わせる。
中2の時から話さなくなったから、話すことはもぅどのくらいぶりなのだろう。
向こうも突然の再会に驚いたのか、私の名前を呼んでからはぎこちなく隣の長机に食事を置いて座った。
「いや、こっちの机に来なよ。久々に話そ〜よ」
「………おう」
と、透也が食事を移動させた時
○△※□!!!
突然、鬼ごっこで追い詰められた小学生が乱入してきた。
「お姉ちゃんたち!そっちのカーテンに隠れて!!」
「お姉ちゃんたち“おとり”ね!私達はこっちのカーテンに隠れるから!!!」
3人組の女の子達が、早く早くと私達を立たせて、集会室のカーテンへと押しやろうとする。
「はやく!◯□※!!」
なんのはなしですかと訊ねる隙もなく、私達はカーテンの裏に押し込まれた。
「どこだーーー!!!かくれたって……むだだーーー!!」
私達が囮になったのも虚しく、女子たちが入った方が暴かれた様だった。
再び騒ぎながら集会室を出ていく小学生たち。
私達は小学生が出ていってからも、動かずにいた。
「そ、そ〜いえば保育園の時『カーテンで遊ばない』って男子たちが怒られたことあったよね」
無理やり思い出した思い出を無意味に話しながら、私は透也との気まずい距離から離れようとした。
「美也」
そんな私の腕を取って、カーテンの裏へと透也が引き留める。
思わず、身体が動かなくなる。
嫌じゃない。
けど、こわい。
「美也が好きだ。ずっと、話したかったけど、美也が好きだって気づいてから、増々話せなくなって」
私は下を向いて固まっていた。
中2の、遠足の時を思い出す。
「ず、るいじゃん。私が告白してきた時、断ったくせに」
「………」
ちがう。こんな事言いたいんじゃない。
今でも透也が好きだよ。
毎朝透也が自転車で通るのを確認してから家を出てる。
大好きなのに、もぅ話せないのが苦しかった。
そんな言葉たちは、全部私の涙となってこぼれていく。
「美也。ごめんな。」
好きだ
と、私の顔を上げて目を合わせてくれた透也の顔は、あの頃より少しだけ大人びて。
私は、声にならないかわりに透也の唇を受け入れた。
「かき氷の味がする」
「そういえば、残りもう溶けちゃってるよね」
かき氷のカップの周りには水たまり。
その光景を確認した私達は、もう一度キスをした。
《今週の三題噺》
1.食べ歩き
2.水たまり
3.カーテンで遊ばない
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