【掌編小説】明日の朝は
小さいルーズリーフみたいなサイン帳を引っ張り出す。
そこの1ページに書かれた、かわいい文字。
「LET IT BE」
書かれている内容は可愛くない。と、少し笑ってしまった。
────
いつもは寝る時に通知をオフにしている。おやすみモードにして寝るから、誰の通知も届かない。
眠れない日は、あと三十分、あと三十分、とおやすみモードを解除しながらスマホを触っている。
目に良くないのはわかっているけれど、眠れない夜は人恋しいから誰かの目にとまってほしくて呟くのだ。
♪
「LINE」の文字の最初に“n”が入る、独特な通知音が響いた。
時間を確認すると2時。
通知音と共に見えたポップアップの名前と文章に、思わず隣で寝ている夫の寝息を確認する。
そしてそのままスマホをおやすみモードにして、まだ人恋しさが残る中私は眠りについた。
【今度、仕事でそっちに行くんだけど会わない?】
翌日の午前中。
既読が付いても彼に気づかれないであろう時間に、LINEを確認する。
半年前、同窓会で話した時にもうすぐ子供が産まれると言ってなかったか。
夫婦共に子育てしていればこんなLINEも送ってよこす暇などないだろうと、説教したくなる気持ちを抑えて画面を閉じた。
私は私で、すぐに断らないのは……
学生の時の様に「毎日同じ事の繰り返しでつまらない」と言うつもりはないが、それでも、大人になっても日常を抜けたい時はある。
大人としての役目
妻としての役割
母親としての責任
私はそれらに大して違和感を感じている訳ではないが、それでも、今私が背負っているものを置いて自分の為に時間を使いたくなる。
自分の役割に違和感がある人は、私が感じているよりも遥かに現状から逃げたいのではないだろうか。
なる程、そこに「自分が良い」と言われると揺らぐのか。
すぐに貞淑な妻よろしく断りの返事を返さないのも、正直、この誘いに乗れば何が待っているのかという興味が消えないからだ。
返事をしない間は妄想できる。
スーパーで歩きながらそんな事を考えていると、焼きそばパンが目にとまった。
サイン帳の
『LET IT BE』
の文字を思い出す
購買で買った
焼きそばパン
を2人で食べた昼休み
ロールパンと、焼きそばの麺を手に取る。
明日は久々の家族揃っての休日。
朝ごはんは焼きそばパンにしよう。
ヤスさんのお題企画です
#木曜日は3ースデイ
《今週の三題噺》
1.サイン帳(卒業前にまわすやつ)
2.焼きそばパン
3.深夜2時のLINE通知音
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