【感化小説】コウの独白(¬PERFECT World another)
「パン屋のマナカさんの“丸ごと板チョコパン”が大ヒットしたから、その御礼セールやってるんだよ」
ナユリが嬉しそうに話す時は大抵パン屋の話だ。
半年前に私が村へ調査に来た時も、なんだったら2年前に来た時もパン屋の話をしていた。
この子は将来パン屋になるのかもしれない。
……そうだな。この子は庇護されているより、自立した人生の方が似合うのかもしれない。
なんて願うのは、私が自由ではないからなのだろう。
唯一と言っていい監視カメラのない部屋は元首の部屋だけ。
そしてそこに入れるのは、私とドクターだけ。
誰も信用しない元首から、私は少しばかり信用されているのだろう。
「過去に人体実験の為に人を集めた村々をまわって、国家に叛くパーフェクトがいないかどうかを調査している。」
というのは表向きの理由で、本当はとある女性を探している。
この村に来たのも、最初は捜索の為だった。
はぐれもののパーフェクトが、世界からはぐれている呪われた種族のこの子に恋をするなんて、なんて皮肉だろう。
『パーフェクト』
大規模な世界大戦を経て変わってしまった地球の環境に適応できる人類を造ろうと考えられた人間の事だ。
脳や体の一部にチップを組み込み、過酷な環境に耐えられる体や驚異的な脳の処理が可能となる。
とある組織の軍事目的で開発されていたが、今はある事件をきっかけに壊滅して、私の上司となった元首がパーフェクトたちを束ねてパーフェクトの国を作っている。
元首は生まれ育った環境のせいか、他人を信用しない。
機能的に自分より優れている者たちが部下なのだから、そうなるのも必然なのかもしれない。
監視カメラだらけの生活。
だけでは飽き足らず、元首は最近技術が復活しつつあるAIも利用しようとしている様だ。
ゆくゆくは私達が生まれたのと同じように研究施設をつくり、今度はAIが組み込まれたチップを埋め込もうとしているらしい。
AI搭載のチップが脳内にあるのは…さすがに、それはもうヒトと言えるのだろうか…肉体の持ち主の自我はどうなるのだろう。反対する身内も多くなりそうだ。
でも、人を信用しない元首らしい。
元首が少しだけ信用している私でさえ、いつの間にか元首と思いを違えているのだから、元首の行動も間違いではないのだ。
私は元々焦がれていたはずの太陽を、元首と同じように捜索する意義を失っている。
ナユリの笑顔だけが生きがいだ。
「ねえ、コウさん。今日は私の家でご飯食べて行きますか?珍しくお米が手に入ったんで、今日はおにぎりを作っちゃいます」
腕まくりをしてか弱い腕を力強くみせる仕草。
強がりが多いナユリだけれど、私の前では素の表情が多い事は私のナユリへの独占欲をくすぐらせる。
ただ、ナユリのお兄ちゃん、すごい敵意を私に向けてくるから笑いそうになって対応に困るんだよな。
私の事を男性だと思っているから、ナユリが懐いていて警戒しているんだろう。
まわりも、そんなケンが面白くて放っているフシがある。
まぁ、男性でも女性でも、私がナユリに抱いている好意は兄として警戒するべきものなのは間違いない。
「今夜はご相伴にあずかりますか。また明日から砂漠旅だから、ありがたいよ」
ナユリが周りに素直になれるまで。
それまで、見守るだけだから。
私は、ナユリの幸せを祈るだけで幸せなんだ。
※こちらの小説の前日譚です。
(昨年、2024年の創作大賞への参加作品です)
紫吹はるさんのTalesでの2025年創作大賞エントリー作品
『恋をしたのは画面の向こう側の人でした』を読んで、感想を書くというよりかは自分の子たちを動かしたくなりました。
noteの引用で呼び出しておいて、オリジナルを読まされて #なんのはなしですか と疑問符がいっぱい浮かんだことと思います。失礼いたしました。
理由は前記の通りです。
「ここが好き」
「あれが好き」
「ここはこうじゃないか」
と感想や考察をアウトプットするより、はるさんの作品に感化されて私の中で鮮明になった子たちを
「はるさんの作品を読んだのがきっかけなんですよ」
って伝えたかったからです。
この伝え方をご不快に思われたのなら申し訳ございません。創作活動の誤発信と捉えていただけるとありがたいです。
紫吹はるさん、自身で作品を創作大賞にエントリーされながら、 #創作大賞感想 も書くという事もされています。すごい・・・
さて、実はもうひとつ忍ばせているものがあります。
ヤスさんの三題噺
《今週の三題噺》
1.おにぎり
2.監視カメラ
3.大ヒット御礼
私事ですが、今年2025年は、創作大賞にオリジナル作品はエントリーしていません。
昨年から『¬ PERFECT World』の続編を考えているのですが、動かないのです。
動かないけど書き続ける。
その根性が私にはないなと思って放課後ライティング倶楽部に飛び込んだものの、結局ゆるゆるとやってるんですけどね(苦笑)
はるさんの作品を読んだことで鮮明になった子たちの話を、ヤスさんの三題噺に絡ませてみました。
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