遺稿から エンゲルス [ドイツ雑記]

「遺稿から エンゲルス [ドイツ雑記]」は、1500年から1873年頃までのドイツの歴史的発展、政治的分裂、社会・経済構造、および宗教・文化の特質について、エンゲルスが書き留めた草稿やメモをまとめたものです。。

主な内容は以下の通りです。

1. ドイツの政治的分裂と中央集権化の失敗(1500年〜1789年)

  • 国民国家形成の遅れ: 15世紀末、フランスやイギリスが中央集権化し国民国家を形成していたのに対し、ドイツは分裂が進み中央権力が弱体化していました。

  • 原因: ドイツ(神聖ローマ帝国)がフランス人やスラブ人の地域を含み、イタリアやローマを支配しようとしたことで、純粋な国民的集合体になれなかったことが挙げられます。また、封建制度の発展が他国より遅れたこと、各地方が相互に孤立していたことも要因です。

  • 皇帝と教皇の対立: 中世の文化闘争(叙任権闘争など)がドイツとイタリアを細分化させました。特に教皇はイタリア統一の障害となり、半島を横に切断する存在でした。

2. 宗教改革と農民戦争の挫折

  • 宗教的な革命形態: ドイツ市民階級による革命は、時代背景から宗教的形態(宗教改革)を取りましたが、帝国騎士、市民、農民という3つの身分の利害が対立し、互いに足を引っ張り合う結果となりました。

  • 領主の主導権: 市民的な宗教革命が去勢されたことで、最終的には諸侯(領主)が主導権を握り、領土の支配者が宗教を決定する(領邦教会制)という形に落ち着きました。。

  • 経済的衰退: 世界の通商路がドイツから奪われたことで市民の力は粉砕され、ドイツは孤立した一地方へと押し込められました。

3. 30年戦争と諸侯の専制

  • 内乱と外国の介入: 30年戦争(1618-1648年)によりドイツは荒廃し、フランスやスウェーデンの介入を招きました。

  • ウェストファリア条約: この条約により、ドイツ諸侯は外国と自由に同盟を結ぶ「内乱と反逆の権利」を認められ、国家としての統一性は完全に崩壊しました。。諸侯は自国の利益のためにドイツの土地をフランスに売り渡すことさえありました。

4. 18世紀後半からナポレオン時代への転換

  • 理論への逃避: 現実の政治・経済が停滞していたため、ドイツ人の情熱は現実から離れた理論(ライプニッツからヘーゲルに至る哲学)や音楽(バッハ、ベートーヴェンなど)の領域へと向けられました。。

  • ナポレオンによる救い: ドイツ内部からの救いは不可能であり、外部(フランス革命とナポレオンの侵入)によって初めて旧来の腐敗した体制が打ち破られました。。ナポレオンは諸侯に対して常に「革命家」として振る舞い、小邦の整理などを行いました。

5. プロイセン軍と近代ドイツの諸相

  • プロイセン軍の性格: プロイセン国家は軍隊を必要としましたが、軍隊の本質(国民の防衛)と国家の政治的野心の間に衝突が生じていると分析されています。

  • ドイツ語と世界貿易: 19世紀以降、ドイツの商人が世界各地に進出したことで、ドイツ語は英語に次ぐ世界貿易語としての地位を獲得しました。

  • プロテスタンティズムの意義: ドイツのプロテスタンティズムは、キリスト教を歴史的・哲学的に批判・克服するための科学的な土台を提供した唯一の形態であると評価されています。。

6. 社会的暗部:人間と売春の輸出

  • 悲惨な輸出産業: 1848年頃、ドイツの主要な輸出項目は「人間」でした。通常の移民に加え、貧しい娘たちが「家庭教師」などの口実で騙され、当局の見逃し(収賄)のもとで、北欧やロシア、アメリカなどへ組織的に売春婦として送り出されていたという暗い歴史が詳述されています。。

要約すれば、この資料は、ドイツが長期にわたる分裂と停滞をどのように経験し、その中でいかにして理論や文化を発展させ、最終的に外部からの衝撃と独自の軍事的・経済的発展を通じて近代へと移行していったかを、エンゲルス独自の歴史観で綴った記録です。

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