『振り返れば、奴がいた。語らなかった者が、すべてを見ていた』
これは──
あなたの職場にも、
思い当たる話ではありませんか?
少しだけ、思い出してみてください。
声の大きい人が正しくて、
沈黙していた人の方が、すべてを見ていた……
そんな場面を。
では、お話を始めましょう。
**「振り返れば、奴がいた」**
構文で描く、静かな終わりの物語です。
『振り返れば、奴がいた。下僕構文と構造の終わり』
王様気取りの外様、
声が大きいだけで、正しさを手に入れたつもりだった。
大義名分を、振りかざす。
書類の山。指差す手。並べた言葉。
誰もが、黙って従っていた。
「正しさに、逆らってはいけない」
それが、ルールだった。
……いや、**ルール“に見えただけ”**だった。
やる事だけが、増えていった。
本質とは遠い。
でも「忙しいこと」は、正しさの証明になった。
手を止めた者から、責められた。
そして、
失敗は静かに、土に埋められた。
名前のないまま、二度と掘り返されることはなかった。
……ただ一人を除いて。
俺は、奴の沈黙を引き継いだ。
俺は、見ていた。
誰もが目を逸らした埋葬を。
無駄を一つ、増やす。
「これもやって」
「これくらい当然でしょ?」
「できるよね」
そんな言葉が、重なっていった。
増えるたびに、手は塞がれ、
減らす声は、悪意とされた。
……でも、奴は思っていた、かも知れない。
一つ、増やすなら。
三つ、減らせ。
火を運ぶ奴の手は、
両手とも塞いじゃいけない。
増える会議、増える仕事。
見えない成果。
重なってるはずの指示が、
なぜか全部「優先」だった。
本当は、削れば良いだけなんだよな。
五つのうち、
四つは、言い回しを変えただけの同じこと。
一つに、できた。
いや、最初から、一つでよかった。
……でも誰も、言わなかった。
社畜と化した者たちは、
「正しさ」に逆らうことを、最初にやめた。
逆らう以前に“問い”を持っていなかった。
昼休みに誰も喋らなくなった。
だから、構造は腐った。
静かに、下から。
書類は、増えた。
指示は、増えた。
声も、圧も、会議も、増えた。
減ったのは、ひとつだけだった。
「誰も、何も感じていない」という空気だけが、濃くなっていた。
王は、まだ指を差していた。
「この数字は?」
「この報告は?」
「何度言えばわかる?」
……でも、誰も怒られた気がしていなかった。
ただ、
“音が鳴っている”ようにしか聞こえなかった。
みんな、従ってはいた。
でも、従っているフリだけが上手くなっていた。
そこにあるのは、“服従”ではなく、
“同調の演技”だった。
誰も止めなかった。
王は、机の資料を持ち、
新たな“正しさ”の場所へと向かった。
奴は、王の指が震えるのを見た。
ほんの一瞬、誰よりも人間らしかった。
誰も引き止めなかった。
そのとき、奴が言った。
……いや、言った気がしただけかもしれない。
「外様は、渡り鳥になるんだな......」
奴は、王の背を見送った。
止まらない下落チャートとともに、
渡り鳥になる、その音を聞いた。
──上場企業という名の劇場にて
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貴殿のチップで文学フリマ、そのうち出店してるかも。