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#68「皇妃エリザベート」

世に多くのエピソードを提供した、
ハプスブルク家史上もっとも美しいといわれる皇妃の生涯を興味深く描く。
19世紀後半の激動するヨーロッパ情勢を活写した図版も多数収録。


◎目次
第1章 放浪する皇后
第2章 皇帝の"一目惚れ"
第3章 皇妃の暗闘
第4章 ハンガリー王妃
第5章 孤独な妖精
第6章 近代の先駆者
資料編 エリザベートの虚像と実像

Amazon商品レビューより

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ミュージカルを見て、さらに知りたいと思ったので…とは言っても、難しい歴史書ではちょっと飽きるだろうなぁ、と思い手にしたところ、小説風となっていて、とても読みやすくスラスラと進んだ。

個人的に、史実を極端に曲げたものや、架空の人物がでてくるようなドラマチックな演出は抵抗があって、できれば史実に忠実な物語りが好きだ。

その点、この本は、適度に小説っぽく物語りを作ってはいるが、史実に正確で、かつ、わかりやすく描かれている。

エリザベートと、その周辺の人物、家族関係、ハプスブルク家について理解できるし、民衆運動が活発化して、各地で様々な革命が怒涛のように起こる19世紀のヨーロッパの様子も説明されていて、世界史の案内書としてもいいかもしれない。


育三郎トート&花總様が素晴らしかった
帝劇リニューアルが待ち遠しいです


美貌で名を馳せたオーストリアの皇后エリザベートなのだが、そのストイックな美の追求は誰もが知る話だろう。過酷なダイエット、体操室を作り、熱心に取り組む話、170センチを超える長身で、ウエスト50センチ⁉️体重50キロ以下…というスタイル…

なぜ、こんなに「美」に執着したのか?


そして、なぜ、生涯の多くの時間を「旅」に費やしたのか?その果てに、彼女は何を見つけたのか?

その過程が描かれている。

4人の子を授かりながら、恋多き女、一方で、旅から旅を続けて詩作に没頭する夢想家、活発で自由闊達な様子は、少女のまま大人になったようで、強大なハプスブルク家の、しいてはオーストリア帝国の皇后としてはいささか、ワガママで未熟に見える。

常に誰かに傅かれ、誰かに承認してもらうことが自身の価値なのだと思い込む事が、後の彼女の不幸の始まりなのだろう。

権威と秩序をもって、己を律し、義務と責任を果たす事こそ使命である、その信念を貫く姑であるゾフィー、その意志をつぐ夫のフランツ…。一見すると、嫁をイビル意地悪な姑と、自由闊達な妻に翻弄されるマザコンの夫…そんな構図を想像しがちだが、それは安易な発想である。
ゾフィーは言う。
「その自由は正しいのですか?」
「義務を忘れたものは、やがて滅ぶのです。しかし、この事を知るのは、帝国が滅びた後でしょう。」



ミルクが無くて亡くなってゆく子供達がいる一方で、ミルク風呂につかる彼女。皇帝の一声で、戦場に散る多くの命…。度重なる戦争で疲弊する市井の人々の犠牲をよそに、晩餐会に明け暮れ、贅沢を続ける貴族…。なんだか、国は違えど、よく聞く話のようにも思える。そして、行き着く先は、みな同じ結果なのではないだろか…。

「祇園精舎の鐘の声…」で始まるあの唄を思い出すなぁ…。盛者必衰の理をあらわす…おごれる人も久しからず…。。。

時代は流れる…。
その流れを誰も止めることは出来ない。
ハプスブルク家の例外ではない。


愛する家族の多くを亡くし、帝国は滅亡の一途を辿り、歳を重ねて美貌を失い…晩年、旅路の果てにエリザベートのたどり着く答えを、本書より。

「自分を支え、満たすものは誰かの胸や、どこかの場所に存在しているわけではないのだ。それは、自分の内にしかない。孤独に耐えて自分を見つめ、充実させ、その中から発芽させて大きく育てていくしかないのだ。」

そして、一言、僭越にも付け足すと…。
「自由もどこかにあるものではなくて、自分の中にこそあるものだ。」と。

ゾフィーの言葉の意味とその重さを、改めて思い知る事になるエリザベート…。

遅すぎたと思ったのだろうか?いや、きっと彼女ならこの想いを胸に、もう一度生まれ変わって生きてゆこうと思ったのではないかな…そうやって生き抜いて、納得して旅立つのではないかな…とも思う。


ジュネーヴの街中で船に乗ろうと急ぐ道の途中、イタリア人の無政府主義者の若者に刺され倒れたエリザベート。犯行に使われた凶器は左心室を貫いたが、とても鋭利で傷口が小さかったため心停止まで時間がかかり、自身が刺されたことさえ気ずかずに、7、80メートルも歩き、話しもし、微笑むようにくずおれたそうだ。60歳。彼女は何を思っていたのだろうか…。納得のいく最期であったのだろうか…。

帰りをまつ夫のフランツ。
公認の愛人がいながらも、シシィ(エリザベートの愛称)の帰りを待つ夫。彼女の訃報を受けて、書きかけの手紙に付け足す…。
「僕があなたをどれほど愛していたか、きっと誰にも永遠にわからないよ。」

エリザベートを亡くしたあとも、戦争の荒波をくぐって帝国を支え続けた夫のフランツ。彼女を偲びながらも、「もし帝国が滅びるのなら、せめて品位をもって滅びなければならない」と語ったそうだ。
シシィの死から18年後、86歳で防御。肺炎で高熱を出すも、最期まで公務を続けたそうだ。そして、その2年後、帝国も滅ぶ。

人間の愚かさと不器用な愛し方が、悲しくもあり、残酷でもあるのだが、同時にとても愛おしくも感じられた物語りだった。

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フランツヨーゼフとエリザベート


シェーンブルン宮殿


晩年のエリザベートと暗殺犯のルイジルキーニ


画像はお借りしました。

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