エセ名古屋人、爆誕|〜「自分で決める」が苦手な私の、ちっちゃな挑戦〜
私は昔から、自分で何かを「決める」のが、少し苦手な人間でした。
……いや、正確に言うと、できることとできないことがある、と言ったほうが正しいかもしれません。 もちろん、自分で決めてやってきたことはゼロではありません。
でも、日常のちょっとした選択や、少なからず周りに影響することになると、急に弱くなってしまう。
高校を選ぶときも、仕事を選ぶときも、誰かが「これがいいよ」と言ってくれたレールの上を、さも「自分で選んだふり」をして歩いてきた。今思うと、日々の小さな「決める責任」を、そっと誰かに渡していただけだったのかもしれません。周囲の意見に波長を合わせて、選んでもらって、「わたしが決めた」と思って、生きてきた。
書いてみると、なんだかちょっと恥ずかしい。
そんな私が、今の仕事のあり方を見直す時期に入り、「日々の主導権をちゃんと自分で握りたい」と一念発起して、やってみたこと。
それが、「旦那に向かって名古屋弁を喋る」でした。
……ちっっっちゃ!!!
エセ名古屋人が仕掛けた、日常への「小さな実験」
なんで名古屋弁かというと、理由が2つあります。
1つは、わたしが愛知の「三河」育ちだから。そして愛知県が好きと豪語するほどに住みやすい。
愛知県って大きく「尾張(名古屋)」と「三河」に分かれていて、言葉も文化も少し違った一面があります。当然、私が普段喋るのは三河弁です。
でも、いつもの三河弁を喋ったのでは「いつもと同じ日常」のまま。それじゃあ実験になりません。だからこそ、身近だけど自分にとっては新しい挑戦になる、隣の「名古屋弁」をあえて選択しました。
もう1つの理由は、自分の「地元に対するもどかしさ」があったからです。
わたしにはありがたいことに全国に大切な仲間がいます。
でも、みんなに「愛知ってどんなところ?」と聞かれたとき、太平洋側で気候もあたたかめだし、関東と関西の間にあって便利だし……と、地理の良いところは浮かぶのに、いざ魅力を伝えようとすると、つい「ご飯が美味しいよ」くらいしか言えない自分がいて。
もっと自分が暮らす土地の深い魅力を、ちゃんと言語化できるようになりたいな
と思っていました。
もともと方言や言語の語源、歴史の繋がりみたいなものに興味があった、というのもあります。
そんなとき、YouTubeの「ゆる言語学ラジオ」というチャンネルにドハマりしまして。
語り部の水野さん(愛知県出身)が言うには、名古屋弁って、日本語の標準的な5母音「あいうえお」に加えて、[æ:](えぁー)、[ü:](うぃー)、[ø:](おぃー)という、まるで英語のような特殊な母音があるらしいのです。
「おみゃーさん(あなた)」「しよみゃー(しましょう)」といった独特の響き、口を横に開く発音のパターンが、実は8種類もある。
テレビのコメディに出てくるような「みゃーみゃー」だけじゃなくて、実はもの凄く奥が深い。その解説に急に脳が刺激されて、「ちょっと自分で決めて、口に出してみたい」と思ったんです。
決めたからには、即実行。
「今日のご飯、何にしてみゃーか?」
ぎこちなく、喉を横に開いて発音してみたわたしに、旦那は一瞬フリーズしたあと、笑いながら言いました。
「名古屋の人になっとるがね」
(・・・あんたもだがや。笑)
わたしの使い方は少し違っていたらしく、結果として「エセ名古屋人」が爆誕しただけだったのですが、自分で決めて、いつもと違う行動をしてみる。
これは私にとって、確かな「自分で世界を動かした」という小さな実験でした。
「今日も同じ一日だった」と、自分で可能性を閉じるのがもったいないから
なぜ、私がこんなちっちゃな実験を始めたのか。
理由は、毎日の「変わらないモヤモヤ」を解消したかったからです。
わたしが使っているのは「自分との約束を守る手帳」。
今年で2年目になります。 この手帳には「やってみたこと・新発見」という欄があるのですが、以前の私は、夜に手帳を開くたびによく手が止まっていました。
「今日も特に、何もやってないしな……」
「昨日とおんなじ、平坦な一日だったしな……」
そうやって、すぐネガティブに陥っては、変化のない毎日のせいにしていました。 でも今年、手帳のデザインが変わって、その欄の1行目、つまり「翌日にあらかじめ書ける部分(という設定)」にだけ、最初から薄く色が塗ってあることに気づいたんです。
まるで「ここは、あなたが新しく動く場所ですよ」と言わんばかりに。
あ、そういうことか。
この欄って、「今日あったこと」を後から思い出しながら埋める場所じゃなかったんだ。「明日、これをやってみよう」って、先に自分で決めて、前もって書いておくための場所だったんだ、と。
「自分にはできない、変われない」じゃない。
どうしたらできるのかを探す工夫を、私がしていなかっただけだ。
昨日と同じことだけを繰り返して、自分で自分の可能性を閉じるのって、めちゃくちゃもったいない。
看護師を辞めるレベルの大きな決断は毎日できなくても、「自分で決めて、やってみる」の練習なら、エセ名古屋人からでも始められる。そう思ったからこその、私の選択でした。
手帳に「明日やる小さな実験」を、1つだけ前もって書いておく
じゃあ、具体的にどうやってその「工夫」をしていくのか。 手順は、手帳に1行書くだけです。
夜、手帳を開く
「明日、新しくやってみる小さな実験」を、1つだけ前もって書いておく
翌日、それをゲームのように実行する
ポイントは、脳に「これならできそう」と思わせるくらい、ちっちゃい実験にすることです。大きな決断を毎日やっていたら、脳が疲弊して動けなくなってしまいます。
たとえば、
近所の人に挨拶するときに、いつもより「もう一言プラス」して話しかけてみる。
カフェで、普段なら絶対に頼まないメニューを注文してみる。
いつも歩かない道を歩いてみる
この「前もって決めて、やってみる」を繰り返して、手帳に書き残していくプロセスが、私の確かな自信になっていきました。
実は後日、大河ドラマ『花燃ゆ』を見ていたときのこと。井上真央さん演じる萩(山口県)の人が、名古屋弁とすごくよく似た響きの言葉を喋っている場面があったんです。
「あ、今の単語、名古屋弁と似てる……?」
気になって調べてみると、山口などで使われる「わや」や「わやくちゃ」という言葉が、実は名古屋でも使われていたりする。
名古屋の言葉って、関西のタイプにも、関東のタイプにも属しているようで、どちらでもない不思議な面白さがある。日本の真ん中だからこそ、いろんな言葉が混ざり合って、独特な進化を遂げたんだな、と。
地理的にはかなり離れているのに、もしかしたら言葉のルーツが、歴史の中でどこか繋がっているのかもしれない。そう思って地図を眺めた瞬間、点と点が線で結ばれたような気がして、言葉への好奇心が満たされると同時に、日本の良さに改めて気づく一歩になりました。
新しく動いてみたら、視点が変わる。世界の見え方の角度が、確実に変わるんです。
今夜、あなたの手帳に何を仕込みますか?
ただ、この名古屋弁の実験には注意点があります。
やりすぎると、ついつい「みゃーみゃー」「〜しやぁ」「〜みやぁ」が癖になってしまい、ふとした時にポロッと出てしまうんです(笑)。
自分本来の方言を喋るのとはわけが違うので、エセ名古屋人はひとまずここで終了。次は三河弁を極めたいですが、それはまた今度にします。
でも、今回のことでよく分かりました。 「自分を変えたい」「一歩踏出したい」と思ったとき、大きすぎる一歩は怖くて踏み出せなくてもいい。
できないできない、と諦めるのではなく、「どうしたらできるか?」をちっちゃく探していけばいいんです。
今夜、手帳をひらいて、明日の欄にひとつだけ「小さな実験」を前もって書いてみてください。
ちっちゃくていい。近所の人へのもう一言でも、あなたの方言でもいい(笑)。
人生って、ドラマみたいな大逆転劇だけで変わるものじゃない。 昨日と1ミリ違うことを自分で決めて、やってみて、「へぇ、面白いな」って手帳に書き残していく。その小さな「約束を守った経験」の積み重ねの先にしか、新しい毎日は待っていません。
ちなみに。 今これを書いている横で、旦那がわたしに向かって言いました。
「今日、何しよみゃー?」
……
うつっとるがね。
これからも、小さな挑戦を積み重ねていこうと思います。 そんなわたしの、小さな記録でした。
読んでくれて、ありがとうございました。
りな
