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​「借金してでももてなせ」 岩手沿岸の教えから学ぶ、これからの建設業界に必要な「顧客覚悟」

こんにちは!鈴木戒です。

私が大船渡青年会議所に所属していた際に、先輩から仰った「お客さんには借金をしてでももてなせと、母親から教えられた」という言葉が、10年経った今でも心に残り、激動の建設業界の生き残り戦略に通ずるのでは?と私見のnoteです。

​「東北人は我慢強い」とよく言われます。

​厳しく長い冬、厳しい自然環境と隣り合わせの暮らしの中で、「耐えて春を待つ」という習慣が粘り強さを育んできた——。確かにそれは一理あります。

​しかし、私が東北の現場や人々接する中で感じるのは、東北人の本質は単なる「忍耐」だけではないということです。その裏側には、**「身内や縁のあった人に対する、恐ろしいほどの情の厚さ」**が存在します。

​10年前、岩手県大船渡市出身の先輩から、非常に興味深い話を聞きました。

その先輩はお母様から、幼い頃からこう言われて育ったそうです。

​「我が家に来た客人は、借金してでももてなせ」

​一瞬、耳を疑いました。現代の感覚からすれば「そこまでしなくても」「コンプライアンスやコスト管理はどうなるんだ」と思うかもしれません。

​しかし、この言葉の背景にある三陸沿岸の風土と、厳しい海と共に生きてきた人々の気質に思いを馳せたとき、私はこれが現代の建設業界に最も不足している「ある要素」を鋭く突いていることに気づきました。

​沿岸部に根付く「圧倒的ギブ」の精神

​大船渡をはじめとする三陸沿岸地域は、大漁に恵まれることもあれば、荒れる海や自然災害と常に隣り合わせの地域です。だからこそ「一期一会」を大切にし、遠くから訪ねてきてくれた人には自分の生活を切り詰めてでも最善を尽くすという「振る舞い(もてなし)」の文化が深く根付いています。

​ここで重要なのは、「自分の苦労や予算の都合(我慢)は決して相手に見せず、目の前の相手に最高のものを提供する」という姿勢です。

​「借金してでも」というのは、本当に無計画な借金をしろという意味ではありません。「自分たちの都合を理由に、相手を絶対に粗末に扱うな」という、圧倒的な義理堅さとプライド(面目)の表れなのです。

​では、この教えを現代の建設業界に置き換えたとき、私たちは何を学ぶべきなのでしょうか。

「ただ建てる」から「事業パートナー」への変革期

​今、建設業界は大きな転換期を迎えています。

資材高騰、人手不足、発注者側のニーズの複雑化——。かつてのように「発注された仕様通りに、安く早く建てる(請負)」だけのビジネスモデルは、限界を迎えつつあります。

​これからの建設業、特に営業やコンサルティング、あるいはPPP/PFIをはじめとする官民連携事業において求められているのは、発注者や事業主の「真の課題解決に伴走するパートナーシップ」です。

​しかし、実際の現場ではどうでしょうか。

​「それは契約範囲外なので対応できません」

「予算が足りないので、提案はここまでです」

​もちろん、ビジネスとしてのラインを引くことは大切です。しかし、発注者(自治体や事業者)の多くは、建設や事業計画のプロではありません。巨額の投資を前にして、大きな不安と孤立感を抱えています。

​そんな時、型通りの対応しかしない建設会社に対して、発注者は本当の信頼を寄せるでしょうか?

​ここで生きてくるのが、大船渡の母の教えである**「借金してでももてなせ」=「手持ちのリソースの限界を超えてでも、相手の期待にコミットする覚悟」**です。

​現代の建設業における「もてなし」の再定義

​建設業界における「もてなし」とは、単なる接待や宴会のことではありません。

​「発注者が抱える不安や課題に対して、自社の持ち札だけで満足せず、他社連携・最新スキルの習得・提案のブラッシュアップという『自己投資(=持ち出し)』をしてでも、期待を超える価値を届けること」

​これこそが、現代の建設ビジネスにおける「もてなし」の本質です。

​自分の時間やエネルギーを投じて相手の事業を勉強し、発注者自身すら気づいていない課題に対する解決策を提示する。自社が得をするかどうかの計算よりも前に、「この事業を成功させたい」という相手の想いにどこまで寄り添えるか。

​「手元にある予算やリソースの中でこなす」のではなく、「足りないものは自分が汗をかいて(投資して)調達してでも、相手を満足させる」。この覚悟がある企業や個人にしか、これからの時代の深い信頼は集まりません。

​単なる「自己犠牲」で終わらせないために

​ただし、ひとつ注意しなければならない点があります。

昭和や平成の時代のように、ただ自分が身を削り、持ち出し営業(サービス残業や無償の追加工事)を繰り返すだけでは、会社も社員も疲弊してしまいます。これでは持続可能性(サステナビリティ)がありません。

​大船渡の教えを現代のビジネスに昇華させるためには、以下の視点のアップデートが必要です。

​昔の「もてなし」: 自分の身を削って相手に尽くす(一回性の美徳・自己犠牲)

​現代建設業の「もてなし」: 相手の期待を遥かに超える初期提案(ギブ)を行い、「この人(この会社)なしでは事業が成り立たない」という長期的・持続的な信頼関係(ストック価値)を構築する

​最初の「圧倒的なもてなし(ギブ)」は、巡り巡って「将来の特命受注」や「継続的なパートナーシップ」という形で、何倍もの事業価値となって戻ってきます。

​自己犠牲ではなく、**「未来の圧倒的な信頼を獲得するための、先行投資としてのコミットメント」**へと変換するのです。

​まとめ:信頼は「覚悟の量」で決まる

​技術やITツール、生成AIがどれだけ進化しても、最後に人が巨額の意思決定を下す理由は変わりません。

​「この人は、どこまで本気で自分の事業を考えてくれているのか」

​「客人は借金してでももてなせ」という地方の泥臭い教えは、ノウハウやスキルの前に、「お前は目の前の顧客に対して、どれだけの覚悟を持っているのか?」という本質的な問いを私たちに突きつけています。

​自社の都合や限界を理由に踏みとどまるのではなく、一歩踏み込んで相手のために汗をかく。

東北の厳しい冬と海が育んだこの温かくも厳しい人情の教えこそ、これからの不確実な時代を勝ち抜く、建設ビジネスの最強の戦略なのかもしれません。

お教えを頂いた先輩は独立をされ、そのお人柄の良さから地元の優良企業さんとのおつき合いをされておられます。また、従業員さんも集まっていると伺っております。
素敵な人には、自然と人が集まってくると実感をしています。


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