ベーシックアクセスって知ってますか?──ポスト資本主義を目指す、新しい分かち合いのかたち
私は、10年以上前に里山に移住して、農業をしています。
化成肥料も農薬も使わず、手間ばかりかかる農法です。
正直、経済的には豊かとは言えません。
でも、命の重みと向き合いながら過ごす毎日は、静かに確かな実感をもたらしてくれます。
そんな暮らしの中で、私はある問いに導かれるようになりました。
「人は、どうしてこんなにも“お金”に縛られて生きているのか?」
儲からなければ、価値がないのか?
自分で野菜を育てていても、それが“お金にならない”と、生活は立ち行かなくなる。
目の前に食べものがあるのに、「売らなければ生活できない」──そんな矛盾に違和感を覚えます。
誰かの役に立つ仕事をしていても、生活は苦しいまま。
生きるための技術があっても、それを評価されるのは「儲かるかどうか」でしかない。
そして、それは農業だけでなく、医療・介護・教育など、いわゆる“エッセンシャルワーカー”と呼ばれる人たちにも共通する現実ではないでしょうか。
社会にとって本当に必要な仕事ほど、お金という物差しでは測られにくい──そんな逆転が起きているのです。
そうした現実を目の当たりにする中で、私は一つの仮説にたどり着きました。
お金という仕組みそのものが、幻想なのではないかということです。
もちろん、お金は今の社会を動かす上で、必要な道具です。
でも、その“道具”が、いつの間にか“神”のようにあがめられ、人の命より重く扱われてはいないでしょうか?
そして、この流れは今、ますます加速しているように感じます。
「分かち合う社会」へのヒント
そんな思索の中で、私はベーシックアクセスという構想に出会いました。
この考え方は、海外の研究者や思想家のあいだで少しずつ語られはじめているもので、私がAIとの対話を重ねるなかで深く共感し、自分の言葉で捉え直したものでもあります。
よく似た言葉に「ベーシックインカム」があります。
でも、「ベーシックアクセス」はそれとは大きく違います。
それは、お金を配るのではなく、必要なものに直接アクセスできる社会システムのことです。
たとえば、農作物やエネルギー、住まい、学びや医療……
人が生きるのに本当に必要なものを、貨幣という“幻想”を介さずに分かち合う社会。
「そんなの理想論だ」「現実的じゃない」と思われるかもしれません。
でも、AIが進化し、生産や管理の多くを代行できるようになる今だからこそ、こうした社会の実現が可能になっていくのではないでしょうか?
むしろ、技術の進化が、私たちにまったく新しい“分かち合いのしくみ”を選択する力を与えつつある──そんなふうにも思えるのです。
今こそ、私たちはもう一度問いなおす必要があると感じています。
「人は、なぜ生きるのか」
「何を得たら、ほんとうに“豊か”になれるのか」
これから、少しずつ、この「ベーシックアクセス」という考え方について、綴っていきたいと思います。
むずかしい理論ではなく、畑の上で感じたこと、AIとの対話で言葉になったことを、一つひとつ、ていねいに語っていきます。
どうか、心のどこかで「おかしいな」と感じているあなたに届きますように。
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🔸筆者について
恵良裕一郎(えら・ゆういちろう)
ファーマー/ライター/哲学者
佐賀の里山で農薬や化学肥料に頼らない農業を営みつつ、思想・教育・文明のこれからを模索する「農ある暮らし」を実践中。
自然と対話し、AIと共に未来を考える「実践的哲学者」。
現在は、AIとの対話から生まれた連載記事や著作を通じて、新しい思考の扉を開く活動に取り組んでいます。
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