恋するプリンとゆるルン密着旅 40 ご褒美
夜になってオレが編集作業を始めるとリンは領収書などを整理している。
「さすが社長、しっかりしてますねえ」
「タクちゃんの意地悪、そんな呼び方はしないでよ」少しだけ頬が膨れた。
「リンはどうしてユーチューバーになったの?」
「うーん…………」頬杖をついて遠くを見る様に少し考えている。やがてこっちを向くと徐に答えた。
「津波の後、ボランティアにキャンピングカーメーカーの人達が来てて社長さんと仲良くなったんだ。災害の後は小さいキャンピングカーがとても役に立ったの。
高校を卒業してこれからどうしようと思ってた時に、また社長さんと偶然会ってキャンピングカーで旅するユーチューバーの人の動画を見せてもらったんだ。
それで、自由に旅をしてそれが仕事になるのっていいなあと思ったわ、地元にいるのは色々と思い出して辛かったから、何処かへ出て行きたいと思ったの。
そしたら社長さんがユーチューバーになったらって勧めてくれたの、凛ちゃんなら人気が出るよって言ってくれたわ」
「そしてユーチューバーのいるオフィスを知ってるから紹介してくれるって。
ちょうどキャンセルになったこのキャンピングカーも見せてくれた。
実家の土地が売れたり生命保険やいろんな補助金なんかもあって、おじさんが協力してくれたから、なんとかこのキャンピングカーを買うことができたの。
でも、車の免許を取ったけど運転が下手で慣れるのに凄く時間がかかったわ。
それにユーチューバーのオフィスでも撮影や編集を覚えるのにとても時間がかかったの私おバカだから」リンは少しだけ笑っている。
「初めは動画を誰も見てくれなくて大変だった、でも社長さんがスポンサーになってくれて、キャンピングカーの展示会やイベントに呼んでくれたから、少しづつ広まったの」
リンは展示会やイベントの時の画像を懐かしそうに見せてくれた。
「でも、初めは収入が低かったから道の駅とかに泊まって、食事は夜のスーパーの半額になったお弁当かインスタントラーメンだった。でも見てくれる人が少しづつ増えるのが嬉しくて必死に頑張ったのよ」
リンは褒めて欲しい子供のような目をしている。オレは涙がぽたりと落ちた。
「リン、リンはすごいな…………大きな悲しみと、沢山の試練と、そして耐えられない程の寂しさの中でもしっかり生きてきたんだなあ…………なのにオレはリンの何万分の一の苦労さえしてないよ」
改めてリンの優しい眼差しを見たら、まるでダムが壊れたように涙が止まらなくなった。
「でも、もう寂しくないよタクちゃんがいてくれるから」
「こんな世間知らずの何もできないオレで本当に良いのかよ」
「うん、だってタクちゃんは神様からのご褒美だもん」
「えっ……どう言う事?」
「タクちゃんの自転車にぶつかる前、何日も嫌なことがあって辛くて寂しくて耐えられなかったから『神様なんとかして!』ってお願いしたんだ。そしたらタクちゃんと出会って一緒に旅することになったでしょう?」
「えっ…………」
「運命の出会いだって思ったから、少し強引だと思ったけど一緒に旅することにしたんだ」リンはイタヅラっぽく笑った。
「そうだったのか、だから積極的だったのか」オレは色々と思い出してなんとなく納得した。
「オレがご褒美なんて価値がなさすぎるよ」
「でも、タクちゃんは私を一生好きでいてくれるんでしょう」
「ああ、それは約束するしリンが幸せになるように頑張るよ」
「だったらやっぱりご褒美だよ」
リンは嬉しそうに抱きついてくる。
オレは心の中でリンのご褒美になれるように頑張ろうと思った。
