エストニア共和国のe-Healthについて
(エストニア共和国政府公式Fact-Sheet日本語訳)
エストニア国立保健情報システム(HIS)は2008年より稼働している。医療機関はすべてHISに接続されており,患者の健康データは中央集約的に保存される。診療・治療報告や退院サマリー,紹介状,画像診断レポート,診療手技報告書など,160万件を超える各種文書が同システム内に蓄積されている。
エストニア・ゲノムセンターは国民の5分の1に相当する規模のゲノムデータを収集している。本データはパーソナライズド・メディシンの基盤として活用され,ゲノムデータとHISに蓄積された診療情報を組み合わせることで,個別化された診断および治療の提供を可能にするものである。
エストニアの電子行政における基本原則として,これらのデータは当該市民本人に帰属するものである。すべての医療提供者は健康情報をHISへ送信する義務を負い,HISへのアクセス権は認可を受けた医療従事者のみに付与される。また,患者は自身の中央データベース内に保存された情報の閲覧権を有し,必要に応じてデータを非公開(オプトアウト)とすることも可能である。さらに,患者は自身のHISアクセス履歴を確認できる。健康データおよび医療eサービスは,患者向けポータルサイト(www.terviseportaal.ee/en/) を通じて利用可能である。
e-Health Record(e-ヘルスレコード)
エストニアにおいて医師を受診したすべての国民は,各自固有のオンライン・e-Healthストーリーを保有し,受診履歴を追跡可能である。中央データベースには約130万人の患者について文書が登録されている。HISは国内の複数の医療提供者からのデータを統合し,2015年以降,99%の医療情報が電子化され,97%の病院退院サマリーが中央データベースに送信される体制を実現している。これにより,医師は検査結果やX線画像等の電子カルテ情報へ容易にアクセスできる。患者は自身および未成年の子どもの記録,さらに閲覧権限を付与された他者の記録にアクセス可能である。国民用ポータル(IDカード/m-IDによるログイン)を介して過去の受診履歴,現在の処方箋の確認,健康アドバイスの受領,新規受診予約などを一つの画面で一元的に管理できるのである。
e-Prescription(e-処方箋)
e-処方箋は処方箋発行・管理の完全ペーパーレス化を実現する集中型システムであり,エストニア国内で処方される医薬品の99.9%がデジタル処方箋を通じて提供されている。すべての病院および薬局がシステムに接続されることで,書類手続きや追加の受診負担を大幅に削減し,時間的・労力的コストを節約している。医師による電子処方の発行後,患者は薬局でIDカードを提示するのみで投薬を受けられる。薬剤師はシステム上で患者情報を取得し,薬剤を交付する。2019年1月にはエストニアとフィンランド間の越境デジタル処方箋サービスが開始され,フィンランドの処方箋をエストニア国内の薬局で利用可能とした。その後,クロアチア,ポルトガル,スペイン,ギリシャ,ラトビア,チェコ共和国,ポーランドにも相互運用性が拡大している。
Personalised Medicine(パーソナライズド医療)
エストニアでは,e-ヘルスレコードと国民の約20%を対象とするゲノムデータの蓄積に基づき,個人およびその親族の健康情報とライフスタイル・環境データを総合的に解析することで,各個人に最適化された予防策および治療計画を構築するユニークな機会を有している。国は2024年までにパーソナル医療サービスの提供開始を目指している。第1段階として,遺伝情報を活用した個別薬剤推奨および乳がんの予防・早期発見サービスが導入される予定である。
e-Ambulance(e-アンビュランス)
e-アンビュランスは,緊急通報の位置情報を30秒以内に特定し,最寄りの救急車に迅速に送信するクイックレスポンスシステムである。救急隊員は患者のIDコードを用いて,血液型,アレルギー,現行処方,直近の治療履歴,妊娠情報などの時間的要配慮情報を即座に参照できる仕組みである。
以上
参考資料:
エストニア共和国政府公式e-Health Fact-Sheet
file:///Users/makotosuhara/Downloads/253669-e-health-fact-sheet.pdf
