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「音を視る 時を聴く」坂本龍一展覧会から「時」とは何かと考える[2025/03某日]

前回は諦めた念願のこちらの展覧会、先日行ってまいりました。

なんというか、一言で言うと、感性の奥深いところを刺激されたような感じだった。

そもそもが、G-darkさんの記事で知ったので、紹介されている展示についてのみ知識がある状態で赴いたのだが、この展覧会は、五感で体感するというのが正しい。

私は、一番最初の展示「TIME TIME」の鑑賞に時間をかけた。
時間というものを3面のスクリーンと下に張られた水面、「夢十夜」「邯鄲」「宮田まゆみさんの笙の演奏」「田中泯さんの表現する人類」などで表現した作品だ。恐らく1ループ全て見ると1時間ぐらい。

水も、液体のままでは形を掴むことは難しいから、ある意味捉えられない「時」と類似性があるかもしれない。

「夢十夜」のパートでは、100年はなかなか来ないと評されている一方で、「邯鄲」のパートでは、粟が炊き上がるひと眠りの夢の中で、栄華の50年があっという間に過ぎていたという表現がなされている。時とは、長くて、短く儚いということなのだろうか。


もう一つ印象に残ったのが、後半のフロアの「Music Plays Images × Images Play Music」。本物のピアノの鍵盤が自動で叩かれて演奏されるのに重ねて、坂本龍一さんが演奏されている様子が投影される。また、スクリーンには、音の強さや音の粒が光で表現されていく。

本当は左のスクリーン越しに見ると、坂本龍一さんがピアノを弾いているように見える


2曲のうち、1曲は自分の知っている「The Sheltering Sky 」だった。


フィギュアスケーターの高橋大輔さんが以前プログラムで使っていた時があり、その際気に入ってよく聴いていた。1991年の映画音楽だ。映画はいつか観たいリストに入っている。

YMOのメンバーだったとか、戦場のメリークリスマスとか、ラストエンペラーとか、世界レベルで偉大で有名なことを断片的には知っているけれど、坂本龍一さんのことを好きなアーティストなどと言えるほど詳しくは知らない。それでも、時折心の琴線に触れてきたようで、少しは聴きかじっていた。

大河ドラマのサントラ、そんなに毎回毎回気にしている訳ではないのに、八重の桜のときはTSUTAYAで借りてきて、ウォークマンに入れてよく聴いていました。物悲しく重々しいのに聴かずにはいられないメインテーマ。心の奥深くにズーンと訴えかけて、何かを動かすような力がある。今回の展覧会を見てから、改めて聴きなおしている。

彼の作品年表を図式化した展示があり、彼は、本当に亡くなる直前まで、息をするように、日記を書くように、音楽を作り続けていたのだなということが分かった。圧倒的なアウトプット量だ。何に対してでも表現したいという意欲のある人なら理解できると思うのだが、アウトプットするためにはそれ相応のインプット量が必要だ。多作家、物凄い勢いで創作を行っている人は、恐らく、インプットの量も半端ないと思う。そして第一線で活躍を認められているような方というのはきっと、誰よりもインプットの質も量も長けているのだろう。

人生の時間には限りがあって、その終わりはいつ来るかはわからない。
(もちろん、明日すぐ命が無くなるとは思って生きていないけれど。)その有限の時間の中で、私たちはインプットをし、アウトプットをする。

大量の情報カードが並べられた展示。一つ一つの内容は細かく覚えてはいないけれど、概念的な内容が多かったような気がする。

情報カードが並べられている ※接写禁止

これは私の推測なのだけれど、音楽というのものは、何分何秒というのが割合はっきりわかるから、演奏するのにも、練習するのにも、例えば1日あたり何回とか、1時間あたり何回とかカウントできてしまう。ということは、病で命を終える日がそう遠くないとなった彼には、より鮮明にどの演奏も創作も練習にも使える時間がそう多くはないということを日々尚更感じていたのではないだろうか。

自分を振り返って悔いというのはないのだけれど、以前は、どこか、予行練習のように生きてしまっていたようなところもあった。それなりにやりたいこともやって忙しく仕事を中心に据えて生きていたけれど、去年の転換点から、少しずつ毎日を本番だと思って生きられるようになった気がする。その証拠に今は、物凄く時間の密度が濃い気がするのだ。今年が始まって、もう3か月目なのだけれど、行動したこと、触れた事はとても多くて、、。


少し深刻に感じ入ってしまったけれど、息抜きで、ちょっと奮発をして美術館のカフェ「二階のサンドイッチ」で、期間限定メニューのパフェを食べた。坂本龍一さんがお好きだった食べ物をチョイスした和風であっさり、さっぱりしているパフェだった。あんずのレモン漬けがとても美味しかった。

二階のZEN Garden Parfait

パフェを食べた後、美術館の中庭と、帰りの新幹線で、最近並行して読んでいる本のうちの1冊、若松英輔さんの「悲しみの秘義」に向き合った。

若松さんが2010年に奥様を亡くされて、耐え難い悲しみの中、そこからどのような心持ちで生きていくかという部分での気づきを様々な著述家や作品の言葉を引用しながら書かれている26編の短編だ。
自分のテンションが上がって明るい状態のときに読める本ではない。どちらかと言えば、少し悩みがあったり、苦しいなという状態の方が心に染み入り、癒しを与えてくれるような本だと思う。今、出会えて良かった本だ。

The Sheltering Skyをエンドレスリピートしながら、100ページほど、この本を読み進めた時間は、深く考えながらも、何とも落ち着いた心持ちでいられたような不思議な経験だった。

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