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ヨーロッパ的なるもの:小話33 チャイルド・ケア : “スクール・ラン”って何?

【 “スクール・ラン”って何?】

  英国では朝のラジオで、プレゼンターが「スクール・ランで忙しい皆さんーー」と言うことがあります。「スクール・ラン」、文字通りには「学校が走る」? 英国では、学校が移動してくる? そんなことはありません。

  これは親が子供を学校に、(多くの場合)車で送っていくことです。ちょっと信じられないかもしれませんが、英国ではかなりの親が子供の学校への送り迎えをしています。朝、学校の前を通りがかると、周囲にずらりと親の車が並び、校門の前が親の人だかりになっています。

 特に小学生はそうです。正確な統計はないようですし、地域による違いは大きいはずですが、イングランドでは子供だけで帰宅する小学生は1/4以下ではとの数字もあります。

  これは何かの法律や規則で決められていることではありません。親たちがこうする理由は、「様々な理由で子供が歩いていけない距離の学校へ行く必要がある、公共交通機関がうまくつながっていない、事故や誘拐他の恐れで通学路の安全が確保されていない」ことなどです。この最後の理由は、治安が芳しくない地域では深刻な問題です。

  西ヨーロッパ諸国と同じく、英国も共働き文化です。父親の90%、母親の75%が仕事を持っています。その中で子供の送り迎えをする。小学校の始業時間は、8:30~9:00、終業時間は15:00~15:30です。「パジャマ姿のまま子供を送ってくる親が増えた」と、眉をしかめた新聞記事を見たりすると、毎朝の各家庭の大騒動ぶりを想像することになります。

  共働きの内、子供一人の両親の50%がともにフル・タイムで働いているので、これは大変です。これに対し、「学校のクラブに参加させる、フレックス勤務を使って両親が交代で送り迎えをする、友人や親せきに頼む、ベビー・シッターに頼む」など、さまざまな方法を駆使して対応しています。もちろんWork from Home(在宅勤務)は大歓迎です。会社に行っている暇はありません。残業なんか不可能です。文字通り、親は学校へ走っていくために、ロンドンの地下鉄は、17時前からラッシュアワーです。

 社会がそれほど安全でないこともあってでしょう、英国社会は親の子供への責任を強く求めます。12歳以下の子供を、長時間、子供だけで家に置いておくことは許されません。いわゆる「鍵っ子」は法律違反なのです。その上での共働き文化。苦労は察するに余りあります。しかも16歳以下の子供でさえ!、一晩中、子供だけで家で過ごすことは認められません。「スクール・ラン」は法律や規則ではないのに対し、こちらは法律です。

 ただここが極めて英国的なところですが、その法律に12歳、16歳という数字は記載されていません。常識で判断されます。近所の人から通報などがあり、調査の結果、「親が子供を事故や健康上の問題が起こる状況に放置したとみなせば訴追する」と、英国政府はホームページに明記しています。

 今日も、8時半ごろになると、ラジオのプレゼンターは学校へ向かう車を運転しているリスナーに、「スクール・ラン大変だね。がんばれ」と励ましの言葉を送っていることでしょう。そのプレゼンターも同じ苦労を経てきたのかもしれません。

【著書紹介】
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  「ヨーロッパ 続 個性的な古楽器たち(初級)」
 ・既刊書
  「ヨーロッパ 個性的な古楽器たち(入門)」
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  「ヨーロッパ 本棚のつくる異空間」
  「ヨーロッパ アンティーク都市図の楽しみ」
  「ネオロンドンの足音」

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