欧州医療セクターの魅力と投資戦略
第1章:欧州医療はなぜ主力なのか?
こんにちは、フェルです。
今回は欧州の医療セクター(ヘルスケアセクター)が、
なぜ投資ポートフォリオの主力になり得るのか、その理由を一緒に掘り下げてみましょう!
医療・ヘルスケア産業は人々の健康と命を支える必要不可欠な分野であり、景気に左右されにくい「ディフェンシブ(防御的)」なセクターとして知られています。
特に欧州には世界をリードする製薬企業や医療機器メーカーが数多く存在し、このセクターは長期投資の観点から安定したリターンを期待できる主力候補です。

まず押さえておきたいのは、欧州医療セクターの世界における存在感です。2023年時点で世界の医薬品売上高の約49%を北米(主に米国)が占め、欧州は約23%を占めています。

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ロシュは強いものの、エリアで見ると欧州は2000年代以降、米国にトップの座を譲り、現在では中国にも新薬開発で追い上げられて第三位という状況です。
それでも依然として世界の約4分の1を占める市場規模と、約500億ユーロものR&D投資額(研究開発投資額)は無視できません。実際、欧州の製薬産業は売上に対する研究開発費比率が全産業中で最も高く、常に新薬開発に巨額の投資を行ってきました。

こうした継続的なイノベーションへの取り組みこそ、欧州ヘルスケア企業が長期に渡って競争力を維持している源泉です。
また、欧州医療セクターは株式市場においても大きなウエイトを占めています。例えばMSCIヨーロッパ指数(欧州の先進国約15カ国の株式市場を対象とした代表的な株価指数)におけるヘルスケアセクターの比率は約14%にも達し、金融や工業に次ぐ主要セクターの一角です。

具体的な企業名を挙げれば、
スイスのロシュやノバルティス、
イギリスのアストラゼネカ、
グラクソ・スミスクライン(GSK)、
フランスのサノフィ、
デンマークのノボ・ノルディスク
など、各国を代表する巨大企業が名を連ねています。これら欧州のトップ企業はグローバル展開しており、世界中で医薬品や医療サービスを提供することで安定した収益基盤を築いています。
ディフェンシブ性もこのセクターを主力たらしめる理由です。
実際、ヘルスケア株は過去の景気後退局面で相対的に底堅いパフォーマンスを示してきました。
例えば2000年以降、世界の株式市場がマイナスとなった年には毎回ヘルスケア株が市場平均を上回るリターンを出しました。
2022年前半のような株式市場全体が大きく調整した局面でも、MSCI世界ヘルスケア指数は-10.3%の下落に留まり、-20.5%下落した世界株指数に比べて下げ幅を半分以下に抑えました。

このように下落相場でもクッションの役割を果たしてくれる点で、医療セクターはポートフォリオの防御の要(かなめ)になり得るのです。
さらに欧州ならではの強みとして、各国の充実した医療制度と高い健康意識が挙げられます。
EU諸国は概して国民皆保険などの制度により医療アクセスが良好で、医薬品や医療機器の需要が底堅い傾向があります。またヨーロッパは高齢化が進んでおり、今後も慢性的疾患や先進医療へのニーズが増え続けることが予想されています。
高齢社会の進展により、慢性疾患(心疾患・癌・糖尿病・認知症など)への対策や介護サービスへの需要が一段と高まるため、医療セクター全体としても安定成長が見込まれています。

以上のように、欧州医療セクターは
・「必要不可欠なサービス」
・「世界的企業の存在」
・「安定した需要と収益」
・「下落耐性」
といった観点で、ポートフォリオの中核に据える価値がある分野になっています。
もちろんリターンを最大化するには慎重な銘柄選択が必要ですが、セクター全体として長期的な構造的追い風が吹いている点は、まず押さえておきたい主力たる所以でしょう。
第2章:なぜ今ヨーロッパの医療セクターが注目されるのか
前章で欧州ヘルスケアの基礎的な魅力を見てきましたが、
では「なぜ今、このタイミングで」欧州医療セクターに注目が集まっているのでしょうか?
ここでは最近の市場環境やトレンドに焦点を当て、欧州医療株が脚光を浴びる背景を探ります。
一つ目の理由は、コロナ禍後の調整を経てセクターが割安感を帯びていることです。
ヘルスケア株は2020~21年にかけて新型コロナへの対応需要で買われた反動もあり、2022年以降は伸び悩んでいました。実際、パンデミック後の需要急増に企業が対応するため在庫を積み上げた結果、その調整過程で22~23年に欧州の医療関連企業は一時的に業績低迷を経験しました。防御的と見られていた医療機器・試薬メーカーまでも売上減速に直面し、ヘルスケア株全体が「一時的にディフェンシブ性を喪失した」との指摘もあります。
しかし、その調整局面を経たことで需給面の過剰感が解消され、在庫も正常化に向かっています。2024年以降、欧州のヘルスケア企業は本来の安定成長パターンを取り戻しつつあり、業績回復への期待感から見直し買いが入りやすい状況と言えるでしょう。

株価バリュエーションの面でも、ヘルスケアセクターは歴史的に見て割安水準にあります。
米国市場の例ですが、2025年第二四半期にはS&P500に対する米ヘルスケア株の相対的なPER(株価収益率)が近年で最低水準に達しました。

これはインフレ抑制法(IRA)に基づく薬価交渉や特許切れ問題など、主に米国発の政策リスクが嫌気されたためですが、欧州の製薬企業も米国市場から収益を上げている以上、その影響で低評価に放置されてきた面があります。
「悲観のピークは過ぎた」との声が聞かれる中、割安な今の水準でヘルスケアに戦略的エントリーを検討する投資家が増えているのです。
二つ目の注目理由は、近年の革新的な医療トレンドや大型製品成功が欧州発で生まれていることです。
最たる例がデンマークのノボ・ノルディスクによる肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬)の世界的なヒットでしょう。


糖尿病治療薬として開発されたオゼンピックや肥満症治療薬ウゴービは「痩せ薬」として爆発的需要を生み、ノボ・ノルディスク社の業績と株価を大きく押し上げました。
同社の時価総額は2023年、一時フランスの高級ブランド企業LVMHを抜いて欧州トップに躍り出たほどです(その後LVMHが奪還する場面もありましたが、いずれにせよ欧州企業トップの座を製薬企業が争った事実は象徴的です)。投資家にとって、このGLP-1薬ブームは「医療セクターにもまだ巨大な成長余地がある」ことを再認識させる出来事でした。
ノボ社以外にも、イギリスのアストラゼネカが画期的な癌免疫薬を相次ぎ成功させたり、フランスのサノフィが免疫疾患治療薬デュピクセントでブロックバスター(大型医薬品)を創出するなど、欧州企業発のイノベーションが世界市場を動かしている事例が増えています。
こうした新薬・新技術の成功はヘルスケア株全体の注目度を高め、投資マネーを呼び込む追い風となっています。
三つ目のポイントとして、政策環境の変化も挙げられます。
欧州連合(EU)は現在、約20年ぶりとなる医薬品法制の大改革を進めており、2026年中の正式成立を経て、2028年の適用開始が予定されています。この改革では、新薬の承認審査期間の短縮、申請手続きの簡素化、市場アクセスの迅速化、供給網の強靭化といった構造的な見直しが盛り込まれています。特に、EU全域での医薬品アクセスの平等化や、ジェネリック医薬品の早期参入促進なども柱とされており、制度の実装次第では、欧州の製薬企業にとって長期的な事業環境の改善と競争力強化につながる可能性があります。

また各国政府もコロナ禍を経てヘルスケアへの支出を増やす方向に舵を切りつつあります。医療体制強化や創薬支援予算の拡充など、政策的な追い風が今後数年で強まるとの期待感も、投資家の関心を集める一因となっています。
もっとも欧州では慢性的に薬価抑制策(価格統制)が厳しく、新薬の上市も米国に比べて遅れがちという課題は残ります。実際、2018~2023年に世界で発売された新薬の販売額を見ると、米国市場が67.1%を占める一方で欧州主要5カ国は15.8%に留まりました。

この差は欧州各国の承認プロセスや保険償還の遅れ、価格交渉の長期化などが影響しており、企業にとって収益機会ロスとなっています。
しかし裏を返せば、今後欧州域内で承認・普及が進む余地が大きいとも言えます。政策改革によって欧州市場での新薬展開が加速すれば、ヘルスケア企業にとって新たな成長ドライバーとなるでしょう。
最後に挙げたいのは、欧州医療セクター内での構造変化です。
伝統的に制約産業(医薬品メーカー)が中心だった欧州ヘルスケア指数(Euro Health Consumer Index: EHCI)も、近年はバイオテクノロジーや医療機器、ライフサイエンス(研究用試薬や分析機器)企業の台頭で構成比が変わりつつあります。特に小型の創薬ベンチャーや先端医療技術を持つ企業が数多く誕生・上場しており、欧州の投資家もアクティブにそうした「次世代の担い手」を発掘しようとしています。直近では、低迷していた欧州バイオテク株指数が有望な治験結果や米国市場でのIPO再開の兆しを受けて反騰する場面もありました。
このように、欧州ヘルスケアセクター全体が新陳代謝を遂げつつある局面にあり、「今が将来のスター企業を仕込む好機かもしれない」という期待感も注目理由の一つと言えるでしょう。

以上まとめると、
・コロナ後の調整による割安感
・欧州発イノベーションの成功
・政策追い風
・セクター内構造変化
こうした要因が重なり、今まさに欧州医療セクターが改めてスポットライトを浴びています。防御一辺倒ではなく成長セクターとしての顔も見せ始めた欧州ヘルスケアに、投資戦略上注目が集まるのは当然の流れかもしれません。
第3章:欧州医療を支える国別の特徴と戦略企業
欧州と一口に言っても、国ごとに医療産業の強みや主要プレイヤーには違いがあります。
ここでは欧州医療セクターを語る上で欠かせない主要国の特徴と、
各国を代表する戦略的企業について見ていきましょう。国ごとの得意分野を知ることで、欧州セクターの全体像と多様性がより鮮明になるはずです。
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