ピエール・ド・マンディアルグ『城の中のイギリス人』
……澁澤龍彦に生田耕作。錚々たる顔ぶれの人が翻訳しているのだから、きっと面白いに違いない。しかし、彼らが執心した作家となると、無傷で読み了えることは到底できまい…… そんな勝手な懸念がピエール・ド・マンディアルグを遠ざけていた。そして、先日公共の図書館で偶然出くわした本書を思いきって開いてみれば、案の定初心者にはかなり「高尚」すぎた次第……
それでも何とか読み切ることができたのは、同じ訳者による『O嬢の物語』(ポーリーヌ・レアージュ作)で免疫があったからか、今回も巧みな翻訳が牽引してくれたのか、あるいは心の奥底に隠された「黒い神」が共鳴したためなのかもしれません。とりあえず、エロティシズムと残酷性を極めた小説というのはもちろんですが、20世紀版《青ひげの物語》という印象が強かった気がします。そして、何よりも作家の細密描写の技術のほうに興味を引きました。
「厳密一徹 Hostinato rigore」にもとづく幻視……
〔余談〕確か、作中に蛸が出てきたような。
アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ『城の中のイギリス人』
澁澤龍彦訳(白水社)
André Pieyre de Mandiargues, L'Anglais décrit dans le château fermé , 1953/1979
(作成:2012年8月5日)
アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ
André Pieyre de Mandiargues, 1909-1991
フランスの小説家。パリに生まれ、若い頃から写真家のカルティエ=ブレッソンや、シュルレアリスム周辺の芸術家たちと交友を深める。1946年に初の作品集『黒い美術館』を発表。その後も『城の中のイギリス人』、『海の百合』、『燠火』『オートバイ』(映画化邦題『あの胸にもういちど』)、『余白の街』(ゴンクール賞受賞)などの作品を発表し、長く華麗な文体で耽美と暴力とエロスを描く作家として人気を博した。1987年発表の『すべては消えゆく』は遺作。また、三島由紀夫の戯曲『サド侯爵夫人』をフランス語訳したことでも知られる。
(光文社古典新訳文庫刊『すべては消えゆく』、著者紹介)
