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夏休みの北米旅行、東京直行便・台北・ソウル・香港経由便比較分析〜2026年夏ダイヤに見る航空アライアンスの北米戦略〜


東アジアから北米へ、東京直行便だけが選択肢ではない

夏休みに北米へ旅行する場合、日本在住者にとって最も一般的なのは羽田・成田からの直行便だろう。しかし航空券価格やマイル、旅程によっては、台北、ソウル、香港を経由するルートも選択肢になり得る。東京・台北・ソウル・香港はいずれも太平洋横断路線の大きな拠点だが、各都市から北米へのネットワークを調べると、その性格は大きく異なっている。

欧州路線を比較した前回の記事では、フランクフルト、パリ、アムステルダム、ヘルシンキなど欧州側のハブ空港へ、東アジアの各航空会社がどのように旅客を送り込んでいるかという構図が見えた。北米では、東京のANA・United AirlinesとJAL・American Airlines、ソウルのKorean Air・Delta Air Linesといった太平洋共同事業(JV)の存在感が大きい。一方、台北では台湾の航空会社3社が競い、香港ではCathay Pacificが巨大な自社ネットワークを展開する。今回は2026年夏の1週間を切り取り、その違いを比較してみたい。

まず数字で見る東京・台北・ソウル・香港

比較対象は2026年8月17日(月)から23日(日)までの1週間とした。東京は羽田・成田、台北は桃園、ソウルは仁川、香港は香港国際空港を対象とし、米国本土・カナダ・メキシコへのノンストップ定期旅客便を集計した。ハワイ、グアムは除外している。コードシェア便は便名ではなく実際の運航会社で1便と数え、各航空会社がこの時点で加盟するアライアンスに分類した。STARLUX、ZIPAIR、Air Premiaなど三大アライアンス非加盟会社は「その他」とした。2026年8月12日時点で公表・販売されているダイヤを基準とした筆者集計である。

東京 Star Alliance 210便/oneworld 133便/SkyTeam 42便/その他36便/合計421便
ソウル Star Alliance 72便/oneworld 13便/SkyTeam 161便/その他36便/合計282便
台北 Star Alliance 112便/oneworld 0便/SkyTeam 48便/その他29便/合計189便
香港 Star Alliance 35便/oneworld 117便/SkyTeam 7便/その他7便/合計166便

総便数では東京が週421便と圧倒的で、1日平均約60便が北米へ向かう。ただし東京ではStar Allianceが49.9%、oneworldが31.6%、SkyTeamが10.0%、その他が8.6%で、最大のStar Allianceでも過半数に達しない。これに対してソウルはSkyTeamが57.1%、台北はStar Allianceが59.3%、香港はoneworldが70.5%を占めており、同じ東アジアの主要空港でもアライアンス別の勢力図は大きく異なる。

東京〜ANA・United対JAL・American、二つの太平洋JVが競争する〜

東京の最大の特徴は、Star AllianceのANA・United Airlinesと、oneworldのJAL・American Airlinesという二つの太平洋JVが同じ市場で競争していることだ。ANAとUnitedは2011年から太平洋共同事業を展開し、JALとAmericanも同年からPacific Joint Businessを開始している。2026年はJAL・Americanの共同事業開始から15年となる。

Star Alliance側ではANAが週105便と最大である。ロサンゼルス21便、ニューヨーク14便、シカゴ14便、サンフランシスコ14便、バンクーバー14便に加え、シアトル、ワシントン、ヒューストン、メキシコシティへ各7便を運航する。Unitedも羽田からシカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューアーク、ワシントン、成田からデンバー、ヒューストン、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューアークへ各毎日運航し、計70便となる。さらにAir Canadaが28便、成田―ロサンゼルスを運航するSingapore Airlinesが7便あり、Star Alliance全体では210便となった。

対するoneworldはJALが91便、Americanが35便に、成田―シアトル線7便を加えた計133便となる。JALはニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコを中心に、ダラス、ボストン、シアトル、バンクーバー、サンディエゴへ幅広く路線を持つ。成田―サンディエゴ線については、JALが2026年6月に公表した当初計画では9月から毎日運航とされていたが、その後更新された運航計画では8月1日から毎日運航となっており、今回の対象週は7便として集計した。

Americanはロサンゼルス―羽田を1日2便、ダラス―羽田・成田、ニューヨーク―羽田を各毎日運航する。JALとAmericanの共同事業では、太平洋横断便だけでなく、北米到着後にAmericanの広範な国内線ネットワークへ接続できることも重要である。

SkyTeamではDeltaが羽田からアトランタ、デトロイト、ロサンゼルス、ミネアポリス、シアトルへ各毎日、計35便を運航し、Aeromexicoの成田―メキシコシティ7便を合わせて42便となる。

非加盟勢ではZIPAIRの存在感も小さくない。対象週はロサンゼルス13便、サンフランシスコ7便、ヒューストン4便、バンクーバー5便の計29便を運航し、WestJetのカルガリー7便を合わせて「その他」は36便となる。

東京は週421便という規模に加え、最大のStar Allianceでも半数に届かず、oneworld、SkyTeam、非加盟会社にも一定の便数が分散している。今回比較した4都市の中では、特定の一つのアライアンスへの集中度が最も低い市場となっている。

台北〜EVA・China Airlines・STARLUX、台湾3社による北米競争〜

台北は欧州路線以上に興味深い。台湾の主要航空会社3社が、それぞれ異なる立場から北米市場を拡大しているからだ。

最大勢力はStar Allianceで112便。その大部分をEVA Airが占める。EVAは2026年6月26日に台北―ワシントン線を週4便で開設し、北米ネットワークを10都市、週98便まで拡大した。EVA自身はこれを台湾発で最多の就航都市数・最大規模の北米ネットワークと説明している。Unitedの台北―サンフランシスコ週14便を加えると、Star Allianceは週112便となる。

SkyTeamではChina Airlinesが中心だ。同社はロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル、オンタリオ、ニューヨーク、バンクーバー、フェニックスの7都市を結ぶ。フェニックス線は2025年12月に開設され、週3便で運航されている。対象週ではChina Airlinesが計41便、Deltaの台北―シアトル7便を加えてSkyTeamは48便となった。

そして台北の特徴をさらに際立たせているのがSTARLUXである。三大アライアンスには加盟していないが、2026年夏にはロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル、オンタリオ、フェニックスの米国5都市に就航している。対象週はロサンゼルス7便、サンフランシスコ7便、シアトル7便、オンタリオ4便、フェニックス4便の計29便となる。

結果として台北は、EVA=Star Alliance、China Airlines=SkyTeam、STARLUX=非加盟という三極構造になっている。今回の条件ではoneworldの自社運航便が0便である点も、香港との大きな違いだ。EVAが単独で週98便を運航する一方、新興のSTARLUXも週29便まで拡大しており、台湾の航空会社各社が北米市場を重視していることがうかがえる。

ソウル〜Korean Air・Deltaが作るSkyTeamの巨大太平洋ハブ〜

ソウルは4都市の中で最もSkyTeam色が強い。週282便のうちSkyTeamが161便、57.1%を占め、その中心がKorean Airの112便とDeltaの42便である。

両社は2018年5月から太平洋JVを展開している。Deltaによれば、共同ネットワークはアジア80都市超、米大陸290都市超に及び、仁川はその重要な接続拠点となっている。2026年夏にはDeltaのソルトレイクシティ―仁川線も加わり、Deltaはアトランタ、デトロイト、ミネアポリス、シアトル、ソルトレイクシティの5都市から仁川へ自社便を運航する。

Korean Airはさらにロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコ、ダラス、シカゴ、ラスベガス、ワシントン、ボストン、シアトル、バンクーバー、トロントなどへ路線を展開している。特にアトランタはKorean AirとDeltaがそれぞれ1日2便を運航し、両社合計で週28便となる。JVの厚みが分かりやすく表れている路線だ。

一方、2026年夏時点ではAsiana AirlinesがまだStar Allianceに残っている。Asianaが40便、Air Canadaが18便、Unitedが14便でStar Allianceは72便。ただしStar Allianceは、Asianaが2026年12月16日23時59分(韓国時間)に正式脱退すると発表している。そのため2026年夏は、AsianaがStar Alliance加盟会社として迎える最後の夏となる。

oneworldはAmericanのダラス7便とAlaska Airlinesのシアトル6便で13便。その他ではAir Premiaが26便、T'way Airがバンクーバー4便、WestJetがカルガリー6便で36便となる。

東京ではStar Allianceとoneworldがともに大規模な北米ネットワークを持つのに対し、ソウルではKorean Air・DeltaのJVを軸としたSkyTeamが過半を占める。総便数も東京に次ぐ週282便に達しており、仁川が東アジア有数の北米路線拠点であることが数字にも表れている。

香港〜Cathay Pacificが作ったoneworldの巨大北米拠点〜

香港は4都市の中で最も構造が明快である。週166便のうちoneworldが117便、70.5%を占め、その117便をすべてCathay Pacificが運航している。

対象週のCathayはロサンゼルス21便、ニューヨーク21便、トロント18便、バンクーバー17便、サンフランシスコ14便、ボストン7便、シカゴ7便、ダラス7便、シアトル5便の計117便となる。Cathay自身も2026年夏について、北米9都市へ週120往復便近くを運航すると発表しており、今回の固定週集計ともおおむね整合する。

Star AllianceはUnitedがロサンゼルスとサンフランシスコへそれぞれ1日2便、計28便、Air Canadaがバンクーバーへ7便で計35便。SkyTeamは2026年6月に再開したDeltaのロサンゼルス線7便、その他ではHong Kong Airlinesのバンクーバー線7便となる。

香港では、米国系航空会社とのJVが大きな役割を担う東京やソウルとは異なり、Cathay Pacific自身が北米9都市へ大規模な自社ネットワークを張っている。これは欧州路線でも見られた特徴であり、香港におけるoneworldの圧倒的なシェアは、Cathayの長距離路線網によって成立している。

同じ東アジアでも、北米へのつなぎ方は全く違う

4都市を比較すると、総便数では東京421便、ソウル282便、台北189便、香港166便の順となった。しかし、それぞれのネットワークの作り方は全く異なる。

東京はANA・UnitedとJAL・Americanという二大太平洋JVが競い、DeltaやZIPAIRなども加わるため、特定アライアンスへの集中度が低い。ソウルではKorean Air・Deltaを中心としたSkyTeamが過半を占める。台北ではEVA、China Airlines、STARLUXという台湾3社が異なる陣営から北米市場を開拓し、香港ではCathay Pacificだけで北米便の約7割を担っている。

欧州では、フランクフルトやパリ、アムステルダムなど欧州側のハブをどう利用するかが重要だった。北米ではそれに加えて、太平洋を渡った後にAmerican、United、Delta、Air Canadaなどが持つ広大な北米ネットワークへどう接続するかが重要になる。そのため東京とソウルでは、太平洋JVの存在感が特に大きい。

旅行者にとって東京の強みは、圧倒的な便数と選択肢の多さである。一方、利用する航空会社やアライアンス、運賃、マイルの条件によっては、ソウル、台北、香港を経由して北米へ向かうルートも選択肢になり得る。4都市の数字を並べると、同じ東アジアから北米へ向かう路線でも、航空会社がそれぞれ異なる方法でネットワークを構築していることがよく分かる。

集計条件・参考情報

集計期間は2026年8月17~23日。対象は東京(羽田・成田)、台北(桃園)、ソウル(仁川)、香港(香港国際空港)から米国本土、カナダ、メキシコへ向かうノンストップ定期旅客便。ハワイ・グアムは除外した。コードシェア便は実運航会社で1便として集計した。航空会社の公式発表・公式ダイヤを優先し、公式サイトだけでは対象週の曜日別運航を確認しにくい路線については時刻表データベースを補助的に使用した。2026年8月12日時点の公表・販売情報に基づくため、その後の運休・増減便などにより実際の運航便数が変化する可能性がある。

主な参考情報

ANA「International Route Information」
https://www.ana.co.jp/en/jp/guide/plan/airinfo/int-routeinfo/

JAL「2026年度 北米路線運航計画」
https://press.jal.co.jp/ja/release/202606/009570.html

ANA「United AirlinesとのJoint Venture」
https://www.ana.co.jp/group/en/company/pickup/pickup_alliance2.html

EVA Air「Taipei–Washington, D.C.新路線発表」
https://www.evaair.com/en-us/about-eva-air/news/news-releases/2026-02-11-evaair-new-route-taipei-to-washington-dc.html

STARLUX 北米路線情報
https://www.starlux-airlines.com/flights/en-us/

Delta Air Lines「Korean Air Partnership」
https://www.delta.com/us/en/airline-partners/korean-air

Star Alliance「Asiana Airlines to Exit Star Alliance」
https://www.staralliance.com/news-article?groupId=20184&newsArticleId=OZ_EXIT

Cathay Pacific「2026年夏 北米ネットワーク」
https://news.cathaypacific.com/cathay-pacific-connects-hong-kong-and-seattle-with-a-five-times-weekly-direct-service-2syesq

Delta Air Lines「Hong Kong–Los Angeles就航発表」
https://news.delta.com/delta-deepens-lax-investment-new-service-hong-kong-and-chicago

oneworld「Hawaiian Airlines加盟」
https://www.oneworld.com/news/oneworld-welcomes-hawaiian-airlines

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