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自己紹介の練習をして行ったら、自己紹介がなかった

町内会費は払っている。

だから回覧板も回ってくる。

ある日、その回覧板に書いてあった。

「町内会清掃活動のお知らせ」

たしかに。

1年目は仕事の講習があったので参加できなかった。

いや、正確には、これ幸いと参加しなかった。

当日の朝、出かける時に清掃活動へ向かう人たちとすれ違った。

気まずかった。

しまった。

せめて集合場所くらい確認しておけばよかった。

そうすれば違う道を通れたのに。

2年目も回覧板に書いてあった。

でも行かなかった。

1年目に行かなかったのに、今さらどんな顔で参加すればいいのか分からない。

そもそも面倒くさい。

私は気付かなかったことにして寝ていた。

3年目も回覧板に書いてあった。

どうしよう。

今さらだ。

今年も無視しようかと思った。

だけど、隣の人と世間話をしている時に話題に出てしまった。

「今度の清掃活動ですね」

もう逃げられない。

一応、

「頑張って早起きしないとですね」

と予防線は張っておいた。

でも、ここまで言っておいて参加しないという選択肢を取れるほど図太くない。

そんなことができるなら、もっと楽な人生を送っている。

だから行く。

たぶん。

きっと。

あー。

隕石でも落ちてこないかなぁ。

前日は憂鬱だった。

自己紹介を求められたらどうしよう。

仕事を聞かれたらどうしよう。

私はかなり人見知りだ。

緊張すると言葉が出てこなくなる。

だから脳内で何度も練習した。

「今回初めて参加しました。よろしくお願いします」

仕事を聞かれたら、

「自営業です」

ここで止めよう。

考えても仕方ないことなのは分かっている。

でも考えてしまう。

そして当日。

開始一時間前に目が覚めた。

遠足前の小学生か。

もちろん楽しみで目が覚めたわけではない。

緊張である。

それでも現地へ向かった。

結果から言う。

ほとんど会話がなかった。

自己紹介もなかった。

仕事を聞かれることもなかった。

集まって、作業して、解散した。

それだけだった。

私は前日から脳内で様々なシミュレーションを繰り返していた。

その全てが空振りだった。

拍子抜けである。

ただ、一つだけ新しい情報を手に入れてしまった。

どうやら私は二年後に組長になるらしい。

二年後である。

まだ先の話だ。

それなのに、今から少し憂鬱だ。

人間は学習しない。

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