【今日の読書】「歴史」と楽しく踊るには―松沢裕作『歴史学はこう考える』
えりたです。
その道のプロの方が、仕事における思考過程や実際に行っている動作を言語化なさったものを見たり聞いたりすることが好きです。
たとえば、大リーグドジャースに所属する大谷翔平選手。彼は昨年「50-50」を達成しました。投げる、打つだけでなく、走ることもできると、記録で見せつけたのです。
先日TikTokのおすすめに流れてきた切り抜き動画に、その大谷選手が「盗塁のときにしていること」を説明したものがありました。
具体的な内容は省きますが、大谷選手が盗塁を成功させるために行っていることは、埒外に細やかで丁寧な積み重ねでした。それは、野球について並一通りの知識しか持たない私にとって、大きな驚きであり、そんな細かなタイミングとか角度とか目配りとか、それらを毎回フツーのこととして積み重ねてようやく偉大な記録をつくりあげているんだと、改めて感嘆したのです。
そして、それはこうしてきちんと説明されているからこそ知れ、感じられたものでした。また、そういった新鮮な驚きは、普段の生活で得られるものではありません。だからこそ、私はプロのお仕事を細かに説明したものを見たり、読んだりすることが大好きで、それを止められないでいます。
さて、今回ご紹介する本もそんな一冊です。
今回ご紹介する本は、歴史家の松沢裕作先生の書かれた『歴史学はこう考える』です。ちくま新書から昨年刊行され、新書大賞2025で第3位を獲得ました。この本は、歴史学のプロがどのような営みにより、何を明らかにしようとしているのかについてくわしく述べたものです。
表紙の見返しにあった文章に、本書の内容が端的にまとめてありましたので、そのまま引用します。
史料の山に埋もれ、ひたすら解説している? 過去の出来事の是非を論争する? このようなイメージがある歴史学では実際に何が営まれているのか。明らかにしたいものは様々でも、歴史学には共通のプロセスがある。史料とはなにか。それをどう読んでいるのか。そこからオリジナルな議論をいかに組み立てるのか。歴史について語る前に、最低限知っておきたい考え方を解説する。

■『歴史学はこう考える』
■松沢裕作
■ちくま新書
■2024年9月
■940円+tax
「歴史」のプロがどのような思考で、何を営み、何を明らかにしようとしているのか。その旅もスリリングで、たいへん興味深いものでした。
ではでは、行ってみましょう。
■「史料」を扱うという大前提
私自身、以前にも何度か書いていますが、大学院生の頃『大鏡』という「歴史物語」を研究していました。「歴史物語」は、歴史上のある時代の出来事を「物語」として語った作品です。『大鏡』は平安中期、ちょうど昨年の大河ドラマ『光る君へ』の描いた時代を中心に、天皇について、藤原北家について「紀伝体」という体裁で語った歴史物語です。
私の関心は、歴史上の出来事がどのように物語化していくのか、その過程や変更の在り様にありました。そのため、その頃に書かれた貴族の日記(「古記録」と呼ばれるもの)をよく読んでいました。ですから、どちらかと言えば、史学と文学を行ったり来たりするような研究をしていたのです。
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