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「薬剤師」を手放して。海を渡っても紙切れにならない「ポータブルスキル」を育てる理由


国境を越えると「紙切れ」になるプラチナチケット

全13回の自己紹介エッセイの中で、読者の方から一番大きな反響をいただいたのが「シカゴでただの駐在妻になった絶望」を書いた記事だった。

日本にいれば食いっぱぐれることのない、薬剤師という最強のプラチナチケット。でも、海を渡った瞬間、それはただの紙切れになった。あの時、私は「自分の価値が突然ゼロになった」ように感じて、異国のアパートでひとり膝を抱えていた。

環境が変われば、あっけなく使えなくなってしまう。 それはつまり、私のキャリアやアイデンティティが、私自身ではなく「場所」や「日本の制度」に強く依存していたということだった。

「場所」ではなく「自分」に依存する武器を

それから長い時間をかけて、部屋のモノを減らし、心の中の執着も手放して、ようやく手ぶらになった40代の私。

次に手に入れたいと思ったのは、特定の場所でしか通用しない「資格」ではなかった。パソコン1台あれば、世界中どこにいても自分の頭と手だけで生きていける「ポータブル(持ち運び可能)なスキル」だ。

具体的には、Webデザインの知識や、画像・動画の編集スキルなど。 これらは、国境を越えても変わらない。ノートパソコンさえあれば、どこへでも連れて行ける究極に身軽な武器だ。

40代、現在進行形の「見習い」を楽しむ

もちろん、40代から全く新しいデジタルの世界に飛び込むのは簡単ではない。私のWebスキルの勉強は、今も現在進行形の泥臭いものだ。デザインの引き出しを増やすべく地道にトレースを行ったり、Premiere Proの操作に頭を抱えたりする日々を送っている。

でも、昔のように「完璧な資格を取るまで動けない」という頭でっかちな私ではない。

今の私は、漢方関連のパートタイマーとして働きながら、インプットした端から現場でアウトプットし、失敗しながら学びを定着させている。

不完全な自分のままで、実践の中で少しずつスキルを育てていくプロセスが、今はたまらしく面白いのだ。

身軽な武器が、未来の選択肢を広げてくれる

かつて、見知らぬ土地で「〇〇さんの奥さん」になるしかなかったあの頃の私に、今のこの状況を教えてあげたい。

いつかまた、夫の転勤で海を渡る日が来るかもしれない。あるいは、瀬戸内海が見える穏やかな海辺の町へ移り住む未来もあるかもしれない。

どんな未来が来ても恐れずに飛び込めるのは、私の手元にこの身軽な武器があるからだ。私はこれからも、どこへ行っても「私」のままで働くために、このポータブルスキルを大切に育てていこうと思う。

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