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もっと早く知っていればを減らしたい――住まいに向き合った夫婦の話

事故のあと、52歳の男性の両足には麻痺が残り、感覚がなくなりました。
体の大きな彼にとって、家の狭さや動きにくさは、見過ごせるものではありませんでした。
家に戻ることはできても、安心して暮らせるとは限らない。
その現実を、夫婦は退院後に知ることになりました。


家に戻れたのに、安心は戻ってこなかった

事故で大きなけがを負った52歳の男性は、長い入院生活を経て、ようやく家に戻ることができました。
けれど、事故のあと両足には麻痺が残り、感覚もなくなっていました。
体の大きな彼にとって、電動の車いすで暮らす毎日は、想像以上に住まいのつくりに左右されるものでした。
廊下は狭く、浴室もトイレも使いにくい。
少しの段差や幅の足りなさが、そのまま暮らしにくさにつながっていきました。
家に帰ることができたのに、前と同じ日常には戻れなかったのです。
帰る場所があることと、安心して暮らせることは、同じではありません。
その現実が、夫婦の前に静かに立ちはだかっていました。

一生懸命に考えたのに、迷いは消えなかった

夫婦は何もしていなかったわけではありません。
これからの暮らしを立て直したい一心で調べ、見に行き、考え、住まいを整える決断をしました。
けれど、実際に暮らし始めると、小さな困りごとが次々にあらわれました。
ここに支えがほしいのに足りない。
ここは変えなくてもよかったかもしれない。
さらに、両足に感覚がないため、壁や家具に足先をぶつけても、その場では気づけないことがありました。
あとから傷や腫れを見つけるたびに、家族の胸には不安が積み重なっていきました。
毎日のなかで起きるそのひとつひとつが、暮らしの重さを静かに深くしていったのです。

足りなかったのは努力ではなく、一緒に考える相手でした

こうした話にふれるたび、私は思います。
必要だったのは、本人や家族の気合いではなかったということです。
本当に必要だったのは、暮らしの先を一緒に想像しながら考えてくれる人と、もっと早くつながることでした。
何を直すかではなく、どんな毎日を取り戻したいのか。
どこで困りやすいのか。どんな動きが不安なのか。
そこから考えられていたら、選び方はきっと違っていたはずです。
人は、情報が少ないまま大事なことを決めると、選んだあとに自分を責めやすくなります。
だからこそ、選ぶ前に寄り添うことが欠かせないのだと思います。

知ることができれば、未来の見え方は変わっていく

後になって夫婦は、地域には住まいの困りごとを相談できる場があり、暮らしの動きに詳しい人と住まいの専門家が一緒に考えてくれる仕組みがあると知りました。
もっと早く知っていたら。
その思いは、きっと簡単には消えません。
でも私は、この話を後悔の物語だけにはしたくありません。
必要な人につながれた瞬間から、夫婦はようやく、自分たちの暮らしを自分たちの言葉で考え直せるようになったからです。
相談先を知ることは、甘えではありません。先の見えない不安を、歩ける道に変えていくための大切な支えです。

もっと早く知っていればを減らすために

この言葉を減らしていくには、偶然に任せないことが大切です。
目の前の人がどんな暮らしを望んでいるのかを丁寧に受け取り、その人に合う支えへとつないでいく力を育てていくこと。
それは特別な人だけの役目ではなく、人にかかわるすべての現場で大切にしたい力だと思います。
あとから悔やむ選択ではなく、そのときに納得して進める選択を増やしていくこと。
そこに必要なのは、少し深く想像する姿勢と、支える力を学び続けることです。
住まいに向き合ったこの夫婦の話は、これからの人材育成を考えるうえでも、とても静かで、強い問いを投げかけているように感じます。

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