見出し画像

「Summer Vacation」と訳すたびに、僕は毎年ひとつ、大事な言葉を捨てています


お盆が始まります。

海外の取引先とやりとりをしていると、この時期はきまって同じ質問が飛んできます。

「来週、なんで一週間も休むの?」

僕はいつも、少し困りながら「Summer Vacationみたいなものだよ」と返します。相手は「ああ、夏休みね」と納得して、話はそこで終わります。通じています。仕事も滞りなく回ります。

でも、送信ボタンを押すたびに、心のどこかがちくりとするんです。

いま僕は、たしかに何かを相手に渡しそこねた。「Summer Vacation」と打ち込んだ瞬間に、いちばん大事な一語が、指のあいだからこぼれ落ちていった——そんな感覚が残ります。

その一語が何なのかを、この記事で言葉にしてみたいと思います。

「お盆 英語 説明」で検索した人へ

たぶん、この記事にたどり着いた方の多くは、一度は検索窓にこう打ち込んだことがあるはずです。
「お盆 英語 説明」「お盆休み 英語 メール」。

検索すれば、いくらでも出てきます。「Obon is a traditional event to honor the spirits of ancestors.」
先祖の霊を敬う日本の伝統行事です。丁寧な例文が、35選、27選と並んでいます。盆踊りは「Bon Odori」、灯籠流しは「Toro Nagashi」。ローマ字でそのまま使えばいい、と。

僕もそういう記事を何度も読みました。読んで、コピーして、貼りつけて、送りました。

でも、不思議なことに、それでも相手の目の奥は「?」のままでした。単語は正しい。文法も合っている。なのに、届いていない。

理由は、しばらく経ってから分かりました。

例文集は「何と言うか」を教えてくれます。でも「なぜ通じないのか」には、一言も触れていないんです。

僕が知りたかったのは、後者のほうでした。



お盆は「休み」ではありません

ここで、たぶんいちばん大事なことを書きます。

お盆は、休みではありません。

正確に言えば、休みは結果にすぎないんです。お盆の本体は、亡くなった家族が、年に一度、家に帰ってくる期間です。仏教の「盂蘭盆会」と、日本にもともとあった祖先を敬う信仰。このふたつが溶け合って生まれた行事で、迎え火を焚き、墓を掃除し、送り火で見送る。主語は最初から最後まで「先祖」なんです。

だから、「Summer Vacation」と訳した瞬間に何が消えるか
「誰と過ごすか」という主語が、まるごと消えてしまいます。

そう思うと、このお休みの1番大切な部分を伝えられない気がしてとても悔しくなったので、最近はきちんと海外の取引先の方にはきちんと説明をするようにしています。

どうか皆さんもごゆっくりこのお休み期間をお過ごし下さい。


いいなと思ったら応援しよう!

日本人に最も近い外国人 最後まで読んでいただきありがとうございます。 フォローやサポートをいただけると、とても励みになります。 Appreciate the support