承認を支えた論文が撤回された〜製薬企業と臨床試験データの危うい距離
世界で最も権威ある医学誌のひとつ、NEJM(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)が、一本の論文を撤回した。
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMe2608684
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=80507
ただの論文ではない。ある薬が世界中で承認される、その根拠となった臨床試験の論文だ。そしてその薬をめぐっては、日本国内でも投与後に亡くなった人が複数報告されている。
薬の名はタブネオス(一般名アバコパン)。ANCA関連血管炎という難病の治療薬として、2021年に登場した新薬だ。
ANCA関連血管炎は当然私たち病理医にとってもお馴染みの疾患ではある。ただ、検体が出てくることはあまりないのだが。
撤回のニュースは、専門メディアでは大きく扱われた。だが一般の受け止めは、どこか静かだ。かつてのSTAP細胞事件のような、社会を揺らす熱量はない。
しかし、だ。影響の大きさで測るなら、この撤回はSTAPの比ではない。人が亡くなり、薬が世界の市場から消えようとしている。なぜ、これほどの事態が「静かな大事件」にとどまるのか。
本稿では、撤回に至る事実関係を一次資料から整理したうえで、この件が突きつける問い──研究不正を「報道の多さ」で測ってはならない、という論点まで踏み込みたい。
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