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「人」「関係性」から捉え直す自律分散型組織――『Moose Heads on the Table』日本版のクラウドファンディングに合わせて

『Moose Heads on the Table』という、タイトルではまったく中身の想像がつかない一冊。しかし本書は、自律分散型(注:原著ではSelf management)の組織運営における人と人の関わり方について、20年以上の実経験に基づいた実践的・実用的な示唆に富んでいる。2025年11月より、この本のクラウドファンディングが始まった。また、出版(予定)の2026年2月にはLisaも来日予定だ。

私自身、著者の1人であるLisaとは5年以上の付き合いであり、このイニシアチブを立ち上げる役割も担った。私自身がどんな経緯で彼女と出会い、なぜこの本を選び、なぜ今このタイミングで日本に紹介したいと思ったのかを紹介したい。


共著者のLisaについて

まず、著者の1人であるLisa Gill(リサ・ギル)について。彼女はグローバルでのティール組織のムーブメントにおける中心的な存在の1人だ。

特にこの領域での知名度を高めたのは彼女が2017年からホストするPodcast ”Leadermorposhis” だ。フレデリック・ラルー(『ティール組織』)、ゲイリー・ハメル(『ヒューマノクラシー』)、エイミー・エドモントソン(『恐れのない組織』)、ブライアン・ロバートソン(『ホラクラシー』)、ピーター・カーニック(マネーワーク・ソース原理の提唱者)、トム・ニクソン(『すべては1人から始まる』)など多彩な顔ぶれが登場する。

2024年のワークショップの様子@バルセロナ

Lisaはティール組織のイラスト版(英語)のクラウドファンディングにも関わり、原著の出版10周年のオンラインイベントでもモデレータを務めた。この領域での交友関係は広く深く、また多くの人に親しまれる女性でもある。

私自身のリサとの出会いは2020年6月。『すべては1人から始まる』の著者であるトム・ニクソンの誘いで日本でのティール組織のムーブメントについて話す機会をもらい、参加者の1人にLisaがいた。それがきっかけで、翌2021年には先ほど紹介したPodcastに出演する機会ももらった。

さらに関係が深まったのは昨年2024年。Lisaが住んでいるバルセロナを訪ねたときに、午前中はリサにお願いして、Tuff Leadershipのワークショップを3時間体験、夜は中央大学ビジネススクールの露木先生にお願いして「場」に関するワークショップをご一緒した。

露木先生の「場」のワークショップ

詳しく書くと長いので簡略化するが、今回の出版&来日ワークショップなどの実現は、バルセロナをともに訪問したRELATIONSの深沢さん、今年の春にLisaとバルセロナで会ってる青野英明さん、クラウドファンディングのプロジェクトを引き受けてくれたwithfeelingの佐藤瑠依さんなど、多くの御縁が重なったことで具現化した。まずはスタートが切れたこと自体に、ここまで関わってくれている人にとても感謝したい。

この本の意義:組織の変化には「人」「関係性」に目を向けることが欠かせない

では、なぜ「いま」のタイミングで、この本を日本に届けることに意味があるのか。それは、“仕組み”や“制度”といった外側から、“人”や“関係性”という内側への変化がより重要になっている、と感じるからだ。私自身の見立てだが、ここ数年、関心の重心が緩やかに変わっている。

日本では2018年に『ティール組織』が出版されたことを一つの転機に、多くの人が新しい組織運営の可能性に夢中になった。そこから数年間は、「どんな形が可能なのか」「どんなパターンがあるのか」──その探求の時期がしばらく続いたように思う。そこでは多くの試行錯誤が行われ、失敗も成功も重なっていった。それらの試行錯誤を経てもなお、「自分たちで実践してみよう」という意図を持つ人たちにとっては、制度や構造といった「形」だけでは意味がない。

本当に自分の組織が変化するためには、より具体的に、「人」や「人と人との関係性」に向き合うことが避けて通れない。そのリアリティを持って自律分散型の組織に取り組む人が増えているように思う

Tuff Leadership × Corporate Rebels の講座

これは日本だけの現象でもない。

オランダ発のCorporate Rebelsでは、2014年の立ち上げ以降、世界中の先進的な組織に訪問を重ねてきている。立ち上げからしばらくは制度や仕組みに焦点を当てることの多かった彼らだが、KRISOSというPEファンドを通じて自ら企業買収に関わる中で、人や関係性の変容こそが核心だと捉えるようになってきたという

つい最近、Corporate RebelsとTuff Leadershipがコラボした講座を始めたことは、その重要性を感じている証左でもある。

もちろん、「人」や「関係性」の大切さは昔から何も変わっていないし、書籍『ティール組織』の著者のフレデリックも、その重要性は当初からずっと語り続けている。あくまで受け手となる実践者の変化が、ようやくそこにリアリティを持って追いついてきたのだ。

2024年のCorporate RebelsのGlobal MeetUpでのキーノート

「親ー子」の関係から「大人ー大人」の関係へ

この本は、まさにこの「人」「関係性」について、Tuff Leadershipというスウェーデンの会社が、25年以上を掛けて取り組んできた内容をもとにする。セルフマネジメントやコーチングがまだ知られていない時代から、手探りで組織変容に取り組んできた。ときには企業を買収して変革に挑み、成功も失敗も重ねてきた。そのリアルな経験に裏打ちされた知見と示唆が提示される。

たとえば、一つのキーワードとなっているのが、「親ー子」の関係から、「大人ー大人」の関係への変化だ。親が「良かれと思って」子どもに手を貸すことは、必ずしも子どもの自律・自立にとって良いこととは限らない。子どもが自ら学ぶ機会・挑戦する機会を奪ってしまうこともあるからだ。本書で語られる「大人ー大人」の関係とは、文字通り、「子ども」ではなく「大人」として互いに関わる姿勢を扱っている。

「一緒に働く相手を大人として扱う」。言葉にすれば、きっと異論も違和感もないはずだ。しかし、「頭での理解」と「実際の振る舞い」は別物だ。

Yuji、今の場面で”親”の発言をしましたよね?
私自身、昨年バルセロナでLisaの前でロールプレイを経験したときに、直接Lisaにフィードバックされた。

それを言われた瞬間は、「よくわからない」と思った。しかし、その後にLisaの解説を聞いていると、確かに私自身が「子ども扱い」をしたことがよく分かる。

親が子どもの代わりに(良かれと思って)パズルを解いてしまうかのように、私は、参加者たちよりも先に(良かれと思って)解決策を提示したのだ。言い換えれば、参加者たちが解決策を見つける「機会を奪った」のだ。

この微細な、しかし大きな姿勢の違いが、本書で語られる「人との関わり」に深く根付いているものだ。こうした実践に基づいた内容が、「リアリティを持った実践」に踏み出す人たちにこそ、深く届くものになるはずだ

(ちなみにこのときの体験は、エールの篠田真貴子さんとのPodcastで話したことがある)

最後に:令三社としての意義

最後に、令三社の目線から今回の翻訳出版の意義を語りたい。大きくは2つある。

一つ目は、世界にある叡智を日本に届けるということ。これまでも「ソース原理(すべては一人から始まる)」を紹介したり、中国ハイアールとのコラボレーションを通じて「人単合一」という考え方を紹介してきた。同様に、世界の知恵を日本に届けることで、日本の実践に貢献できると思っている。

そしてもう一つは、日本での実践を世界に伝えるという逆方向のベクトルだ。冒頭に紹介したように、Lisaはティール組織などので世界的に知られる存在だ。そんな彼女が日本に来て、日本の実践者たちと出会い、その現場を肌で感じる──その経験を彼女自身の言葉で世界に伝えてくれることは、また新たな世界への発信の機会を(想定もしない方向に)伸ばしてくれる期待感がある。

Lisaが来日する2月には、色々なワークショップなども予定されている。出版記念のイベントもあれば、嘉村賢州さん、青野英明さんとともに「ティール組織の世界でのムーブメント」を概観しつつ、ティール組織、ソース原理、Tuffのトレーニングなどを盛り込むという贅沢なワークショップもある。

今回のクラウドファンディング&書籍の出版も、その大きな流れの大事な一部として、色々な人に届き、色々な人が関われるものになってほしい。

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