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授業準備がたいへんすぎて、取り憑かれた。


「すぐできるようになるよ」


塾・予備校では、採用試験内容として学力試験や模擬授業を行います。これは模擬授業後の面接官から私に対する評価コメントでした。
「あっという間に授業、上手になるから大丈夫。」


なぜ「すぐできるようになる」と思ったのだろう。


こんな疑問はありましたが、私の本音は

ちょっと安心した。でも、悔しい。

でした。

「安心」は、採用の確約を得ることができたから。
「悔しい」は、自分の授業が商品にならないから。
裏を返せば「まだできてない」ですからね。


どうしたら、できるようになる?


これがしばらくの間、私を悩ませました。

教えるのは好き、人前で話すのも苦手ではない。
なんなら黒板を使って会議をするのは高校時代に頻繁にやってたから、板書は慣れたものでした。しかしそれでも、


自分の授業はまだ商品にならない。


この悩みを抱えたまま、デビューを迎えました。

時間配分がわかるように、軽めの計画案を作る。
問題文や解答の導き方を、完全に理解しておく。
質問にも答えられるよう、予備知識を確認する。

準備は入念に。

前日の夜に頑張りすぎて、目の下にクマがはっきりと残った状態で授業する新人を何人も見てきました。それと私も同じだったのかもしれません。

デーゲームのプロ野球選手のよう。

無事、授業は終了。
生徒からも不満の声はなく、及第点はクリアしただろうと思っていました。
しかし、


やはり何か足りない。


日々の業務・授業をこなしていきながらも、頭の中は悶々とした状態が続いていました。

この授業で、生徒は本当に満足できるのか?

プロフェッショナルならば、妥協はいけない。
でも何が足りないのかが、わからない。
何を変えたらいいのか見当がつかない。


しかし残念なことに、
自分の性格上、誰にも相談できないんですよ。

スーパー殻ごもりタイム発動です。
人前では普通にふるまいつつ、頭モヤモヤです。

春はまだか…。

スーパー殻ごもりタイムは、
「終わらない脳内会議」の時間です。

「とりあえず出来てるから大丈夫でしょー」
「いや保護者的には満足してないんじゃない」
「そもそもクレームもないんだから」
「それより準備大変すぎじゃない?」
「アンケート取ってみるか…?大変だけど」

この会議……、絶対終わらない。


結論が出ないまま過ごす日が続きました。


しかしある日、それが打開されます。


授業終了後、生徒から質問された時のこと。

「今日の内容じゃないけど、聞いてもいいですかー?」
「ここの和訳の仕方なんですけど…」

(お?これは正確に答えられるか怪しいな…)
「ちょっと調べてからでいい?」

「じゃあ大丈夫です!この後すぐに帰らないとだめなんで」

そうか、ごめんね。で終わった悲しさ。


即答できないのが、ものすごい悔しかったんですよ。



これだ!それが答えだ!



必ず何か一つ音楽は挟み込みたい。
同世代の人は懐かしんでください。


即答できないことで、機会損失している。
もしかしたら信頼も失ってしまうかも?
即答できてこそ存在価値があるのでは?
マズい、今の自分では価値を出せていない。
焦る。ようやく、気づく。

このままだと両手だけ日焼けしてしまう……!!


こうした反省と悔しさから、まず

指導科目の勉強をしなおすこと


から手をつけました。やはり、

即答できなかったのが、ものすごい悔しかったんですよ。


悔しさをエネルギーに。

知識は学生時代のもので断片的な記憶ばかり。
これでは臨機応変な対応はとてもできません。

でも勉強するとなると「面倒くさい」が発生。

だから正攻法な勉強ではなく、
英語なら洋楽を聞く。映画は字幕にする。
歴史なら好きな時代の本から読みなおす。
という趣味を兼ねながら。

一番やっていたのが
本屋に行って、参考書コーナーで本を探すこと。
休みの日、本屋で丸一日過ごすことを何度も。

本屋を自分のサードプレイスとする。

趣味の延長線上の勉強。
勉強と身構えずに、やりやすいやり方を
まず「続ける」こと

私にはそれが大事でした。
何度も途中で変えましたけどね。
でもこのやり方だから続けられたのでしょう。

よし、知識は少しずつ増えてきたぞ。しかし、
参考書の著者は明快に伝えるのが上手いなぁ。
実際はどんな風に話してるんだろう?

次の段階への興味



教え方が上手い人を知りたい



次の勉強科目は「教えること」にしました。


しかし授業を受けにいく余裕はない。
なるべくならお金もかけたくない。

思いついたのが動画視聴です。

大手予備校の有名講師の講義動画、TEDトーク、研修動画を見る。
通勤途中や空き時間を使って、1.5倍速くらいで。

勉強と身構えず、
やりやすいやり方をまず「続ける」こと

モチベーションは大事

動画視聴は、教科以外のことも学べました。
高品質の学習教材が身近にある現代文明に、
ただただ感謝するばかり。


あとは実践するのみ。
授業でどうやっていくか。

そんな時、ふと高校の恩師を思い出しました。

数学の先生。次々、生徒を指名するタイプ。
緊張感は凄まじい。

「お手製テキスト(約50~60ページ)」を、
4月の最初の授業で配布する。
あとはそれに沿って、授業をするだけ。

だからいつも授業はチョーク2~3本だけ。
開始直後、前に座っている生徒に「前回どこまでやったっけ?」と確認して、授業を開始。
授業中も終了後も、いつでも質問OKスタイル。

緊張感があって、かなり厳しめの授業でした。でもわかりやすかったので、数学を好きになれた授業でもありました。

高校生の時は、
「いつも身軽だけど、荷物持つの嫌いなのかなぁ」
「どこまで進んだか覚えてないとか、適当だなぁ」
程度しか思ってなかったのです。しかしそれは、



全く違った。



プロフェッショナルだ。




同じことをやれと言っても、できない

教材が手元にないと無理。
その場で前の内容を確認して開始とか無理。
段取りを準備しないで授業するのは無理。
生徒にいちいち話を振るなんて無理。
様子を確認しながら場を支配するのは無理。
その上、満足度を常に高水準にするのは無理。



どんだけ、サラッと凄いことやってたんだ。



…これだ。チャレンジしてみよう。






チョーク1本で勝負する授業に。


さっそく挑戦です。気合は入りまくり。

この勢いだとスーツが炎上します。

受講生たちには、
【授業メモ】と書かれた枠だけのプリントを配布。
ほぼ白紙と変わらないものを渡しているだけ。

あとはチョークのみ。これを続けました。




え…、大変。本当に大変…。


( ノД`)シクシク…


準備はしても、カンニングシートはなし。
知識も、授業の流れも全部、頭の中。
自分だけを頼りに全てを完結させていく。


事前に「自分自身を」どれだけ準備できるか次第。

だから本当に準備しましたもの。
ちょっと周りから引かれるくらいには。
鈍器レベルの専門書まで買っちゃったし。
最終的に全部テキスト作っちゃったし。
作ったテキストを何十回も推敲したし。

何かに取り憑かれたようなレベルで没頭


もともと、
チョーク1本で授業することに対して、
先生がただ延々と話をしてるだけみたいな、
「つまらない授業の典型でしょう?」
という良くないイメージを持っていました。

しかし、チョーク1本授業を突き詰めていくと
一番「授業力」が試されるやり方で、
プロフェッショナルしかできない授業

であることに気づいたのです。

なぜなら、チョーク1本で授業するためには、
常にすぐに引き出せる知識・経験がある
ことが
大前提。

そのためには、
自分を常にアップデートし続けなければならない
からです。



学び続けること。


どの立場になっても、絶対必要な「かまえ」です。

さぁかかってきなさい。的な。

入社してから5年以上経ったある時に、
入社前の面接官と、この紆余曲折を話しました。

『すぐできるようになる』って言ったよね?

模擬授業を終わって、改善点を指摘した時にすぐメモ取ったり、プリントに書き込みしてたでしょ?あと、こうしたほうがよかったですかね?って質問もしてきてたし。学ぼうとする気持ちが前面に出てたから、すぐに良くなると思ったんだよね

この仕事はね、学び続ける人じゃないとね

当時の面接官より

教育に携わり、最初の数年は悶え苦しみました。
実力も経験もなく、どうすればいいのかと。
その時の自分に面と向かって話をしてあげたい。



教える立場の人こそ、貪欲に学び続けるべき。

学び続けた先に、兆しがある。



新たな教育手法をやる機会が増えて、
一方的な授業をする必要がなくなったとしても、
指導者として、もしそこに立つことがあれば、

いつでもチョーク1本で、
前に立てる存在であり続けてほしい。

そのときは黒板は無いかもしれない。
…それでもです。


最後に…

教える立場の人って、私が思うところ
全ての人のこと。です。

子どもに対しての”親”、部下に対しての”上司”、後輩に対しての”先輩”
誰でもすぐに”教える立場の人”になりえますね。


こりゃ、やらねば。


学ぶことを楽しく、続けられるように。
取り憑かれなくてもいい程度に。

※※
チョーク1本で、講義・授業ができるか

資料なしで50分間、講演・プレゼンできるか
みたいなことを、どんなテーマでもいいので、
試してみてください。

試そうとしている間に、すでに成長してますから。
やったら、もっと別の気づきが待ってますから。

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