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年末年始企画:旧ブログから(6/9)

「ロック研究」とは? 6:既存のロック研究 4

2013年8月31日 19:03:23


 今回紹介するのは
『日本ロック雑誌クロニクル』(篠原章 著/太田出版 刊)
 です。

『日本ロック雑誌クロニクル』篠原章 著(2004年)


 この本は日本で刊行されたロック雑誌の歴史や、それらの雑誌の編集長とのインタビューで構成されています。中にはこれまであまり報じられてこなかった『ロック・マガジン』や、その編集長だった阿木譲氏へのインタビューもあり、また中村とうよう氏と渋谷陽一氏の論争の顛末や、日本語ロック論争など、非常に興味深い内容も含まれています。

 私が特に興味深かった記事は、フォークシンガー岡林信康の失踪事件の箇所で、私の現状と通じるところがあったからです。私のような無名の素人が自費出版で活動することによる、周囲の反応や対応が重なって見えました。

 本書はもともと『クイックジャパン』で連載していたものを編集したもののようです。詳細でジャーナリスティックな内容でありながら、複雑なロック雑誌の世界を体系立ててわかりやすく説明した名作であり、まさに日本のロック雑誌研究の教科書的な存在です。また邦楽ロックや、フォークやニューミュージックも含まれており、ロックを扱う箇所を多少なりとも持つ雑誌をロック雑誌としているなど幅広い枠組みからとらえていることも魅力です。

 私がこの本と出会ったのは『子羊解体新書 前編』を書いていた2010年頃だったでしょうか。当時私は国会図書館で日本のロック雑誌の調査している最中でした。残念ながらこの本を手にした時は『日本ロック雑誌クロニクル』にリストアップされたほぼすべての雑誌の存在を探し当てた後であり、もっと早く本書と出会っていれば私の作業が半年以上節約できたと悔やんだものです。

 この本は2004年に出版されたそうですが、私が入手した当時すでに入手困難になっており、数多くの書店をあたってなんとか入手できました。今でもなお増刷されていないようですが(※あくまで2013年当時)、これほどすばらしい本がこのような状態なのは残念に尽きます。最近では中古市場で手頃な値段で入手できるようなので、ぜひ一読をおすすめします。

 著者の篠原氏は経済学者としてすでに著名ということで、それがこの本における精緻でジャーナリズム的な筆致の理由だと思います。また数々の音楽関連の本を出版されているようなので、もはやこの場で紹介するまでもないのかもしれません。

 この本はその内容だけでなく文章構成にも魅力があり、『ミュージック・ライフ』をアイドル誌とし『ミュージック・マガジン』を評論誌ととらえた上で『ロッキング・オン』を論じた部分は大変参考になり、『子羊解体新書 前編』を作るのに大変役立ちました。

 ただ少し気になったのは、『ロック・マガジン』への無条件なまでの心酔ぶりに反し『ロッキング・オン』へのいささか冷淡な扱いですが、むしろこの点は一人のロックファンとしての篠原氏の情熱や趣向が伝わってくるものであって逆に魅力といえるかもしれません。

 残念なことに本書には『音楽専科』に関する論述やインタビューがまったくないのですが、この雑誌は60~70年代の日本のロック誌としては巨頭の1つであり、80年代後半に奇妙な終焉を迎えているのでぜひ詳しく知りたかったです。

 また論争については他にも『クロスビート』誌上で某評論家2人が全6回にわたって繰り広げたものもあり、そこには当時のロック評論への興味深い問題提起があるのでこれも取り上げてほしかったです。

 とはいえ、このロック雑誌の研究という分野は範囲がとても広く深いので欲をいえばきりがありません。また一度にすべて行うことや一人で行うのにも限界があることと思います。これは私が『子羊解体新書 前編』で行った『LAMB』の読み解きの分野もまた多くの参加者を必要としている点で共通しているので感じ入るものがありました。

 この分野をここまで研究した本は他にはなく傑作というにふさわしい作品です。

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