言葉の端っこにある優しさ
先日のロンドン出張で嬉しかったことがいくつかあった。忘れてしまわないうちに書き残したい。びっくりするような出来事が起きたわけではない。ただの会話の中で掬い取らないとそのまま普通に流れていく言葉の端っこにくっつく優しい気持ちを感じたのだ。
会議の出席者で日本人は私だけ。だから、ただの習慣の違いとか私の拙い英語のニュアンスの取り方の違いだけかもしれないけれど、ロンドンで私が出会った言葉たちは私を幸せな気持ちにさせてくれた。
ひとつ目は、日本のスーパーでごく普通に売っているチョコやお菓子を休憩中に食べるかなと持って行ったこと。オフィスでのランチタイムで、Paulのサンドイッチとチップスが出されたタイミングで、私もお菓子をテーブルに出した。外国人には鉄板に人気の抹茶味とあまおうのいちご味のキットカット。あとは小袋タイプのおにぎりせんべいや味好み。みんな喜んで「ありがとう~美味しいわ!」と食べ出しホッと一安心していたら、本部のアメリカ人男性が私の隣にスッと来て、It's so nice of you!と小声で言ってくれた。直訳すると「やさしいね!」という意味になるのかな。みんなの前で言われるのではなく、ニコッと笑ってこそっと私だけに言ってくれた。特別なことをしたわけではないけれど、みんなを思いながらどれがいいかなぁと選んで買った行為をほめてもらえたように思えて、小さなことに気付き言葉にして伝えてくれた彼に感謝した。
二つ目は、同僚3人でミュージカル「ラ・ミゼラブル」を観にでかけた夜のできごと。ミュージカルを見る時は少し特別な夜にしたくて、ちょっとだけオシャレしたいと常々思っている私。イギリスを意識して、唯一持って行った張りのあるチェックの長めスカートを履いて出かけた。始まる前にトイレに行き手を洗っていたら、トイレの個室から出てきた女性が「うわぁ、すっごく素敵なスカートね。とってもかわいいわ!」といきなり後ろから言ってくれた。とくにファッションセンスが良いわけでもなく、背も小さく目立つタイプでない私。ほめてくれる人など日本ではなかなか出会わないのでびっくりしたけれど、何の躊躇もなく、言葉にして褒めてくれた女性に「ありがとう!」と感謝の言葉と笑顔が思わず出て、心の位置がグッと上がってピンク色になったような感じがした。
そして三つ目、それはメキシコ人の同僚と二人で朝食をとっていた時に彼女が言った言葉。
「Emily、いつも笑顔でいてくれてありがとう。あなたは20年前、私がこの会社で働き始め、アメリカでの会議であなたに初めて会った時もずっと笑顔で私を受け入れてくれたし、話しかけてくれたわ。あの時も嬉しかったし、今も笑顔でいてくれるあなたが大好きよ」
と言ってくれたのだ。20年も昔の出来事で彼女に特別なことは何ひとつしていない。うちの会社の同僚たちは、そんな不機嫌な態度を取る人もいないので、みな同じように接していたと思うけれど、彼女の心には今もその光景があって、それを今また私に言葉で伝えてくれる彼女の優しさを感じ、私も彼女に受け入れられていると思えたことがとても嬉しかった。
日本では、なかなか面と向かって思いを口にすることが少ないなぁと改めて思う。私もちゃんと言葉にできているのかなぁと。イギリス人のちょっと面白い同僚に、何かをお願いする時に名前を呼ぶと「Yes,my love!」とか「yes, darling!」とか言うのもちょっと面白く心地よかった。当たり前にハグで始まりハグで終わる出張。会議も実り多いものになり帰り17時間のフライトの疲れも吹き飛ぶ幸せな出張となった。
あれ? これ私、ただ「Love」が枯渇中なだけ? 今、ロマンス詐欺にあったらイチコロでやられちゃう感じ? 近寄らないで詐欺師~!くわばら、くわばら!!!!
