市場経済を理解しない政府=ナフサ不足の深層=
ナフサ不足を巡る報道が続いています。
政府はナフサ供給は足りていると繰り返し強調していますが、企業の不安は収まりません。
それもそのはず。政府には市場経済に対する基本的な理解が不足しているからです。
政府は中東情勢関係閣僚会議で「年を越えて供給継続は可能」とする見通しを示しています。
従来の消費量=月283万klのナフサ消費が続いても、今年の冬を越えることは確実だという前向きなメッセージです。
にもかかわらず、ナフサが手に入らないとの、悲鳴にも似た声が絶えないのはなぜでしょうか?
それは、月283万klの供給が保証されただけでは足りないからです。

モノの取り引きは、供給余力も前提に価格形成が行われます。
これはナフサに限ったことではありません。
トータルで平時の平均しか供給能力がない=供給余力がないと分かっていたら、先回りして発注するのは、企業の自己防衛として当然の行動です。
円安の進行への懸念も、企業の先行発注を加速する要因になるでしょう。
こうした不安心理の高まりの結果、ナフサ不足や価格の高騰が起きているのです。
政府が「供給の目詰まり」と表現している事象の実態は、供給余力の不足なのです。
「欲しい時に欲しい量が手にはいる」という安心感が醸成されない限り、ナフサ不足は収まらないでしょう。
同じような現象は、トイレットペーパーやマスクの不足でも見られました。
トイレットペーパーやマスクについても、政府は十分に供給できると説明していました。
しかし仮に供給が十分だったとしても、トイレットペーパーやマスクが手に入らないかもしれないという不安がある限り、消費者は店頭に並んででも入手しようとします。
この場合は企業と消費者の関係ですが、企業間取引でも、基本的には不安心理に基づいて、似たような事態が発生します。
過去の需要実績に沿った供給だけでは、不安の払拭には足りないのです。
供給不足に陥った場合の対策として有効なのは、値上げするか節約するかのどちらかです。
物価高が重要な政策課題としてクローズアップされている今、政府が値上げを避けたいと考えることは理解できます。
だったら消費量を抑えればいいはずですが、政府はなぜか節約にも反対のようです。
カルビーがポテトチップスなどの主力商品を、モノクロのデザインに変更してナフサを節約しようとしたのに対し、政府は警戒感を示しました。
カルビーの節約行動が、ナフサ不足の不安を煽ることを心配したとされています。
しかしナフサ不足の不安が既に存在する以上、節約によってこの不安を和らげる方が得策でしょう。
カルビーは商品の安定供給を続けるため、当然の企業努力をしたまでです。
報道によると、カルビーの対応を「過剰反応」「売名行為」などと批判とする声が、官邸の一部から上がっているそうです。
これが仮に事実だとしたら、カルビーを責めるのは完全にお門違いです。
ナフサ不足の根本原因が中東情勢の悪化にあることは論を待ちません。
ただ、政府の市場経済に対する理解不足と対応の誤りが、事態をさらに悪化させたのは間違いありません。
決して身近な商品とは言えないナフサ不足が、これほどの大問題に発展したのは、考えてみれば不思議なことです。
企業や消費者の不安を理解し、適切な対応=節約を呼び掛ければ、事態はもう少し沈静化するはずです。
