量子力学の豪華付録!
(画像は豪華さをイメージしたもので、実際はカラー印刷ではありません)
本を出させていただくことになりました。発売日まであと1週間です。発売前に続けて来たこのシリーズも今回でいよいよ最後です。これまでの紹介記事のまとめのページもあります。
『量子力学の〈新常識〉-意識・実在・情報が再定義する物理学-』2026年6月25日発売
まだ言い忘れていたことがあるのです。付録です。
付録……付け足して収録したもの、という感じでしょうか。
理学書においては、本文中では解説し切れなかった「一部読者のためのさらに進んだレベルの解説」だったり、本文を読むために必要な「基礎的なレベルの補足解説」だったり、本文の内容とはテーマが少しずれているけれども誰かの役に立つことを願って書かれた「ひとまとまりの解説」だったりします。
しかし昭和の後期に子供時代を過ごした私にとっては、子供向け雑誌に分厚く挟まっている「付録」こそがメインコンテンツだったのです。付録が楽しみで本を買いました。本はおまけです。付録の工作の作り方が載っているものでした。ついでにマンガも楽しみましたけれども。「ふろく」という言葉の意味を履き違えていましたね。

今回発売となります本についても、もう付録のためだけに買って頂いても損はさせないのではないかという気持ちで書きました。付録のタイトルは以下の通りです。
付録
A. 井戸型ポテンシャルの例題の問題点
B. 粒子系の量子状態トモグラフィ
C. リングの量子状態トモグラフィ
D. ベルの不等式の証明
E. CHSH不等式の証明
F. 古典的極限
G. 理論の枠組みとしての量子力学
H. シミュレーション仮説
実際のところは先ほど書きましたように、「本文中に入れるにはレベルが高すぎるのではないか」という話や、本文中で細かい解説が入ると話の流れが止まるので「後でじっくり読んでいただければいいだろう」という話や、今回の本のテーマからは外れているのでどこにも分類できなかったけれども「どうしても入れたかった」という読み物が収録されております。
非常に難しい内容のものもありますし、軽く読めてしまうものも、ごちゃまぜで入っています。順序は、本文中の章との関連で並べてあります。順番に軽く紹介していきましょう。
A. 井戸型ポテンシャルの例題の問題点
一時期ネットでも大騒ぎになった話です。そんな問題視するような話でも無いのではないかという意見もありました。実際のところ何が問題なのかというのを細かな話を取り払って分かりやすくまとめてみました。これまでの教科書ではあまり注意が払われてこなかった視点がありますのでご参考になるかと思います。第1章からいきなりそこだけ重い話にしたくなかったので付録行きとなりました。
B. 粒子系の量子状態トモグラフィ
これは波動関数の定義の話です。特別な測定を準備することによって波動関数の形を決定することができ、それが現代的な波動関数の定義となっています。既に刊行されている堀田先生のご著書『量子情報と時空の物理』(近く内容を書き足した第3版が出ます)においても同じ内容が解説されていますが、ベクトル形式の少し専門的な書き方になっています。ここでは関数の形を使ったさらに噛み砕いた説明を試みました。まだこのような話を書いている教科書は少なく、とても役に立つ話だと思います。
C. リングの量子状態トモグラフィ
これは本文中に出てくる1次元リング上に制限された1粒子の運動を表す量子系において、直交性と完全性を満たすような基底の選び方をどうしたら良いのかという、非常にマニアックなテーマでありながら、その発想や計算テクニックに感動させられる話です。今後、情報理論的な量子力学が当たり前になってくると、このような話を使う必要が出てくる方もいらっしゃるかと思います。本文の方ではそれほど難しい話をしていませんので、難易度が急に上がるこの話だけが付録行きとなりました。
D. ベルの不等式の証明
E. CHSH不等式の証明
これらは本文中に入れても良いのではないかと何度も検討した話題です。この本のメインテーマに直接関わる内容です。話の流れを止めないようにということで付録行きにしました。あとからじっくり読んでください。EMAN物理のサイトの中で説明されているのと基本的に同じ内容ですが、そちらに何度も寄せられている質問などを考慮して読みやすく書き直した「改良版」あるいは「決定版」のようなものに仕上がっています。
F. 古典的極限
プランク定数を0に近付ければ量子力学は古典力学になるのではないかという良くある思い込みが実はそうならないということを理論的に解説したものです。本文中でも軽く説明しているのですが、数式を使って具体的に説明を始めるとそこだけ長くなってしまうので付録の中でゆっくり説明することにしました。
G. 理論の枠組みとしての量子力学
これは、物理の門外漢、あるいは専門家にとっては当たり前すぎる話なので、すっかり省いてしまっても良いのではないかと何度か話し合うことになったものです。読者対象はどのどちらでもない中間のレベルの人たちです。素粒子論や物性理論で使われている「場の理論」はもちろん量子力学なのですが、少し学んだくらいの人だと「場の理論」は量子力学の上位にある別理論だというイメージを持ってしまっています。今回の本の話がいわゆる入門的な「量子力学」という狭い範囲の話ではなく、物理学全体に関わる話であることを再認識してもらうために入れておくことにしました。短い簡単な読み物です。
H. シミュレーション仮説
この仮説自体、量子力学とは全く関係ない話なので、この本のテーマとはまるで関係がなく、これこそ省いても良いのではないかと何度か話し合うことになったものです。しかし世界は情報だけからできているという話をしたときに高い確率で「ではシミュレーション仮説が正しかったのか」と考えてしまう人が現れてしまうので、そういうわけでもないのですよ、ということを説明するために入れた読み物です。しかし単なる付録の読み物として無造作に収録したわけではありません。この本の第2のエンディングを担当してもらいました。
このように、内容が本のテーマから離れたものになってしまっていないかどうかについてはかなり気を使って話し合いました。共著書ということで、お互いにZoom会議やメールでのやり取りによって妥協点と合意点を探りながら進めました。私が暴走気味でしたので、堀田先生には多くを妥協して頂いたかと思います。今回はお互いが大丈夫だろうと思える範囲内で仕上げましたので、結果的に良いものになったかと思います。
ところで、この本の副題の『意識・実在・情報が再定義する物理学』ですが、その意味は『意識』・『実在』・『情報が再定義する物理学』だと解釈してください。『意識・実在・情報』が再定義する物理学ではありません。資本主義の中での高度な情報戦で、ギリギリ言い訳が通用するこの形に着地させることに成功しました。
それでは、発売日まであと一週間、ご購入のご検討を、どうか宜しくお願いいたします!
これまでの紹介記事のまとめのページはこちらにあります。
