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* Interview Dairo Suga:スガダイロー:自分はジャズじゃないって思えるようになってきた、心の底から。(12,000字)

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スガダイローがベースの千葉広樹、ドラムの今泉総之輔との新たなトリオで『公爵月へ行く』をリリースした。いまだにスガダイローのことをフリージャズのイメージで見ている人はそのサウンドに驚くことだろう。

そこにはデューク・エリントン、ハービー・ニコルス、セロニアス・モンク、ジョージ・ガーシュウィンなどの名曲から怪曲を取り上げながら、それらを斬新なアレンジで演奏するトリオがいた。

中でも今泉総之輔によるビートは現在のジャズシーンのトレンドとも繋がっているもので、それらがスガダイローのピアノと組み合わさった時にどういった作用を起こすのかというのが聴きどころだが、はっきりいって最高の相性で、21世紀の日本のジャズの傑作の誕生といってもいいだろう。

スガダイローが自身のことをどういった音楽家であるかの宣言しているようなアルバムとも言えるかもしれない。

僕は「徐々にジャズピアニストっぽくなってきてませんか?」と聞くとスガダイローは「全然ジャズじゃねーじゃんって心の底から思えるようになった」と答えた。

※柳樂が選曲したブルーノートのジャズ・ピアノ・コンピレーション『All God's Children Got Piano』に本記事で重要なモンク~ハービー・ニコルス~ジェイソン・モランが収録されているので、BGMにどうぞ。


■新しいスガダイロートリオとドラムのこと

――このトリオって録音は初めてですよね。そもそもどういう経緯で作ったトリオですか?

スガ:前回のトリオがもうけっこう煮詰まったなと思って。どうにかして逃げ道を見つけないとなと思って、ミュージシャンを探しながら、いろんな組み合わせのトリオをやっていたんですよ。それで最終的に残ったというか。

――ベースの千葉広樹さんはスガさんと共演してそうなイメージもありますが、ドラムの今泉総之輔さんは意外性がありました。

スガ:それはなんで?

――スガさんはもともとはフリー系のイメージですが、今泉さんは元quasimodeの人でもあるし、彼の作品でもグルーヴの人ってイメージだったんですよ。

スガ:たしかに。でもさ、フリージャズのドラマーって逆に言うとそんな奴いないから(笑) 結局ドラムって一番ファッションだから、ファッショナブルなドラムを捕まえるか、すげー変わった人のどっちかしかないと思ってたんですよ。中途半端にドラムが上手いとか、それって自分の音楽にはあまり意味がないなと思って、すげースウィングするとかそういうのは求めてなくて。ここでは最新ドラムパターンを知ってるとか、何が流行っているかすぐに食いつくとか、そういう視点がある人がいいなと思ってたんですよ。

――ダイローさんの口からファッションって言葉が出るのが意外な気がしますね。

スガ:ドラムに関しては前から思ってて、ドラムさえ変えれば何でもいいと思っていたくらいだったから。その前の服部(マサツグ)はファッションでも何でもないけど、とにかく得体のしれないドラムでそれが面白かったの。どのファッションにも乗らないし、ジャズ的にスウィングするわけでもないし、音楽シーンのトレンドに乗っているわけでもないし、謎のドラムを叩くやつ。池澤(龍作)もそうだし。例えば、外山(明)さんはシーンに乗ったことがあるけど、あれはまぐれって言うか笑

――たしかに。

スガ:だから、ああいうところに行くか、それかもうファッションか二つに一つかなみたいなところで。たぶん、ビバップの時代は一番ファッショナブルなドラマーが幅利かせていたに違いなくて、そいつらがヒップだったわけで。

――ケニー・クラークとか、マックス・ローチとかは確かに最先端でヒップだったんでしょうね。

スガ:そうそう、あいつすげーかっこいいよ、みたいなところじゃないすか。それは今でも思っているかな。ドラムが古臭くなっちゃうと途端に音楽自体も古臭くなっちゃうから。

――逆にドラムだけ新しくなったら、音楽が全く違うものに聴こえるっていうのはありますよね。

スガ:マイルス(・デイヴィス)はそういうことをずっと繰り返していて、ドラムを変えてるだけって言うか。本人はあまり変えてないけど、今、一番流行っているビートを叩けるやつを探してきて、それを着ればいいって言うか。フロントとか、ピアノの音はそんなに流行ってなくてもビートさえ変えればガラッと様変わりするっていうのは俺はあると思うんですよね。

――そのリズムも含めて、このアルバムは音がすごくいいと思ったんですけど。

スガ:千葉さんがコ・プロデューサーだし、ミックスも一緒にやってくれてるんですよ。ほとんどサウンドメイクは千葉さんがやったといっても過言ではない。俺は最後にちょっと聴いただけだから。エンジニアのウネ(ユタカ)さんと籠ってやってましたね。

――録音がすごく現代的なんですよ

ノイズ中村:今泉さんと千葉さんがこういう音源とか参照したらいいんじゃないとか、録りの段階でかなり話し合ってましたね。

■デューク・エリントンは8割がた『Money Jungle』

――今回のアルバムはどういうコンセプトですか?とりあえず、デューク・エリントンは重要ですよね?

スガ:デュークはあまり意識はしてないですよ。とりあえずこのバンドで一回出したいなと思ってて、3年くらいやっていて、だいぶ形はできてるから。

あと、今年はデューク・エリントンの生誕120周年じゃないすか、もともと「公爵、月へ行く」って曲があったから、それをメインに推すことによって、記念的なところにも絡めるって言うか。

――「公爵、月へ行く」はエリントンのコラージュみたいな曲ですね。

スガ:それはこのCD用にコラージュしたんだけど(笑)、本質はもっとミニマルなメロディーのところを意識していて。ジャズの本質ってミニマルだと思うから、そっちに行きたいなと思ってる。

ジャズってただひたすら繰り返すだけだから。アドリブやって、ただひたすらコーラスを回すだけなんで、デカい形だけど32小節くらいのミニマルなんですよね。ソナタ形式っていうのは白人が考え出した最も感情が動く構成で、一回メロディーやって、その後にもう一回メロディーやって覚えてもらって、ちょっと変化させて、また最後にメロディーに戻ってくるみたいなことで物語を完結させる美しい形なんだけど、それを何十回も繰り返すことによって、つまりAABA自体を繰り返してるだけになって、ミニマル性が出てきちゃうって言うか。どう考えてもそこから抜け出せないなって思うんですよね、ジャズ・ミュージックって。

――最近は変化って言うよりは反復みたいなものに関心を持っているんですね。

スガ:そこは意識してますね。

――一方で、聴き手としてはコラージュ的だし変化も感じちゃうのが面白いですけど。

スガ:ま、そこは目くらましって言うか(笑) 餌って言うか(笑) そこは俺としてはふざけてやったところで、そこに耳が行ってしまうかもしれないすけど、そこはそんなにこだわったところではないですね。

――ミクロで見ると変化もあるけど、マクロで見るとミニマルだっていう部分にこそこのアルバムの本質があるっていうのは面白い発想ですね。

スガ:ひたすら繰り返しする面白さなんだけど、その部分に関してはちょっと分離してみたって言うか。次から次へと違うことが起きるって言うこととずっと繰り返すだけじゃん、バカじゃないのみたいな。

――ミニマルみたいなことに関心が出てきたのっていつごろからですか?

スガ:ここ1,2年。きっかけは小津安二郎(笑) あれはもう「これってほんと面白いのか?」みたいなレベルまで行ってて、俺は好きになっちゃって、こんな録り方あるんだみたいな。

――小津はミニマルですね笑。ひたすらそのスタイルを繰り返しているみたいな、キャリアがミニマルというか、人生かけてのミニマルっていうか。

スガ:映画会社なしにはあんなことができる人はいないから、自分があそこまで特殊な状態になれるとは思わないけど、自分らしくバランスをとろうとは思っていて、その中でミニマルなところを一番聴かせたいってことかな。いろんな餌を蒔いといて、でも「こいつ繰り返しだしちゃったよ」みたいなところにもっとフォーカスしたいすね。

――このアルバムには、エリントンの「Solitude」「African Flower」があって、エリントンを意識したスガさんのオリジナル「公爵月へ行く」もあるので計3曲はエリントンということになりますが、スガさんにとってエリントンってどういう存在ですか。

スガ:俺の中ではボスなんですよ。太陽に吠えろで言えば石原裕次郎。一番偉いと思ってて。

――それって作曲家としてですか?ピアニストとしてですか?

スガ:どっちもですね。ジャズ界のボス感。大統領と握手(エリントンは1969年にホワイトハウスで70歳の誕生日を祝うパーティーが催され、そこでリチャード・ニクソン大統領からアメリカ自由勲章を授与されている)してて、あんな黒人なかなかいないじゃないですか。アメリカの文化の中でもすごいし。もちろん作曲も面白いし、ピアニストとしても、おもろいピアノ弾くし。そういう中二病的な大将みたいな。

――この「Solitude」「African Flower」を選んだのは?

スガ:俺にとってデューク・エリントンは8割がた『Money Jungle』で、このアルバムだけ突出してすごいなと思ってて。そこから2曲選んできたんですよ。

――その中から「Solitude」「African Flower」選んだのは?

スガ:たまたま。『Money Jungle』の他の曲でもいいっすよ、繋げるんだったら。

――「Solitude」「公爵月へ行く」「African Flower」は3曲セットみたいな感じなんですね。

スガ:別にそこも変えてもいいっすよ笑 別の『Money Jungle』の曲なら組み合わせとか、どこにフォーカスするのかに関しては、その日その日で変わってもいいと思うし、単純に今回切り取った瞬間はそこだったんですよね。

――『Money Jungle』のエリントン、チャールス・ミンガスマックス・ローチのトリオはスガさんにとってどういうトリオですか?

スガ:あれこそアメリカを体現していて、ワクワクしかないって言うか。デュークは先輩なわけじゃないですか、2人は若造で。デュークは「ドンと来い」みたいな、で、二人が「ドンと来る」っていう笑 マジでドンと来て、うわーみたいになってるっていう笑 日本ってああいうことってたぶん「ドンときたまえ」とか言われても委縮しちゃうというか、先輩とやるとかなると忖度とか起きちゃうけど、いきなりドンと来るっていうのが感動だったんですよ。今聴いても感動する。マッカーサーの「老兵は死なず」ってそういう美意識かなと思うんですよ。アメリカ人かはわからないけど、老人たちは若者たちに負ける美意識を与えるっていうか、勝たせてあげるって言うか。それも本気でやるんだけど。そういう美しさを今でも感じるんですよ。日本人にできないと思うよ。老人が殴り合いでぼこぼこにされるみたいな姿ってなかなかできないでしょ。

――そもそも明らかに重量級の強いやつを二人連れてきてるわけですからね。

スガ:で、いっきなりめっちゃくちゃになっちゃってるし、それがおっかしいし、面白いし。

――あれって昔からこれはどう解釈したらいいのかなって思ってましたけど、めちゃくちゃになってますよね。

スガ:めちゃくちゃになってますね笑 ほぼ失敗といっていいんだけど、それが俺の中でのジャズだな。最もジャズ的な要素って言うか。

――独特の変な気持ちよさがありますよね。ああいうの他になくて。

スガ:わかる。俺はハマった。

ノイズ中村:あれは世界的にもフリージャズの名盤として…

スガ:いや、あれはフリージャズじゃないから笑 でも、俺はやっぱりフリージャズを感じてしまうけどね。

ノイズ中村:僕らが勝手にそうやって聴いてるだけなんですね。

スガ:そう、いろんな聴き方ができる作品だと思うよ。

――ま、フリージャズとしか言えないとも言えますよね笑 リスナーもこれはなんなんだろうと思って聴いてるし、聴いていると演奏してる人も何が正解かよくわからなくなっちゃってる感じもあって。つまり、なにもわからないのにかっこいいのがいいんですよね。

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