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* interview Tom Misch - トム・ミッシュ:『What Kinda Music』ユセフ・デイズとやったからこそ、僕の中にあったダークな部分が自然と出た(7,500字)

トム・ミッシュの2020年の新作『What Kinda Music』は2018年の『Geography』とは全く別のトム・ミッシュが聴ける作品だ。それはメロディー、ギター、ビート、歌、ムードなど、あらゆる側面において言える。前作が陽なら、本作は陰。もはや"裏トム・ミッシュ"と言ってもいいサウンドだろう。それにはコラボレーターとなったドラマーのユセフ・デイズ(Yussef Dayes)が大きく関与しているのは間違いない。

ユセフ・デイズはユセフ・カマール(Yussef Kamaal)名義で発表した『Black Focus』で昨今のUKジャズ・ムーブメントに火を着けたシーンのキーマンだ

ここではアルバムのリリースに際して、柳樂光隆トム・ミッシュに行ったオフィシャル・インタビューを掲載する。

同じタイミングでドラマーのユセフ・デイズにも以下のインタビューを行っているので、併せて読んでほしい。

彼らが公開した『What Kinda Music - Documentary』というショートムーヴィーを見ると、このアルバムのことがより理解できるかもしれない。

質問作成・構成:柳樂光隆 |  電話取材・通訳:伴野由里子


◉ユセフ・デイズとの出会い

――Yussef Dayesとどのようにして知り合ったのかでしょうか?

「ユセフとは、僕のデビュー作『Geography』のアルバム・ローンチの時に知り合ったんだ。彼がローンチに来てくれてね。会ったのはその時が初めてだったんだけど、その前から彼の音楽とドラマーとしての活動は知っていた。そこで「今度、スタジオに入って何か作ろう」って話になって、実際一緒にやってみたんだ。直ぐに音楽的な繋がりをお互い感じて、そこからスタジオで色んなことを試してみるようになって、気づいたらアルバムが出来てたって感じだね。

僕らは育った場所が近くて、子供の頃にユセフがドラムを叩いているのを学校のTalent Show(学校や地区で行われる素人演芸会のようなもの)かなんかで見たことがあった。僕は10歳くらいの時で、彼は12歳くらいだったと思う。実はそれが彼の存在を知る最初のきっかけだね。」

――とりあえずスタジオに入ってみたということですが、その時はどんなことを想定していましたか。

「最初はビートテープのEPを作るつもりでスタジオに入ったんだ。発想としては、彼のドラムを僕が録音して、そこに僕がギターとかを加えてプロデュースする、という感じだね。でもやってるうちに色々なアイディアが出てきて、そのどれもが凄く良くて、しっくりくるものばかりだった。結果的に17曲くらい出来て、そこから曲を絞り込んで、アルバムが完成したんだ。最初は歌うつもりじゃなかったんだけど、結局歌うことにもなったしね。」

◉『What Kinda Music』のコンセプト

――『What Kinda Music』というアルバムに仕上げる上でコンセプトはありましたか?

「コンセプトがあったわけでも、特定のテーマがあったわけでもない。ただ思いつくまま音楽を作っていった。一貫してるのは、二人ともミュージシャンで、それぞれの楽器の可能性を押し広げることに興味があるってこと。ユセフはドラム、僕はギターでね。だからテーマがあるとしたら、「元々はビート・テープのはずだったものがより大ごとになった」ということ。

完成した作品を改めて聞き返してみると、かなり繊細でドリーミーだよね。でも、それは最初から意図していたわけじゃない。やってみたらそういうものが生まれただけで。ある意味大きな実験のようなものさ」

◉『What Kinda Music』の制作プロセス

――多くの曲でクレジットがWritten by Tom Misch、Music by Yussef Dayes、Produced by Tom Mischとなっています。役割分担はどうなっていたのでしょうか?

「基本的に僕がアルバムをプロデュースして、でも現場にはユセフもいてって感じ。スタジオでの作業の60%か70%くらいは僕とユセフの共同で進めていって、残りの30%は僕が一人で行った。というのも僕はプロデューサーでもあるから、ずっとスタジオにいて、全ての制作行程に携わって、アルバムを仕上げて行かなきゃいけない。あと歌も歌っているから、歌詞も書かなきゃいけなかった。他のソングライターとのセッションもセッティングして、共作した曲もあるんだ。でも大半の時間はスタジオでユセフと二人で試行錯誤したんだ。ユセフも自身のことをプロデューサーだと思っている。だから、このアルバムのサウンドに彼も貢献しているんだ。実際に機材を操作したわけではないけど、その場にいてアドバイスを出してくれたことは重要だね。」

――ビートメイカーでもあるあなたとドラマーのユセフ・デイズの2人でどういう風にビートを作ったのかを教えてください。

「共同作業だね。当然ユセフも僕がドラムのプログラミングをやるのは知っている。でも僕としてはユセフに任せた部分もあるんだ。彼はリズムを作る天才だし、リズムの感性が凄いから、彼にまず好きにやらせてみるんだ。時には、彼のほうが「こんな感じでやりたい」ってアイデアをくれたのに対して、僕から「じゃあ、試しにこんな感じでやってみてくれる?」って投げかけることもあった。まさに共同作業だよね。それに実験的でもあったんだ。ユセフが何を叩くかを僕は全く予測できなかったから。で、僕から「さっきやったの、もう一回やってくれる?」って言うこともあった。彼が持っていきたい方向性と僕の方向性が違うこともあって、そういう時は折衷案を見出すか、あるいはどっちかの方向でいくって具合に、二人で押したり引いたりしながら作っていった。」

――その二人の共同作業についても少し詳しく教えてもらえますか?

「そうだなぁ…。例えば“The Real”。あの曲のドラムは“What Kinda Music”と同じセッションで録ったもので、あの日はいろいろ録った日だった。確かロイル・カーナー(Loyle Carner)もあの日スタジオにいたと思う。午前中に彼の曲”Angel“を録っていたからね。そこでは僕がプロデュースをしてユセフがドラムで参加している。つまり同じ日に、”Angel“(ロイル・カーナーの2019年作『Not Waving, But Drowning』収録。ロイル・カーナーとトム・ミッシュのコラボ曲)、“What Kinda Music”“The Real”のベーシックを録ったということになる。とにかく色々録ったんだ。それらを僕が持ち帰って、“The Real”の残りをプロデュースした。アリサ・フランクリンをサンプリングして、ユセフが叩いたドラムのループを使った。つまり、彼が叩いたビートを僕が持ち帰って、そこにサンプリングを加えて曲にしていった、という一つの例だね」

――ベースのロッコ・パラディーノ(Rocco Palladino)もこのアルバムでは重要な役割を果たしていると思います。

「ロッコはクリエイティヴで、新しいアイディアを色々出してくれる。音楽がわかっているし、グルーヴの感性も引き出しの多さも凄い。ロッコには彼独特のノリっていうのがあって、いわゆる「後ノリ」なんだ。父親のピノ・パラディーノ(Pino Palladino)もそうだけど、それよりさらに後ノリなくらいだ。本当に素晴らしいベーシストだよ。しかも、彼とユセフはすごく息があっている。よく一緒に演奏しているからね。今回ユセフと一緒にやることで、ロッコとも仕事ができたのは大きかった。二人はリズム隊として最高だから。」

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