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interview Pasquale Grasso "Fervency":タッド・ダメロンを讃え、バリー・ハリスに捧げた熱い想い(13,000字)

パスクァーレ・グラッソの新作がリリースされた。

まるでピアノが奏でているような音をギターで鳴らし、パット・メセニーをも驚かせ、シーンに衝撃を与えたパスクァーレ・グラッソ。

アート・テイタムやバド・パウエルの表現をギターで表現することに挑み、そのうえで、恩師バリー・ハリス経由の即興演奏を更に進化させようとしている彼もリリースを重ね、新作は7作目。

タイトルは『Fervency』。このタイトルは今までの彼の作品の中では異例なものだ。

これまでのタイトルは『Solo Standards』『Solo Masterpieses』『Solo Ballads』『Solo Bud Powell』『Plays Duke』『Be-Bop』。どれも作品の音楽をまっすぐに示す説明のような、かなりそっけないタイトルだったので、情熱を意味する『Fervency』がタイトルになったことには正直、驚きがあった。

しかも、自作曲が二曲収録されている。これまでスタンダードや特定の作曲家の曲を演奏することが多く、自作曲は『Be-Bop』に収録した「Lamento Della Campagnia」1曲のみ。それがいきなり2曲収録って変化もまた興味深い。

ここでは大きく変化したようにも見える『Fervency』について、それを紐解くようにパスクァーレ・グラッソに話を聞いた。

実は本作にはしっかりしたコンセプトを彼は忍ばせていた。パスクァーレ・グラッソの強い思いが込められていたことを知ってからアルバムを聴き直すとまた聴こえ方が変わってくると思う。

取材・執筆・編集:柳樂光隆 | 通訳:原口美穂 | 協力:SONY MUSIC

◎アルバムのコンセプト

――今回の新作はどんなコンセプトなんですか?

今回もこれまでと同じように、トリオで演奏するっていうのがコンセプトです。いつもの仲間、ベースのアリ・ローランド(Ari Roland)とドラムのキース・バッラ(Keith Balla)と一緒にやってます。

特に今回は、このトリオでサマラ・ジョイと共に2年くらいのかなり長いツアーもしていた流れがあって、たくさん演奏していたんです。それでツアーから戻ったときに「せっかくだから、また何か録ろうか」って話になったんですよね。それで(2022年3月に)スタジオに入って、2日間で一気に録音しました。すごくナチュラルで、自然な形で仕上がったアルバムになったと思います。聴けば、その雰囲気がきっと伝わるはずです。

・「Fervency」というタイトル

――これまでは、アルバムタイトルに『Plays 〇〇』みたいな形で、誰かの名前や楽曲にちなんだものや、『Bebop』みたいなスタイル名だったと思うんです。でも今回は、ちょっと違うタイトルですよね。タイトルについて教えてもらえますか?

そうですね、今回のアルバムでは自作曲をいくつか録音したいと思ったんです。というのも、よく「作曲はするの?」「自分の曲はあるの?」って聞かれるんですよ。もちろんありますよ。だから今回は、自作曲を2〜3曲収録しました。その中のひとつが「Fervency」です。

◎2曲の自作曲:「Fervency」「Trips with C.C.」

この曲にはちょっとしたエピソードがあります。ある夜、ニューヨークでギグを終えて地下鉄で帰っていたんですね。すごく遅い時間で、車両には僕しかいませんでした。座ったら、そこに小さな辞書が置いてあって、開かれていたんです。そして最初に目に入った単語が“fervency”だったんですよ。それで、その意味を読んでみたら、ちょうどその日、自分が音楽や自分のやっていることについてすごく前向きな気持ちになっていたこともあって、「ああ、この言葉いいな」と思って。それでその言葉からインスピレーションを得て、曲を書いたんです。

もう1曲は、僕のガールフレンドに捧げた曲なんです。彼女の名前はシシー(Cece)って言うんですけど、その曲は彼女に捧げて作りました。初めてデートしたときのことを曲にしています。彼女が車で僕を家まで送ってくれたんですよ。それがあって、この曲を「Trips with C.C.」と名づけたんです。ロウアー・イースト・サイドからハーレムまでのドライブでした。

――以前インタビューしたとき、オリジナル曲を1曲だけアルバムに入れて、“やっと満足できる1曲ができたから収録した”って言ってましたよね。でも今回は2曲入ってるということは、前より自分の曲に自信がついたとか、納得できるようになったってことですか?

うーん、でもそうとも言い切れなくて。実はけっこうたくさん曲は書いてるんです。でも演奏する機会があまりないんですよね。僕の場合、曲を書くときって何か目的があるときなんです。毎日作曲しなきゃっていうタイプのミュージシャンではないんです。

たとえば、僕の弟のルイージ(Luigi)はまったく違います。彼にとっては作曲そのものが音楽活動の一部で、曲を書くことが自分を整える手段みたいな感じなんです。だから彼は常に何か書いてます。

僕も作曲は好きですけど、それ以上にインプロヴィゼーション(即興)の“ミステリー”みたいなもののほうが好きなんですよね。その瞬間・瞬間で生まれるものに惹かれるというか。もちろん、自分の書いた曲を演奏するのも好きですけど、何か明確な理由がないと、曲を書こうとはあまり思わないんです。だから、次のアルバムにもまた自分の曲を入れるつもりだけど、それも何かきっかけがあれば、ですね。

――今回のオリジナル2曲について、サウンド的にはどんなイメージで作ったんですか?

今回の2曲の作曲に関しては、特に大きなテーマがあったわけではないんです。

「Fervency」はとてもスローなバラードです。イントロはアリ・ローランドが弾いていて、実は彼がレコーディングのときにその場でコードをつけてくれたんですよ。というのも、僕たち、事前にほとんど準備していなかったんです。スタジオに入ったときに、僕がアリに「メロディの前に8小節ぐらい弾いてくれない?」って頼んで、彼が「いいよ」って言ってくれて、その場でコード進行をくれたんです。それで、そのまま録音しました。

だから本当に、最初に言ったようにすごく自然で、ナチュラルな感じなんですよね。何も用意せずに、ありのままの音で作った。それがこのアルバムの好きなところです。トリオの音がそのまま聴こえる、まるでライブ録音みたいな雰囲気なんですよ。でも実際はスタジオ録音で、それがまた面白いなと思ってます。

◎タッド・ダメロンへのオマージュ

――他にもカヴァーした曲について聞きたいのですが、今回はタッド・ダメロン(Tadd Dameron)の曲を4曲選んでますよね。その選曲について教えてください。

そうですね、タッド・ダメロンは間違いなく僕が大好きな作曲家のひとりです。すごく良い思い出があって、僕がたぶん8歳か9歳、10歳くらいの頃かな、初めてファッツ・ナヴァロ(Fats Navarro)との共演盤を手に入れたんです。それを聴いたとき、僕も弟のルイージ(Luigi)も夢中になってしまって、本当にお気に入りの録音でした。何度も聴いたので、そのCDが傷だらけになって、再生できなくなっちゃったくらい(笑)。だから新しいのを買い直しました。それで僕たちは、タッド・ダメロンの曲を全部コピーして、当時、ルイージ&パスクァーレ・グラッソ・プレイズ・タッド・ダメロンってバンド名でイタリア中を回って演奏してたんですよ。

――筋金入りのタッド・ダメロン通だと。

そうですね。今回選んだのは、自分が特に好きな曲です。たとえば「Focus」「Jabbero」、それから「If You Could See Me Now」

この「If You Could See Me Now」は、子どもの頃に初めてサラ・ヴォーンの歌を聴いた曲でもあって、特に思い入れがあるんです。実際に僕が今回演奏しているアレンジも、オリジナルのサラ・ヴォーンがバド・パウエルとタッド・ダメロンと一緒にやってる録音のアレンジをそのまま使ってます。

それから「Jabbero」はスタンダード「All the Things You Are」がベースになってる曲なんですけど、ラテンのアレンジで、すごく変わったメロディがついてるんです。音程の飛び方が独特で。でもすごく美しい曲なんですよね。

最後に「Lady Bird」。これはずっと演奏したかった曲で、バリー・ハリス(Barry Harris)のクラスに通っていたとき、いつもこの曲を教材にしていたんです。彼は「Lady Bird」をよく弾いて、生徒にフレーズの作り方や演奏の仕方を教えてくれてました。だから今回、この曲を入れたんです。

――作曲家としてのタッド・ダメロンを、あなたはどう評価していますか?

彼は「最初のビバップ作曲家」と言える存在だと思います。つまり、チャーリー・パーカー、バド・パウエル、ディジー・ガレスピーたちが演奏していたあの音楽の「サウンド」を、しっかりと形にした人物なんです。彼はビッグバンドにも書いていますが、最初は小編成のグループでそのサウンドをまとめ上げていました。

僕が彼のアレンジで一番好きなのは、たった3〜4人の編成──たとえばトランペット、テナーサックス、アルトサックス──だけで作り上げるヴォイシングの美しさですね。とても独特で、まるでピアノ・トリオがそこにいるかのように聴こえることもある。

――なるほど。

それに、彼のメロディってすごく難しいんですよ。すごく複雑で、リズムも難しい。でも、ソロになるとブルースのような進行を使っていたり、「Stompin’ at the Savoy」みたいなスタンダード(の進行)に乗せたりして、アドリブは楽しくできる構造になっているんです。そのギャップが面白くて、僕はずっと好きでした。

あと、メロディとコードの組み合わせ方が信じられないくらい巧みなんです。あの時代に、ああいうサウンドを小編成で実現できたのは、彼だけじゃないでしょうか。ドラムとの絡みも含めて、メロディが全体を満たしている感じがあって。ケニー・クラーク(Kenny Clarke)のドラムにも、新しいアプローチが見えてくるし。

だからタッド・ダメロンって、「これがこの音楽のサウンドだ」ってはっきり示した、数少ない人だったと思うんです。

――特に研究したアルバムがあれば教えてください。

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