* Column:インパルス!レコーズと『A Day In The Life: Impressions Of Pepper』 with PLAYLIST(10,000字)
1. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Antonio Sanchez)
2. With A Little Help From My Friends (Mary Halvorson)
3. Lucy In The Sky With Diamonds (Makaya McCrave)
4. Getting Better (Wildflower)
5. Fixing A Hole (Cameron Graves)
6. She's Leaving Home (Keyon Harrold)
7. Being For The Benefit Of Mr. Kite! (Brandee Younger)
8. Within You Without You (The Onyx Collective)
9. When I'm Sixty-Four (Sullivan Fortner)
10. Lovely Rita (Miles Mosley)
11. Good Morning Good Morning (Shabaka & The Ancestors)
12. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise) (Antonio Sanchez)
13. A Day In The Life (The Ju Ju Exchange)
■インパルスがビートルズのトリビュートをリリースすること
本作はマカヤ・マクレイヴン、アントニオ・サンチェス、マイルス・モーズリー、メアリー・ハルヴォーソン、ブランディー・ヤンガーらが参加したジャズミュージシャンによるビートルズ『Sgt. Pepper's 〜』をネタにした企画盤で、リリースはジャズの名門インパルス!レコーズ。インパルスは2010年代末に突如レーベルが面白い方向に大きく動き出したのだが、その起点はこのアルバムなのかもしれないと個人的には思っている。
まず、インパルスがビートルズのアルバムのカヴァー集をリリースするということの意味に関しては
”1967年リリースのサイケデリックなロックの名盤をジャズ・ミュージシャンがカヴァーする”
という視点よりは
”1967年のビートルズを含めたロックのトレンドに対してリアクションを取った数少ないジャズ・レーベルとしてのインパルスへのオマージュも含めた企画”
という視点で考えるとこのアルバムの聴き方が見えてくるのではないかと思う。
”ジョン・コルトレーンとフリージャズのレーベル”というイメージで語られがちなインパルスの再定義をジャズ・ミュージシャンによるサイケデリック・ロックのカバーを通してやるとの企画として受け取れば、意欲的なアイデアであることが伝わる気がする。少し大胆に表現すれば、本作はインパルス・レーベルの捉え直しが裏テーマにあるにもかかわらず
”ジャズ史における”テナー・サックスのヒーローとしてのコルトレーンの存在感が希薄な企画”
と言ってもいいかもしれない。
■ジャズ視点から考えないサイケデリックなレーベルとしてのインパルス
とはいえ、ここにもコルトレーンは別の意味でなら存在している。インパルス期のコルトレーンといえば『A Love Supreme』や『Ballad』などが語られるのが定番で、それ以外の『Om』や『Ascension』以降はフリージャズの文脈で語られがちではある。ただ、インパルス期のコルトレーンのライブ盤における長尺で変化が無いと言えば無いような演奏を聴くと、ヒッピー的なカルチャーと相性抜群なのはすぐにわかるだろう。同じ文脈のファラオ・サンダースは言うまでもないし、インド音楽を取り込んでより瞑想感を強めたアリス・コルトレーンに至っては更にその要素が強い。コルトレーンの死後のアリス・コルトレーンがプロデュースした作品なんてもはや普通にサイケデリックだったりもする。ユセフ・ラティーフもそんな流れで聴ける音源があるかもしれない。
一般的にはフリージャズやスピリチュアル・ジャズのレーベルとして語られ、やたら硬派なイメージがあるインパルスではあるけど、そのイメージはいったん置いておいて、ここでは
”マリファナやLSDが似合う高揚感を伴ったトランス・ミュージックをリリースしていたジャズ・レーベル”
であると考えてみてほしい。そうすると『A Day In The Life』がかなりしっくりくるようになるだろう。
ここから先は
このnoteの執筆や編集の費用や通訳への支払いなどは皆さんの記事購入で賄っています。制作費用のサポートをお願いします。
