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* interview Lex Blondin:Total Refreshment Centre/Church of Sound ”機動性のある自由、コミュニティのためのスペース”(13,000字)

「2010年代後半からロンドンでジャズが盛り上がっている」という話をする際にいくつかのポイントがあるのだが、その中のひとつにロンドンには様々な人が集まることができる拠点が存在していたことがある。あくまでも音楽が中心にあり、音楽をリスペクトする人が集まる中にはミュージシャンに限らず様々な人がいて、みんなが協力し、アイデアを共有しながら、自由でクリエイティブな活動ができるような「場」があった。

と書くとクラブやライブハウスを想像してしまいそうになるが、ロンドンにあった場はそうではない。ライブハウスであり、クラブであり、そのうえ、レコーディングスタジオでもあり、ワーキングスペースでもある何とも表現しがたい場所。それがトータル・リフレッシュメント・センター(以下、TRC)だった。

※TRCの入り口

ここにはロンドンだけでなく、様々な場所から様々な人が集まり、交流をし、製作をしている。僕も2019年に実際に訪れたのだが、のんびりとしたスペースだが、とても自由で居心地のいい場所であることは分かった。例えば、ここでマカヤ・マクレイヴン『Where We Come From(Chicago × London Mixtape)』が生まれている。勢いのあるロンドンとシカゴのミュージシャンがここで結びつき、新たな流れが生まれた。

その重要性に目を付けた名門ブルーノートがTRCの名を関したアルバム『Transmissions From Total Refreshment Centre』をリリースするまでになったほど。

このTRCの創始者のレックス・ブロンデルはロンドンにおいてもうひとつの重要なプロジェクトに関わっている。それがライブ・シリーズの“チャーチ・オブ・サウンド”(以下、COS)。ロンドンの教会でジャズのライブを行うこの企画は“Jazz Re:freshed”“steez”と並び、ロンドンのジャズシーンに貢献した企画のひとつだ。

ジャズ・ミュージシャンたちに演奏の場を与えるだけでなく、DJを入れたり、ソングブック・シリーズという独自のプログラムを組んだり、会場を特殊な配置で設営したりと様々なやり方で趣向を凝らし、ジャズのライブを特別な体験にすることに成功している。

つまり、レックスはロンドンのジャズシーンに貢献する全く別のふたつの「場」を準備した重要人物となるわけだ。

今回は実際にTRCにも足を運んだことのある柳樂が聞き役となり、レックスにトータル・リフレッシュメント・センターとチャーチ・オブ・サウンドについて解説してもらった。そこで何が起こっているかというよりは、どんなコンセプトや哲学で運営しているのかをじっくり聞いている。結果的にここ数年、ロンドンで起きていることの背景にあるものが浮かび上がってくるような記事になっている。

取材・執筆・編集:柳樂光隆 | 通訳:染谷和美
協力:N.A.S.A. Creative


◉Total Refreshment Centreとは?

――まず最初に、TRC(トータル・リフレッシュメント・センター)という名前の由来を伺えますか?

オーケー。実は、トータル~という同じ名前のお菓子のメーカーがあるんだ。このプロジェクトをやろうと思い立った時に、ガールフレンドと道を歩いていたら、ふとキャンディ・ディスペンサーが目に留まったんだ。その中にあるミント・キャンディに書かれていた「トータル~」という名前をいただいたんだ(笑)

――(たまたま目についただけとは言え)このトータル~という名前は、今レックスさんがやろうとしてることを象徴してますよね。

そうかも知れない。Centreっていうのは要するにコミュニティだよね。人が集まって、何かをやるための「場」だと思う。Refreshmentは、何か新しいこと・新鮮なことをやりたいという気持ちだよね。そしてTotalはとにかく全力で、っていう意味だから、Total Refreshment Centreという名前は凄くぴったりだし、だからこそ皆に覚えて貰えるんだと思う。

※サン・ラがお出迎えしてくれます

――TRCのようなスペース、コミュニティが出来たのは、偶然の成り行きなのか、それとも以前から考えていたからでしょうか?

ああ、自分が好きなプロデューサーやアーティスト達と、何かを作れる場を設けたいとずっと思っていたんだ。元々、さっき言ったような意味でのセンターをずっと作りたくてね。最初は、ウィリアムと一緒に、今の場所からすぐ近い所でスタジオを始めたんだ。これは当時、自分で紙にも書いたから覚えてるんだけど……同じようなことを考えてる人たちが出会う場所、そして自分たちやそれぞれのプロジェクトについて話し合える場所、そこから何かが生まれ、更にそれをプロフェッショナルなレベルまで高められるような場所を作りたい、と考えていたんだ。

例えば、そういうミュージシャンが出入りする場所で、エンジニア出来るけどまだ仕事をやったことがないという人が、コーヒーなんか淹れて、ミュージシャンと話し込んでいる内に「じゃあ一緒にやろうよ」という流れになって、そこに更に「自分はアートワークがやりたい」という人が交わって……という、そんな「輪」が広がればいいな、と思ってね。お互いが助け合えて、何かが生まれる場を作りたい、という気持ちは最初からあったね。

※いろんなところに絵が描いてあったり、写真が飾られてたり、あらゆるところにアートが。

前提として、まず自分が楽しくてやっていたから、当初はビジネスとして取り組んでいるつもりもなかったんだ。ただ、2012年にスタジオが出来て、2013年にはコンサート事業の話も出てきて、あっという間にそっちの方に(ビジネスとして真剣にやっていく)移行していったんだ。

場所を作って最初に声をかけたのが、僕が好んでディグしていたミュージシャンのサッカー96コメット・イズ・カミングキャピトル・K。「あなた達を凄くリスペクトしているんだ」ということを伝えて、一つ屋根の下で制作もライブもやって貰うようにしたんだ。そしたら、それが余りにも楽しそうだったからだろうね(笑)口コミで広がって、一緒にやりたい、という人がどんどん増えていったんだ。TRCも11年間やってるけど、最初からやっている事はそのころから特に変わってないと思うよ。

※キャピトルKはTRCのレコーディングスタジオのエンジニアでもある

――僕も実際にTRCに訪れたんですけど、結構広いし、部屋も多くて、かなり規模は大きいですよね。あれだけのスペース、ひいてはプロジェクトを回すだけの人脈なりコネクションは最初からあったのでしょうか?また、今のこのTRCの発展は計画していたものなのでしょうか?

基本的には自然な成り行きだったと思うよ。一人、知り合いが出来ると、そこから芋づる式にだから。2012年にスタートした段階で、自分はいろんな音楽が好きだったけど、一番夢中だったのはポストパンクのような、80年代初頭の音楽だったんだ。趣味が近いプロデューサーのキャピトルKと出会って、彼のローファイだったりダビーだったり、一辺倒ではないスタイルに刺激されて、僕も音楽的な視野が広がっていったんだ。

ライブ・ベニューとしてTRCをやっていく中で、サッカー96がライブをやりに来て、それをたまたまシャバカ・ハッチングが観に来て、ライブが終わったしばらく後も残って……そこから(そういった交流から?)だんだん、ジャズ・シーンのようなものが生まれてきたんだと思う。例えば2015年にはブレイン・チャイルド・フェスのオーガナイザーのマリナ・ブレイクが「一緒にフェスをやらない?」という話を持ち込んできたり、場所を続けていく過程で、自分たちの世界が、皆の手によって拡げられていったんだよね。

そのフェスでジョー・アーモン・ジョーンズヌバイア・ガルシアテオン・クロスといったUKの若手のジャズミュージシャンたちが演奏していて、彼らはその後どんどん知名度を上げていって、有名なヴェニューでも演奏するようになっていった。そして、僕もジャズとヒップホップを分け隔てなく演奏するような世代のミュージシャンたちのシーンが見えてきて、そこはすごくエキサイティングだって知った。そういう動きが勝手に広がっていくと、僕のマインドもどんどん広がっていく。やはりこういうプラットフォームを持っている人間としては、一度知り合った人とはその後も連絡を取り合って、常に次の機会を作るようにしようと考える。

今のTRCの状況だけをいきなり見ると「シャバカみたいな大物をどうやって掴まえたんだ?」と思うかも知れないけど、昔はシャバカだって何者でもなくて、僕らのやってることに興味を持ってくれて、一緒に場を作ってくれた仲間の一人だったんだよ。

そもそも若くて面白いプロデューサーやミュージシャンに場を与えよう、ということ自体がなかなか無いことなんだ。だから、場を作って、面白そうな人が来ればどんどん受け入れて、その場を盛り上げていれば自然と一人また一人と新しい人がやって来る。TRCはまさに、そんな流れだったと思うよ。

◉自由でクリエイティブなスペースの運営方法

――なるほど。TRCは特殊な場所だと思うんですが、レックスさんにとってTRCのモデルになった場所、インスピレーションを与えてくれた場所は他にありますか?

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