Column:Chet Baker Vibes - チェット・ベイカーに魅了された人々(5,200字)+ PLAYLIST
イギリスのデッカ・レコードが『Chet Baker Reimagined』という編集盤をリリースした。
これはその名の通り、チェット・ベイカーを再解釈したもの。つまりはオマージュ作品と言ってもいいだろう。
チェット・ベイカーはジャンルを超えて愛され続けている人気アーティストだ。日本でもカフェブームの頃にはよく聴かれていたし、その前からさまざまな場所で流されていて根強い人気があった。何度か来日もしているし、日本だけの編集盤も制作されている。 さらに、いろんなコンピレーションにも彼の曲は頻繁に収録されているし、雑誌が音楽系の特集を組む際には、チェットのアルバムのジャケットがよく掲載される。
とはいえ、チェットはジャズ史において革新的な存在ではなく、ジャズ・ジャイアンツとは言い難い。歴史を変えるような楽曲を生み出したわけでも、新しい手法を編み出したわけでもない。 実際、チェットの影響を語るアメリカのジャズ・ミュージシャンは決して多くはない。というか、あまりいない。それにもかかわらず、その人気は衰えず、ずっと聴かれ続けている。アーティストというよりは、リスナーやファンに愛される存在と言ってもいいのかもしれない。
そんなチェットをオマージュした企画盤が『Chet Baker Reimagined』だ。2025年に製作されたこのアルバムには若いアーティストたちがこぞって参加している。チェットを再評価する文脈があり、その流れに沿う形で人選が行われた作品だと言える。
◎ 2025年:『Chet Baker Reimagined』
ここに参加したアーティストは、自宅での宅録からスタートしたベッドルーム系のアーティストが多く、サウンドクラウドやYouTube、TikTokなどから頭角を現した人が中心だ。 どこか内省的な表現を得意とするアーティストが目立つ。
その方向性は選曲にも反映されている。収録された15曲のうち、11曲が『Chet Baker Sings』から、3曲はその続編とも言える『It Could Happen To You』からの選曲で、残りの1曲のみがそれ以外の楽曲だ。 つまり、このアルバムはほぼ『"Chet Baker Sings" Reimagined』と言ってもいい内容になっている。
収録曲の多くで、アーティストたちはチェットのようなささやくような歌唱をしている。そのことからも、チェットの内省的でメランコリックな表現が現代のアーティストたちの感性を先取りしていたことを示そうとしているのかもしれない。
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