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* 21世紀のブラジリアン・ジャズ ディスクガイド with PLAYLIST(15,000字)

日本では2010年ごろ、アントニオ・ロウレイロの1stが(音楽評論家の高橋健太郎により)発見されたことから徐々にブラジルの音楽シーンの新しい世代に注目が集まるようになった。そこからアントニオ・ロウレイロを中心としたミナスやサンパウロのミュージシャンたちによるシーンの存在が明らかになり、ハファエル・マルチニフレデリコ・エリオドロら、個々のミュージシャンについても情報が届くようになっていった。

その後、アントニオ・ロウレイロやハファエル・マルチニらが日本のレーベルからアルバムをリリースするようになったり、来日公演をするようになったり、ちょっとしたブームのような状況にもなり、小さな盛り上がりを見せた。くるり主催の京都音博に2015年にアントニオ・ロウレイロ、2017年にハファエル・マルチニ、アレシャンドリ・アンドレスが出演したのもそんな流れのひとつと見ていいだろう。

ちなみにその少し前に2010年ころにカルロス・アギーレアカ・セカ・トリオらを始めとしたアルゼンチンの現代版フォルクローレのミュージシャンたちが発見され、その流れから近い音楽性を持っていた隣国ブラジルのアンドレ・メマーリらも紹介されていたこともそういった新しいブラジル音楽への関心を後押ししたのだろうと思う。

そのアントニオ・ロウレイロを中心としたブラジルの新世代の音楽は、南米音楽のリスナーだけでなく、ジャズのリスナーをも魅了した。これまでジャズ・リスナーが聴くブラジル音楽のイメージは長い間、更新されていなく、ジャズのリスナーがブラジル産のジャズの新譜を同時代の音楽として聴くような感覚があまりなかったのが現状だった。

そんな中で発見されたアントニオ・ロウレイロらの世代は明確に同時代の世界のジャズと共振していた。90年代末以降のブラッド・メルドーカート・ローゼンウィンケルら、そして、00年代から2010年代のロバート・グラスパーらといったアメリカのジャズシーンを中心としたサウンドとの共通点が見られ、それはつまり彼らがジャズに取り入れていたロックやヒップホップ、エレクトロニック・ミュージックなどの要素も聴くことができた。ハイブリッドさも含めて、彼らは同じ時代を共有していた。

2017年、ブラッド・メルドーやマーク・ターナーらとともに2000年代のジャズに革新をもたらしたギタリストのカート・ローゼンウィンケルがKurt Rosenwinkel『Caipi』をリリースした。もともとトニーニョ・オルタをはじめ、ブラジル音楽からの影響を公言していたカートだったが、ここではアントニオ・ロウレイロフレデリコ・エリオドロ、そして、また日本ではほとんど知られていなかった新鋭ギタリストのペドロ・マルチンスが起用され、ミルトン・ナシメント系譜のブラジル・ミナス地方のサウンド×カートが何度もコラボレーションしているQティップ経由のヒップホップ的なハイブリッドなサウンドに大きく貢献していた。

ここでの活躍がきっかけでペドロ・マルチンスの名は徐々にシーンに広まり、2020年にはサンダーキャットの傑作Thundercat『It is What It is』のタイトル曲を共作し、LAで活動するベーシストのサム・ウィルクスSam Wilkes『Live On The Green』にも起用されるなど、一気にアメリカのジャズ・シーンにも食い込みつつある。

そんな現代ジャズとブラジルの蜜月が始まる予感が漂う状況が生まれている中、実際にブラジルの音楽の中でも特に”現代ジャズがどうなっているのか”はよくわからないところがあるし、メディアでも紹介されているのを見た記憶がない。ここでは《現代ジャズ・リスナーのためのブラジル音楽入門》ということで、『Jazz The New Chapter』を読んでいるようなリスナーのための、つまりブラッド・メルドーやロバート・グラスパーが好きなリスナーのための現代ブラジル音楽をピックアップして紹介しようと思う。

執筆・編集:柳樂光隆 協力:江利川侑介(ディスクユニオン・ワールドミュージック部門バイヤー)

ほぼCDも出ているのでディスクユニオンなどで買える商品も少なくないので、CD派の人は以下のリンクをどうぞ。


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