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アースとグランドと、仮想アースというオカルトグッズ

長文なので結論から。
ノイズやケーブルで深刻なお悩みをお持ちの場合、
ご相談はホームページからメールで承ります
(これまで数十件解決しております)。

電磁誘導ノイズの原因は、インピーダンスが低い場所のグランドループ、
静電誘導ノイズの原因は、インピーダンスが高い場所のグランド不良、
電源由来ノイズの原因は、除去回路の有無なので、

①グランド電位安定のため、アンプは小さく重いものを使う。
②パワー部に安定化電源やLC回路を使用したアンプを使う。
③オーディオで保安アースを行う場合、パワーアンプのみ行う。
④グランドループは確実に切る。
⑤静電誘導対策としてシールドがしっかりしたケーブルで繋ぐ。
⑥レコードプレーヤーのアース線はアンプやミキサーに必ず繋ぐ。
⑦交流磁界対策は磁性体で遮蔽またはケーブルをツイストする。
⑧コンセントからのノイズは、ノイズ除去機器からアースに戻す。
⑨静電気帯電はイオナイザーやプラズマクラスターで除去する。
⑩調光スイッチはとんでもないノイズ源なのでやめる。

◯仮想アースはイカサマ。理論的にはノイズアンテナ。

それでは解説いたします。

 アースは、感電事故防止のために地面から出ている保安用接地電極です。

 家庭用電源は、電柱トランスから出た2本の100V線のうち、片方の1本(3本の200V線の場合、中点の1本)が電柱の直下地面に繋がっています。いっぽう、洗濯機や電子レンジ専用のコンセントには、住宅の直下地面から出ているアース電極がついていて、洗濯機や電子レンジの筐体から緑色の電線を繋げるようになっています。
 洗濯機や電子レンジが漏電すると、筐体に漏れた電流が緑色の電線を通り、コンセントのアース電極を経由して住宅の直下地面に流れます。水分を含む土は電気を通すので、電流は大地を流れ、電柱の直下地面から電柱トランスに戻ります。アースに繋いでいれば、漏電中に洗濯機や電子レンジに触れても、人体のほうがアース電極より対地抵抗値が高いため感電しません。同時に、屋内配線の戻り電流が激減することで漏電遮断器が反応し、電気をカットします。

 グランドは、
①電子機器の内部回路で、不平衡信号の基準電圧点(線)。
②電子機器の内部回路で、静電誘導ノイズの反射電位面。
のふた通りの意味があります。

 ①複数の電子機器を繋ぎ不平衡信号を伝達する場合、お互いのグランド(基準電圧点(線))を繋いで同一レベルにする必要があります。ほとんどの機器はケーブルで繋ぐと、自動的にグランドが繋がるように設計されています。障害が発生してグランドの繋がりが不安定になると、基準電圧が不定となり、グランド浮きと呼ばれるノイズが発生します。

 ②電子機器の筐体を内部回路のグランド(反射電位面)に繋ぐと、内部回路とインピーダンスを形成し、かつ筐体外部と形成する浮遊容量がバリアとなって電界から来る静電誘導ノイズを反射します。また、一般的にケーブルは静電シールドされていますが、これも適切な設計によりグランド(反射電位面)に繋がって静電誘導ノイズを反射します。

 筐体の端から端までの直流抵抗値が低く、基準電圧点(線)・反射電位面・筐体間のインピーダンスが低いほど、グランド電位は安定します。

 よく混同されるのですが、高周波による干渉に対抗する電磁シールド、交流磁界によるノイズに対抗する磁気シールドやツイストケーブルは、電界由来ノイズではないのでグランドに繋ぐ必要はありません。

 結果的に、グランドが関係するノイズ発生の問題①②が、たまたま同じトポロジーで解決するという、視覚的混乱が発生します。

  アースやグランドについて、さらに混乱する要因として、
 a)高電圧大電流を扱う機器は、感電事故防止のためアース線が出ている。
 b)電源由来のコモンモードノイズを除去する機器からアース線が出ている。
 c)単独で静電シールドが機能しない機器からグランドに繋ぐ線が出ている。
 d)放送やレーダーなどの電波は、グランドに地面を利用する。
 e)自動車の電装系強化に、アースと似て非なる“アーシング”がある。
が挙げられます。

 a)は、ハイパワーアンプやミキサーが該当します。気をつけるべきこととして、複数の音響機器を感電事故防止のためアースに繋いだ場合、ケーブルで機器同士のグランドを繋ぐと、グランドループという現象で電磁誘導ノイズを誘発します。この場合は対策として一台のみアースするか、二台以上アースする場合は、アイソレーションまたはフローティングという処理をしてケーブルを繋ぎます。

 b)は、電源用ノイズフィルタや電源用ノイズカットトランスが該当します。コンセントから流入するコモンモードノイズは電源・アース間インピーダンスの揺らぎなので、コモンモードフィルタやトランスの静電シールドにコンセントのアース線を繋いで除去します。蛇足ですが、静電シールドのない絶縁トランスは高周波コモンモードノイズをカットできません。

  c)は、レコードプレーヤーが該当します。レコードプレーヤーのトーンアームは、静電シールドして静電誘導ノイズを反射する必要がありますが、ノイズの侵入口がカートリッジの信号線なので、トーンアームのシールドを信号線のグランド接続側または信号線を受ける機器のグランドに繋ぐ必要があります。しかし信号線のグランド接続側に繋いだ場合、ヘッドシェルを外した時にグランド浮きによってノイズが発生し、スピーカーを破損する可能性があるため、トーンアームのシールドを信号線を受ける機器のグランド端子に繋ぎ、グランド浮きを防止します。

 d)は、そもそも外来電波による影響が大きいとわかっているなら、行政に相談すべきです。部屋ごと電磁シールドし、ついでにおまじないとして地面にアースではなく多点グランドしてください。

 e)アーシングは、自動車の電装系(バッテリーのマイナス側)をボディに落とし、戻り電流を流しているボディアースを、迷走電流の影響やボディの抵抗による損失を避けるために電線化することです。ボディの抵抗値より電線の抵抗値が小さくないとアーシングの効果がないので、アーシング用電線は極太になります。余談ですが過去のアーシングブームの影響で、通常のグランド用電線も極太が良いという誤解を招いています。アーシングの電線には大電流が流れますが、グランド用電線は正常であれば電流は流れないので、細い電線で大丈夫です。ただし、感電事故防止用のアース線は地絡電流が流れるので、AWG16程度の電線が必要な場合もあります。

 アースとグランドの違いや役割について、オーディオ評論家はおろか、音響の専門家ですら理解できていない方が多いため、適切な接続をせず不毛なノイズとの戦いを続け、ついオカルトグッズに手を出してしまい、みごと朽ち果ててしまう例が多いのが現状です。

 お気づきになったと思いますが、洗濯機や電子レンジのアース線は、電柱がある地面に繋がっていないと感電事故防止対策になりません。つまり、メタルラックや植木鉢の土に繋いだり、水道管が樹脂製の水道蛇口に繋いだり、プロパンガスのガス管に繋いでも全く意味がないのです。

 いっぽう、筐体や静電シールドを静電誘導ノイズを反射するバリアとして機能させるためには、電子機器内部回路へのグランド接続が必須で、感電事故防止用のアースに繋いでもまったく機能しません。また、高周波干渉は良導体で遮蔽、交流磁界ノイズは磁性体で遮蔽し、ケーブルをツイストすればグランド接続すら必要ありません。

 アース接続で軽減できるノイズは、電源用ノイズカットトランス(対地静電シールド)や電源用ノイズフィルタ(対地LCフィルタ)を使用したときのみ可能な“コンセントから流入するコモンモードノイズ”だけです。

 つまり、ノイズを下げると称し、どこから発生するノイズを消すのかまったくわからない、最近跋扈している「仮想アース」(アース線に金属電池をぶら下げたアンテナ)は、そもそもアースとしてもグランドとしても機能しえないのです。

 もしアース線を経由し仮想アースに向かって電気が流れるとしたら、筐体帯電しかないのですが、静電気の筐体帯電による絶縁破壊ノイズが発生すると機器は十中八九誤動作を起こしますので、音楽を楽しむどころではありません。もし静電気による筐体帯電を取りたいなら、静電気抑制シールやイオナイザー・プラズマクラスターのほうが何千倍も効果があります。筐体帯電が真空管アンプ等の高電圧由来による絶縁破壊であれば故障または設計不良なので、修理するかまたはa)で説明した筐体の保安アース接続が必要です。

 10,000uFよりバカでかい大容量電解コンデンサで組んだ、力率も効率も頭も悪い80年代型非安定電源をいまだに採用している某金色メーカー(あげく終段MOSFETに保護用としても全く不要なソース抵抗をつけ、オン抵抗が上がってしまうのでNパラ駆動し、その寄生容量が前段の負担を激増させ、昔なら「無線と実験」誌が全否定するところ今や大スポンサーなので賞賛してしまう、史上稀に見る迷設計)の超高額パワーアンプ(終段電源の定電圧化と過電流保護にリソースふればいいのにね)が、コンセント由来のノイズを全く除去できずスピーカーにスルーし、部屋の照明やエアコンのスイッチを入れるだけでパチパチジージーいう様な場合は、電源用ノイズフィルタでせいぜい頑張りましょう。こんなヘボアンプより、電源がLC回路でできている真空管アンプのほうが音が良いのは当然ですし、今どきのトランジスタアンプはスイッチング安定化電源搭載のほうがノイズが少ないです。ちなみに、調光スイッチは電磁誘導、静電誘導、電源由来すべてのノイズ源となりますので、調光スイッチをやめて個別間接照明に切り替えたほうが、ノイズ対策するより安上がりとなります。

 いやいや「仮想アース」は効果あるよ、音が変わるよという場合、「相当にアホな接続をして、筐体間に電流が流れている」か、「機器の設計や組み立てがヘボで、①筐体とグランド間が高抵抗・高インピーダンスで浮いていたり、②グランドポイントが不適切で筐体の電位が電源リプルで揺れていたり、③アースをとっていないのにトランス一次側と筐体間にコンデンサが入っていたり、④筐体と回路のインピーダンスについて熟慮のない多点グランドで筐体に大電流が流れていたり、⑤情報表示デバイスのダイナミック点灯によって電源が低インピーダンスでスイッチングされていたり、⑥筐体内部のマイコンから筐体へノイズが盛大に放射されていたりして、グランドがマトモに機能していない」状況です。そんな状況なら、ヘボ機器の筐体とフォノイコライザのグランドを繋げば「仮想アース」など買うまでもなくグランド電位が安定し、静電誘導ノイズを反射し、シールドが機能します。

 回路網による解析説明が一切なく、オームの法則より重要なキルヒホッフの法則に反した仮想アースのアース理論は真のイカサマ、頭にアルミ箔巻くのと同じエセ宗教的行為です(ちなみに、頭に巻くなら軟鉄・銅・ニッケルのいずれかの箔でないと全周波数帯に対応できません)。好意的に考えてもせいぜい静電シールドと同等です。

 しかし、仮想アースがアンテナとして動作していると考えると、
①電磁・静電に関わらず、誘導ノイズがノーマルモードで発生している場合、仮想アースが同じ誘導を拾い、グランド側にノイズを注入することによって擬似コモンモード化し、差動アンプで除去される。
②誘導ノイズがコモンモードで発生している場合、仮想アースが同じ誘導を拾い、グランド側にノイズを注入することによってコモンモードのバランスが崩れ、ノーマルモード化してフィルタが効き、平均ノイズレベルが下がる。
という「毒をもって毒を制す」効果があるかもしれないと考えられます。高い金を払って効くかどうかもわからない、そんな対症療法でも良しとするなら何も申しません。

もし仮に私が「仮想アースを作ってくれ」と言われたら、ノイズ理論を重視して、アンプのケースより倍以上重い鉄・銅またはステンレスのインゴットやラックを用意し、プリアンプの下または上に必ずインピーダンス0.2Ω以下で密着させてグランド電位を安定させた上で、必要なら10Ωくらいの抵抗を介してプリアンプのシグナルグランドとつなぎます。

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