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ワインコラム55:心に響く歌

タイトルデザイン☆Ryoko Sakata
写真☆Masaru Yamamoto

突然だが、「ダニーボーイ」と云う曲がある。
以前からこの曲を聴くと、強い郷愁のようなものを感じ心がざわつく。何処かの店や街なかで、耳に入ってくると、耳をそばだてて聞き入ってしまう。

この曲は1913年に発表された、アイルランド民謡を元にした曲だ。
旋律は「ロンドンデリーの歌」として以前からあったもので、それに歌詞を付けて、「ダニーボーイ」として発表された。因みに1913年とは第一次大戦が勃発する1年前の年だ。

私はこの曲が“ 好き “と云う言葉では言い表せない、もっと深い思い入れがあり、耳にしたら聴かずにはいられないのだ。
「ダニーボーイ」は、私の心を揺さぶる大きな力を持っているらしい。曲を聴くとなぜかノスタルジアを感じ、名状しがたい気持ちになる。

そんな訳はないのだが、「私の前世はアイルランド人では• • •」と一時思ったほどである。

この曲を明確に意識したのは、大学のまえに語学学校に通っていた時だった。
ひとりの教師が、よっぽどこの歌が好きだったらしく、興が乗るとアカペラで歌っていた。その時はそんなに感動はしなかった(歌い手の問題か• • •)のだが、「ダニーボーイ」と云う曲が明確に私の中に意識された瞬間だった。

歌詞によると、戦(いくさ)に行く息子を思う母の、別れや喪失感を歌ったもので、切ない旋律とともに心に響く。

教室で「ダニーボーイ」を聴いてから数十年、使い古された言葉で云えば、私の“ 心の歌 “となった。

もう一つ心に残る曲がある。
岸洋子の「希望」だ。発表されたのは1970年。前回の大阪万博の年だ。

彼女は他の女性歌手と違って、落ち着いた低めの声を持っていた。
そんな彼女の歌を中学生の私は、テレビの前で身じろぎもせず聴いていた思い出がある。中学生の私の心はざわついていた。

岸洋子は芸大の声楽科を出たが、心臓病のため止むなくシャンソン歌手になった経歴がある。
「希望」でもその歌唱力がバックボーンとなり、他の歌謡曲とは一線を画する曲となった。

歌詞を要約すれば、恋人を探し求めて旅する歌だ。
恋人は“ 希望 “と云う擬人化した表現になっている。恋人を求めて“ 遠い町 “へ旅する。その頃の私には“ 遠い町 “への憧れがあったのだろう。後に、毎年一人旅をするような“旅好き”になったのだから。憧れだけでは無く、これからの人生を暗示するような言葉も、歌詞の中に感じとっていた。

1番の終わりは、自分は恋人に会うまで終わりのない旅を続けるだろうと歌われる。
ここで、あなたと呼びかけられる“恋人”とは、夢や幸福を表しているように思える。「終わりのない旅」とは人生なのだ。

15歳の私は、それに薄々気づいていた。



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