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私はピアノに『会いに』行く

ストリートピアノには、そのピアノがもつ歴史がある。
ピアノ生、とでも言おうか。

小学校で使われなくなったピアノ。
誰かの家で、大切に弾かれていたピアノ。
持ち主がいなくなって、新しい居場所を見つけたピアノ。

まっさらなストリートピアノは、ほとんどない。
どこかで役目を終え、また別の場所で新しい時間を刻み始めたものが多い。

今まで、そんなピアノたちに本当にたくさん出会ってきた。

けれど、その物語は
どれくらい知られているんだろうと思う。

ただ「そこにあるピアノ」として、
通り過ぎてしまうことは簡単だ。

私の地元の駅に置かれているストリートピアノは、
私が通っていた幼稚園にあったピアノだ。

しかも、幼い頃、
そのホールで聴いたり、実際に触れたりしていたあのピアノ。

思い入れがあるからこそかもしれないけれど、
その背景を知るだけで、音がとても豊かになる気がした。

埼玉県の熊谷駅にあるストリートピアノも、
幼稚園にあったものらしい。
ピアノの横に、そう書かれていた。

あ、地元と同じだ。
そう思うと、なんだか少し嬉しくなった。

大きなブームにもなったストリートピアノだけれど、
静かに減ってきている気もしている。

自由に弾ける場所がなくなったり、
いろんな事情で姿を消してしまったり。

今そこにあるこのピアノも、
いつかまた別の場所へ行くのかもしれない。
あるいは、もう会えなくなる日が来るのかもしれない。

そんなピアノが、
一体どれほどあるんだろう。

『全国のストリートピアノを弾きに行きたい』

そんな無謀なチャレンジを始めて、
いろいろ調べたり考えたりしているうちに、

弾きに行きたい、という気持ちより
会いに行きたい、と思うようになった。

弾きに行く、というより
会いに行く。

どんな景色の中にいて、
どんな人たちの時間を見てきたんだろう。

どんな音を鳴らしてきたんだろう。

そんなことを思いながら、
全国のストリートピアノを巡る旅を始めた。

そのひとつが、
千葉県・犬吠埼のストリートピアノ。

150年以上、海を見つめ続けてきた灯台のそばで、
静かに置かれていた一台のピアノ。

ピアノそのものの歴史はあまり語られていなかったけれど、
それを上回る150年の時間が、そこにはあった。

どんな人が足を止めて、
どんな気持ちで鍵盤に触れてきたんだろう。

そんなことを思いながら、
「ハナミズキ」を弾いてきた。

よかったら、
このピアノにも会ってみてほしい。

🎹 犬吠埼ストリートピアノ「ハナミズキ」

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