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【『選挙と鬱」初日舞台挨拶取材】「この映画を通して生き続けましょう!」水道橋博士と仲間たちが戦った記録『選挙と鬱』公開。青柳拓監督と博士たちが、あの夏を振り返った。

タイトル写真『選挙と鬱」上映後舞台挨拶
(左から)青柳拓監督、水道橋博士、三又又三、原田専門家
取材・文 後藤健児

 2022年6月の参議院議員選挙に、れいわ新選組から立候補した水道橋博士。弟子や仲間の芸人たちで結成された寄せ集め選挙チームは、てんやわんやの全国行脚の中でも着実に聴衆の理解を得ていき、当選を果たす。しかし、国会初登院から3か月後に、博士は鬱病により議員を休職、辞任に至る。目まぐるしいその期間はどのような波がうねり、流れていたのか。一部始終を密着撮影している者がいた。コロナ禍で自転車配達員の仕事を続ける自身にカメラを向けた傑作ドキュメンタリー『東京自転車節』(2021年)で注目を浴びた青柳拓監督だ。最新作では、映画評論家の町山智浩からの呼びかけに呼応して、密着撮影を決意。博士の立候補から選挙活動、そして当選と鬱に至るまでの怒涛の日々を捉え、新たな観点から日本社会を描出した。
 6月28日から東京・ユーロスペースで上映が始まった本作。初日初回の上映後に舞台挨拶が行われ、青柳拓監督と水道橋博士、選挙を応援した芸人仲間の三又又三、グラフィックデザイナーなど幅広く活躍する原田専門家の4人が登壇し、あの夏を振り返った。

『選挙と鬱』ポスター

 最初に登壇した青柳監督は「ご来場いただきまして、ありがとうございます。あの夏から3年が経ちました。ものすごい暑い中、当時の熱狂を思い出して、今日一緒に観ていました。本当にようやくここまでたどり着くことができました。出演者の皆さんにまず感謝を。そして、なにより水道橋博士とのご縁をいただけて、こうして作ることができました」と心からの感謝を述べつつ挨拶。
 続いて登壇した博士は「満員のお客さんで初日を迎えられて本当にうれしいです」と笑顔を見せ、続けて「選挙で当選したときより実感があります」と観客を笑わせにかかる。「映画の初日を迎えたことは何回もありますけれど、満席というのはなによりうれしくて報われます。ここにたどり着けるまで、監督はよく粘ってくれました。ありがとうございます」と礼を伝えたあと、2人が互いに深々と頭を下げる一幕も。

お礼を伝えあう、青柳拓監督と水道橋博士

 作中でそれぞれ歌で盛り上げていた、三又と原田専門家。三又は「ザ・ペニバンズです」と、原田と組んでいるユニット名を名乗るも、即座に博士が「しらんがな(笑)」とツッコむ。観客と一緒に鑑賞していた三又は「プロデューサーと監督が”三又さんのシーンでね、必ず笑いが起きるんです”と言うので期待していたら、今日は一切笑いが起きなかった(笑)。ここの壇上に上がるのが怖かったもん」と苦笑。博士は「皆さん、内心で笑ってるんですよ」とフォローする優しさを見せ、そこから話は選挙期間中での、金八のモノマネなど選挙とまったく関係のない三又の振る舞いについてトークは盛り上がる。作中ではB’zの「ultra soul」のサビをシャウトするなど暴走していた三又だったが、実はさらに暴れていたようで「映画ではカットされてるんですけど、『あんたが大将』の替え歌で『麻生が大将』も歌ってるんですよ」と明かす。ボケ倒すだけではなく、選挙は参加するものだと語り、マイクを持って街頭で堂々としゃべれることの楽しさを実感したと当時を懐かしそうに振り返りもした。
 また、三又がエレファントカシマシの『俺たちの明日』の歌詞「さあ がんばろうぜ!」を歌うシーンが印象的だが、これについて三又は「僕がいきなり”さあ がんばろうぜ!”とか言い出して、ちょっとおかしいやつじゃないですか。でもね、あれは……」と真相を明かす。それは博士と町山智浩のYoutube対談にあった。「僕は博士から、みうらじゃんさんと町山智浩さんを知って大好きになったんです。博士が選挙に出るとなったときに、町山さんが動画で”いいじゃない! 水道橋博士が選挙に立候補する、それを応援しない手はない! ♪さあ がんばろうぜ!”と歌い出したのを僕は観て、これは応援するしかないな」と。しかし、博士は冷静に「だからって、パクればいいもんじゃない。そのままだから(笑)」とツッコミを入れた。
 れいわ新鮮組の中でも博士陣営は未経験者の少数メンバーばかりだった。博士は「選挙歴が長い方はそれぞれものすごい組織的な動きで陣営を立てる。僕らはポンコツが7人いるだけで、本当に『七人の侍』なんですよ。ひとりずつ村のために頑張ろうぜ、みたいな感じで集まってくる」といかに厳しい状況下での戦いであったかを語る。ネットでの発信による空中戦も展開していた博士陣営だが、やはり熱は現場で醸成されるものだ。博士はフェスとして盛り上げてきた、陣営の取り組みを振り返り「渦に巻き込んでしまうと聴衆の方々も一緒になって、はやし立て踊る空間がずっと続くんです」と話す。それから、今年も行われる参議院選挙についてこう語る。「やっぱり、選挙は”戦(いくさ)”であり、”祭り”なんです。皆さん、全員参加して楽しむということをこの映画を通して、わかっていただければ。思想や支持政党は関係なく、身近にそういうことを味わってください」と思いを伝えた。
 ここでギターを抱えて登壇していた原田専門家がいよいよ歌う準備に入る。原田は「映画の中でちょこっと使われている応援ソングがあるんですけど、この舞台挨拶のために『選挙と鬱』の曲を作ってきました」と言ったあとギターの弦に手を添えた。そして歌い出す。

 選挙と鬱の映画ができました
 青柳拓監督の4本目
 参議院選挙に出馬した水道橋博士の映画
 
三又又三が出てきたら そっからすっかりコメディになる
 笑って泣いて また笑う 水道橋博士の映画
 希望のある映画
 涙のある映画
 笑いのある映画
 
水道橋博士の映画

原田専門家の『選挙と鬱』応援ソングに会場は大盛り上がり

 歌唱中に客席からは自然と手拍子が発生し、歌が終わると拍手が起こった。三又は「歌詞を変えただけじゃん」と身もフタもないことを言うが、博士は「素直な歌詞だなあ」と感心していたようだった。三又は「さっきの歌で”涙のある映画”という歌詞がありましたけど、映画の中での博士の奥さんのシーンは大好き。こちらはほんのちょっとの期間、一緒にいるから楽しいんだけど、奥さんは大変だよ。芸人の水道橋博士も好きだけど、(本名の)小野正芳も大好きなわけじゃん」と映画の泣けるポイントをアピール。博士は「家族の理解がないと選挙は本当にできません。僕の家も映ってましたけど、選挙で手放しましたから。いま、そこはチャイナマネーで買われて、レンタルハウスになってるんです。僕ら家族のいまの夢はそこに一泊すること(笑)」としんみりした客席を笑いで温め直す。
 この日、公開が始まった本作の広がりについて、根本的なところは選挙と通ずるものがあると博士は言う。「映画も選挙も同じなんですけど、皆さんが横に広げていただいてもらえたら。感想でも反論でもいい、反響が一番大事なんです」と。青柳監督も同調して「選挙では、いい戦略をいっぱい仕掛けてきました。僕がそれを発見していったように、その過程を共有して映画で見せていきたい」と話す。続けて、「どれだけ映画のことを知っていただけるかに懸かっています。今回、著名人の方を対象にした映画は初めてだったんですけど、本当にやれることがめちゃある。宣伝活動もずっとやり続けてここに立てたけど、今日からが始まりなんです!」と決意あらたに力強く訴えた。
 その後の舞台挨拶は、いまは不動産会社に勤務している三又を博士が「映画の公開中に三又さんが地面師サギで捕まらないことを僕は願っています」とイジり、三又が「僕はまともな会社ですし、地面師に騙されないようにする側ですから!」と返す即席漫才が繰り広げられる充実の展開を見せ、最後に登壇者それぞれから挨拶がなされる。
 原田は「観るたびに新たな発見がある。勇気や希望がもらえる映画」とアピール。
 三又は「町山さんの一言から始まって参加した映画。最高の夏でした」と述懐。
 青柳監督は「今日がこの映画の完成。うれしくてたまりません。この映画を広げていきます。今度、選挙がありますが、選挙は参加できるもの。映画で政治を変えることはできないかもしれないけど、世の中をよりよくするための何かが皆さんの中で生まれたらいいな。今日はありがとうございました」と映画の力を信じた素直な気持ちを吐露。
 そして、博士が締める。「『選挙と鬱』このタイトルは、”躁と鬱”、”生と死”、”ハレとケ”などの二項対立をかけているんです。人生は2パターンの波の中にあることを表現しています。僕個人としては、この映画は生存証明です。僕が生きているように、皆さんも生きている。”Me,Wee”の関係で、この映画を通して生き続けましょう!」とアントニオ猪木ばりのハツラツさで元気いっぱい吠えると、それに応えるように客席からは万雷の拍手が湧き起こった。【本文敬称略】

また、現在発売中の『映画秘宝』8月号では特集を組み、水道橋博士×青柳拓×町山智浩の公開記念対談を掲載している。こちらもチェックされたし。

『選挙と鬱』
東京・ユーロスペースで公開中。他、全国順次公開予定。
監督・撮影:青柳拓
出演:水道橋博士、町山智浩、三又又三、原田専門家、やはた愛、大石あきこ、山本太郎ほか
製作:水口屋フィルム、ノンデライコ
配給・宣伝:ノンデライコ
2025/日本/124分/カラー/DCP

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