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②.私が思う『その武器、誰のためにある?』

抑止と利権のあいだ
日本の武器輸出から見えた構造の話

第2話
「防衛のため」と「利益のため」は、
同じ話なのか?

前回、私はこう書いた。

「防衛のためと、利益のため——本当に同じなのか?」

制度が動いた。売上が動いた。その2つが同時期に起きている、とも書いた。

でも、なぜそうなっているのかは、まだわからない、と。

今日はそこを、もう少し丁寧に確かめてみたい。

まず、「反論」から始めたい

「武器輸出は抑止になる」
この主張には、根拠がある。

私はそこから始めたいと思う。

批判したいわけではない。この論理を誠実に理解しないと、本当の問いが立てられない、と感じているからだ。

安全保障の基本的な考え方の一つに、こういうものがある。

「同盟国が自衛のための装備を持てることで、紛争の発生を未然に防ぐ」——これを抑止力という。

武器が「使われるから怖い」のではなく、「持っていることで使われなくなる」という論理だ。

この考え方は、戦後の国際安全保障の世界では普通に使われている。日本の防衛政策もこの文脈の中にある。

もう一つある。

「日本の防衛産業が弱体化すれば、技術基盤が失われ、抑止力そのものが下がる」という主張だ。

国内で武器を製造する能力がなければ、有事のとき必要な装備を自前で調達できない。だから輸出で市場を確保し、産業基盤を維持する必要がある——という論理だ。

これも、単純には否定できない。

実際に、防衛産業から撤退する企業が増えているという現実もある。(防衛省資料)

この反論には根拠がある

私はそう認めた上で——ただ、と続けたい。

「ただ」の先に、何があるか?

「抑止のため」という理由と、「産業のため」という理由は、どちらも正当に見える。

問いたいのはそこではない。

2つの理由が同じ制度の中で動いているとき、どちらが「主」でどちらが「従」なのか?
これが、私にはまだよくわからない。

そして、今の制度はその問いに答えていない。

まずは事実を並べてみる。

制度が動いた

武器輸出をめぐる日本の政策の流れを、時系列で整理する。

1967年
武器輸出三原則が制定される。
原則禁止の時代が始まった。

1976年
さらに強化され、事実上の全面禁止となった。

2014年
防衛装備移転三原則に切り替わる。
一定の条件のもとで輸出を認める方向に転換した。

2022年
防衛費をGDP比2%にする方針が閣議決定された。
5年間で43兆円規模の防衛費が動く。

2026年3月
与党が「殺傷武器の輸出を原則可能にする」方向の提言を首相に提出した。(各報道機関確認済み)

約60年間で、制度は「原則禁止」から「原則可能」の方向へ動いている。

これは事実だ。

予算が動いた

防衛費の話をする。

2022年の閣議決定で、防衛費を5年間で43兆円規模に積み上げることが決まった。(防衛省資料)

これが「市場」として何を意味するか?

防衛省の契約は、製造コストに利益分を上乗せする方式で計算される。2023年度の制度改定で、想定営業利益率の上限がそれまでより引き上げられた。(防衛省調達制度改善資料)

端的に言えば、防衛省が払う金額が増え、企業が得られる利益率も改善された。

売上が動いた

次に、企業の数字を見る。

三菱重工業・川崎重工業・IHIの重工大手3社の防衛関連売上高は、2025年4〜12月期で前年同期比26%増となった。(日本経済新聞 2026年2月10日)

日経新聞が集計した3社の防衛関連売上高は、この期間で1兆926億円。2022年度の3社合計(概算8,000億円台)と比べると、規模は大きく拡大している。

ここで私が確認できるのは、ここまでだ。

制度が動き、予算が動き、売上が動いた

この3つが、同じ時期に起きている——それが事実だ。

なぜそうなったのか、どちらが先でどちらが後なのか、は、私にはまだわからない。

因果は断定できない。でも、並走しているのは確かだ。

2つの論理のあいだにあるもの

「抑止」の論理と、「市場」の論理
この2つは、矛盾しない。

備えのための保険と、保険料で動く経済は、同時に成立する。第1話で、保険の比喩を出した。もう少し続けたい。

保険会社が倒産しては困る。保険料で支えることは、合理的だ。

でも——保険の「設計者」と、保険料を「払う人」が、同じ利益を持っているとは限らない。

保険を設計する側は、保険料が増えるほど収入が増える。払う側は、できるだけ安く、必要なときだけ使えればいい。

この2つの利益は、ほとんどの場合は一致する。でも、制度の設計次第で、ずれることがある。

武器輸出と保険の違いは何か?
私には、まだうまく整理できていない。

ただ、この問いは持ち続けたい。

「防衛のため」と「利益のため」は、どちらが主役なのか。制度を見なければ、その答えは出ない。

次回は、その「制度の中身」を見てみたい。

誰が設計したのか。誰が審査するのか。そして、歯止めはどこにあるのか。

そこを確かめることで、保険の話は次の段階に入る。

このエッセイは私個人の問題意識と問いの記録です。「じゃないか」「と思う」と書いた部分は推測です。
事実として書いた部分には根拠を示しています。
武器輸出の賛否を主張する意図はありません。


参照:
・武器輸出三原則(1967年・1976年)/防衛装備移転三原則(2014年):公知の政策事実
・防衛費GDP比2%目標・5年間43兆円規模(2022年閣議決定):防衛省資料
・重工大手3社の防衛関連売上 前年同期比26%増:日本経済新聞 2026年2月10日
・与党の「殺傷武器輸出原則可能」方向の提言:各報道機関 2026年3月
・防衛省調達制度における想定営業利益率改善:防衛省資料(2023年度)
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#武器輸出 #安全保障 #防衛産業 #防衛費 #日本政治 #政策議論

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