【居場所の探索記録】水の底にあった時間に心が動く、宮ヶ瀬ダム
神奈川の水瓶へ
神奈川県の水瓶、清川村にある宮ヶ瀬ダムへ行ってきた。
神奈川県民として、生活の命綱でもあるこのダムには、一度行っておきたかった。
そしてもうひとつ、今は雨不足でダムの貯水率が下がっている現実を、自分の目で確かめたい気持ちもあった。
小田急の本厚木駅で下車し、神奈中バスに乗る。始発から終点まで乗ることになるので、1日乗車券を購入。
神奈中バス、最前列を確保した。
バスに揺られていると、途中から宮ヶ瀬湖が見えてくる。
水位が下がった湖岸には、岩肌が露出し、昔のガードレールや橋の跡まで見えていた。普段は水の底にあるはずのものが、静かに姿を現している。
終点、宮ヶ瀬で下車。
宮ヶ瀬ミーヤ館、水の郷交流館、水の郷大吊橋、湖畔園地。
資料館に置かれていた宮ヶ瀬ダムの歴史の本を、ひとりでずっと読み込んでいた。
この類いのダムの歴史が書かれた本には必ずこんなことが書かれている。
ダムをつくるために移住した人たちの思いが詰まっている、と。そしてその一方でダムに懸ける思いと。
「移住を余儀なくされた方たちの思い」
「夢のダム建設!」
ここは、今は見えない人の人生が残っている場所だと思った。
生活の層が折り重なっている場所。人間の時間が沈殿している場所。
景色は確かに綺麗だけれど、
私の心が動いたのは、風景そのものよりも、時間が染み込んだ風景のほうだった。
歴史が重くて深い。
いろんな人たちの感情が積もっている。喜びも感動も悲しみも虚しさも感じる場所。
清川村周辺は、派手な観光地ではない。観光地化しきっていない土地。それがむしろ、落ち着く。
昼ごはんは、水の郷商店街の一角にある定食屋に入る。
昔ながらの旅館兼食堂のような店で、建物の上にはにはイノシシの剥製が吊るされている。謎すぎる光景だけど私の感性がとてもくすぐられる。
平成初期にタイムスリップしたみたいな空間。好きだ。
ジビエ、鮎、イワナ。
私はイワナ定食を頼んだ。
店内の水槽で泳いでいたイワナを、その場で焼いて出してくれる。さっきまで生きていた魚が、串刺しにされて塩焼きになっている。頭から尻尾まで、丸ごと食べた。
とてもおいしかった。ただし、店内は暖房なし、出入り口筒抜けでクソ寒い。
店員の男性は「かわなめし」の帽子をかぶっていた。
どこから来たの、地元は、車?バス?と、かなり話しかけてくる人だった。ザ、ポジティブ。
都会の店で同じことをされたら、正直かなりうざいと思う。でもこのときは私は、まったく嫌じゃなかった。むしろ少し嬉しかった。
たぶんその瞬間、私は観光客ではなく、その土地の空気の中に座らせてもらっていたんだと思う。
そして野菜の天ぷら盛りをサービスでくれて、お土産にみかんをくれた。
生活圏の人の自然な距離感。土地の内部に触れる体験。
お昼ご飯後、さらに虹の大橋を歩いて渡り、鳥居原ふれあいの館へ。
ふれあいの館ではソフトクリームを食べて、地元の手作り味噌を買った。
宮ヶ瀬は、景色が綺麗な場所というより、時間が静かに積もっている場所だった。
また来る理由ができた気がする。
