いじめの「長期的影響」それでもなお続く加害者擁護 ― 変えるべきは学校の構造
Impact of Bullying in Childhood on Adult Health, Wealth, Crime, and Social Outcomes という論文。この研究は、子どもの頃にいじめに関わった経験(被害、加害、両方)が、大人になってからの健康・経済状況・社会関係にどう影響するかを追ったものです。
いじめの「被害者」や「被害と加害の両方を経験した子ども」は、成長後、健康状態が悪化し、経済的に不安定になり、社会関係でつまずきやすい――という傾向が統計的に明らかになっています。つまり、いじめは「子どもの頃だけの問題」ではなく、その後の人生に深く影を落とす「長期的な社会問題」なのです。
しかし、それにもかかわらず、現場ではいまだに「加害者擁護」が横行しています。学校や教育関係者は「加害児童を守る」ことで、トラブルを見えにくくしようとする。一方で、この研究が示すように、いじめの加害経験も将来にわたる大きなリスクを孕んでいます。なぜ、それでも変えようとしないのでしょうか。
これには、いくつか原因があるように思えます。
まず、「いじめ=子どもの一過性のトラブル」という誤った認識。いじめは通り過ぎるもの、いつか終わるもの、という考え。
次に、「学校や教育の評価」「保護者間のトラブル回避」「組織の体面を守る」ことを優先する圧力。事実をきちんと認めれば責任が生じる — それを避けたいという意識。
さらに、「加害者ケアの欠如」です。被害者支援は語られても、加害児童の背景や心の問題、環境を見つめ直す機会はほとんどありません。精神医学界でも「加害児童への心理・社会的支援」の必要性が指摘されているにもかかわらずです。
では、どうすればこの構造を変えられるのでしょうか。
① いじめを「個別の問題」ではなく「社会の問題」として捉える
学校だけでなく、地域、教育委員会、保護者、専門家を巻き込んで、長期的に支える仕組みを作る。
② 加害者支援(ケア)を制度化する
加害児童に対するカウンセリング、生活指導、家庭支援などを義務化。被害者と同時に加害者の「更生」も視野に入れる。
③ 透明性と説明責任を求める
いじめが起きたら、学校は調査内容・対応を詳細に開示し、保護者や外部機関にも報告する。隠蔽やごまかしを防ぐ。
④ 社会全体で「いじめの後遺症」を理解する
研究結果を広く伝え、「いじめは人生に影を落とす」という認識を、教育だけでなく社会全体に根付かせる。
いじめ問題を「未来の命と人生を左右する重大な社会問題」 として捉える——この視点がなければ、ただの口先だけの対応で終わってしまう。
私たち大人が、声をあげ続けなければならないと強く思います。
