ストライカー / Stryker(SYK)決算分析|売上251億ドル突破、5年連続2桁成長【2025年10-K 日本語解説】
この記事は、SEC EDGAR(米国版の有価証券報告書データベース)に提出された10-K(年次報告書)をもとにしています。日本語訳・分析を加え、企業の実態を深く掘り下げました。
手術支援ロボットの世界市場は2025年に約137億ドル規模。2030年には271億ドルへ倍増する見通しです(MarketsandMarkets、CAGR約14.7%)。この成長市場で整形外科ロボット首位を走るのがStryker(ストライカー)。同社の「Mako」は累計200万件超の手術実績を誇ります。2026年2月にはハンドヘルド型「Mako RPS」も投入しました。株価は直近1年で約1%の下落(381ドル前後)と横ばい。3年CAGRは約12.4%と堅調です。10-Kから実力を紐解きます。
今回決算のまとめ(3行)
・医療機器大手Strykerの2025年売上高は251.2億ドルで過去最高、有機成長率+10.3%で5年連続2桁
・営業利益率は19.5%(+3.2pt改善)、調整後EPS13.63ドル(+11.8%)と利益の質が大幅向上
・血管治療のInari買収とMakoロボットの適用拡大で成長基盤を強化
会社概要
一言でいうと、手術ロボットと人工関節で世界トップクラスの医療機器メーカーです。1941年創業。「外科・神経技術」と「整形外科」の2セグメント体制で、約75か国に展開しています。年間1億5,000万人以上の患者に製品を届け、売上の約76%が米国市場です。
今期のポイント3つ
ポイント1:営業レバレッジが本格化、利益成長が売上を上回る

売上の伸びを利益が大きく上回る「営業レバレッジ」が鮮明になった年です。GAAP営業利益は48.9億ドルで+32.5%。2024年の脊椎事業減損・売却損(合計8.2億ドル)の消滅が主因です。一方で調整後営業利益率も+100bps改善の26.3%となり、実力ベースでも収益力が向上しています。営業CFは50.4億ドルと過去最高を記録。大型買収後もキャッシュ創出力は健全です。
ポイント2:血管領域+50.6%、セグメント構成が進化

外科・神経技術セグメントが156.5億ドルで+15.7%と牽引役です。血管領域は+50.6%の急成長を記録。Inari Medical買収で脳卒中・静脈血栓治療デバイスが加わりました。整形外科は脊椎売却の影響で+4.3%。ただし主力の膝関節+8.5%、股関節+9.5%、外傷・四肢+12.6%は堅調です。競合のJ&J整形(2024年:92億ドル、+2.4%)やZimmer(同77億ドル、+3.8%)を大きくリード。Strykerの成長率の高さが際立ちます(※競合は2024年度数値)。
ポイント3:2026年ガイダンスとMakoロボットの進化

経営陣は2026年ガイダンスとして有機売上成長率8.0〜9.5%、調整後EPS 14.90〜15.10ドルを提示。中央値8.75%はMedTech業界平均の約2倍です。Makoロボットは2026年2月にハンドヘルド型「Mako RPS」の限定発売を開始。従来のアーム型より導入ハードルが低く、未導入施設への浸透が見込まれます。配当は1株あたり3.52ドル(利回り約0.9%、+4.8%)に増額。
最大のリスク:Inari買収ののれん減損と関税影響
49.6億ドルで買収したInariの統合が最大の不確定要因です。2025年10月の減損テストで、公正価値が帳簿価額をわずか12%しか上回っていません。割引率が+1%上昇するだけで公正価値が14%低下し、1.98億ドルの減損が発生する感度です。
・監視指標:のれん帳簿価額32.0億ドル / 余裕12%(約3.8億ドル)
・閾値:余裕10%未満で減損リスク顕在化
・解釈:現在は辛うじてクリアだが、金利上昇や売上未達で即座に減損圏内
関税リスクについては、米国政府が2025年に中国・EU向け新関税を発表済みで、報復関税の拡大も進行中です。同社は「すべてのコスト増を転嫁できるとは限らない」と10-Kに明記。OECD Pillar 2(国際最低課税15%)は2026年1月に新ガイダンスが公表され、各国が国内法を順次整備中。現在の調整後実効税率15.1%からの上昇は2027年以降に顕在化する見通しです。
筆者の見解
判断:様子見(中長期は強気)
トレーリングPERは約45倍(2月24日終値381ドル÷GAAP EPS 8.40ドル)。PEGは約1.5倍(5年成長率約10%想定)です。MedTech大手としてはやや割高ですが、5年連続2桁成長とMakoの優位性で正当化できます。配当利回りは約0.9%(配当性向約40%)で、増配は継続中です。
Inari関連の一時費用(調整項目計20.9億ドル)は「一時的」と判断します。調整後ベースで利益率が改善傾向にある点を重視し、Inari統合の進捗が確認できる2026年Q2決算が判断の目安です。
今後の事業見通し
Makoロボット拡大(確度:高)
人工関節手術のロボット化率はまだ低く浸透余地大。ハンドヘルド型で導入ハードルを下げ、未導入施設を開拓。全世界3,000台超のインストールベースで競合をリード。
血管・神経領域(確度:中)
Inari買収で対象市場は150億ドル(VTE領域)。減損余裕12%が課題。2026年Q2の売上トレンドが試金石。
デジタル手術プラットフォーム(確度:低)
術中ナビゲーションやデータ分析技術に投資中だが収益貢献は限定的。全社ERP刷新中でIT投資リスクも残る。
まとめ

5年連続2桁有機成長とMakoロボットの競争優位は本物です。短期はInari統合と関税リスクの見極めが必要です。中長期では「手術ロボット×M&Aで成長し続けるMedTechの王道銘柄」として注目に値します。
免責事項: この記事は筆者個人の見解であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
※記事中の円換算は1ドル=156円(2026年2月時点)で計算しています。
※手術ロボット市場規模はMarketsandMarkets(2025年12月)の予測値を参照 ※Mako累計手術件数はStryker 2025年Q3決算説明会資料を参照
※競合各社の売上データはBecker's Spine Review(2025年4月)の集計値を参照(2024年度実績)
※2026年ガイダンスは2026年1月29日のStryker決算発表資料を参照
※株価・PER等のバリュエーション指標はYahoo Finance(2026年2月時点)を参照

