読書記録:魔女と猟犬(ガガガ文庫) 著 カミツキレイニー
【滅亡に瀕した国で、厄災の魔女達の慟哭が響き渡る】
【あらすじ】
農園と鍛冶で統治されるキャンパスフェロー。
暮らしは貧しくとも穏やかに生活する民。
しかし、闘争と魔法の王国の領主アメリアが仕掛けた戦火で、多くの魔術師を利用して領土を奪おうとする。
キャンパスフェローは滅亡の危機。
それを案じた国王、バド・グレースは大陸全土に散らばる凶悪な魔女たちを仲間にして、王国アメリアの有する魔術師と対決すること。
そんな佳境の時に、騎士の国であるレーヴェにて鏡の魔女が拘束されたとの報せが入る。
レーヴェの王を誘惑し、王妃の座に就こうとしていた企みが破綻したからだ。
領主のバドは 鏡の魔女を仲間にすべく、従者たちと共に騎士の国へと旅立つ。
その一行の中に、黒犬と呼ばれる少年、ロロはいた。
ありとあらゆる殺しの技術を仕込まれたキャンパスフェロー随一の暗殺者を手なづけていくことになる。
侵略の戦火に怯む小国キャンパスフェローで、数多の魔術師を独占する王国のアメリアに対抗すべく、全土に散らばる凶悪な魔女達を集める物語。
人が勝手に抱く先入観と決めつけ。
周りがああいうから、これはこうなんだよと勝手に思い込む。
実際に自分の目で確かめもしない、人間が元来持つ弱さとエゴ。
しかし、だからといって、実際に自分の目で確かめたとしても、その噂や評判が真実か嘘なのか、思い描く期待通りになるとは限らない。
むしろ、その真相の醜さを知ってしまったせいで、心が血を流して、泣き叫ぶ結果になり得てしまう。
魔女。
それは力の洗礼も代償もなく、魔法を乱用して、私利私欲の限りを尽くし、人々を災厄に陥れる悪女。
この世界には、そんな魔女が七人も存在する。
ただ、伝え聞く魔女の風貌と在り方には、どこか乖離と違和感があった。
国同士の騙し合いや謀略で荒む混沌の時代で。
起死回生の作戦を執るべく、領主のバドは騎士の国レーヴェにて、鏡の魔女を迎えに行く。
魔女は見た目どおり、怪しくて狂気を秘めた存在。
そんな魔性の存在を、国を守るとはいえ仲間にするなど、バドの陛下はその奇策を反対しつづけた。
しかし、それでもバドは伝え聞く魔女の残虐さで判断せず、自らの眼で魔女の真実を知りたかった。
そんな魔女集めと真実を辿る旅路は、黒犬と呼ばれるロロの卓越した暗殺術を以てしても。
各国の災厄の魔女達との闘争と和解は、泥の中を這い回るような息の詰まる終わりの見えない戦い。
信頼していた仲間が裏切り、敵国の刺客が策謀を道中に仕掛ける。
そんなあぜ道を齷齪と乗り越えて、レーヴェへと辿り着いたバドたち。
そこで魔女と呼ばれる女性が起こした、国王結婚式での来列した国の重鎮たちの虐殺事件。
その真実の決着を巡る、次期国王の選任と混乱に巻き込まれてしまう。
「魔女は忌むべき存在であり、処刑せよ」という世論の声と、事前に取り決めた交渉どおりに囚えた魔女をパドに引き渡すべきなのか。
バドとレーヴェ王は民の声に耳を傾けながらも、話し合いと腹の探り合いを慎重に進めていく。
この虐殺事件の真相の鍵を握るのは、レーヴェ王の姫である、行方不明中のスノーホワイトと虐殺を引き起こした新たな妃になる予定だったテリサリサ。
しかし、そのクーデターとエニグマを紐解く中で、悲惨な最期を迎えてしまったパド。
そんな彼の死に目に立ち会いながら、ロロはテリサリサとスノーホワイトと接触を図り、この国の影に潜む本物の邪悪へとたどり着く。
パドに託された意志を引き継いで、本性が曖昧模糊である鏡の魔女、テリサリサを仲間にする為の交渉に挑む。
そんな接触の中で初めて知る事になる、今まだ散々と厄介な扱いをされてきたからこそ、普通の生活と平凡な愛を求めようとしていた、鏡の魔女の切なる願い。
世に忌むべき存在、生まれながらにして世界からのハズレ者。
ロロも鏡の魔女もそんな風に、周りから揶揄されてきた。
しかし、真実と噂は勝手にひとり歩きしている。
ロロは、民から畏怖される代々、継承される暗殺者一族の末裔なのに、人を殺すのに躊躇いがある。
鏡の魔女であるテリサリサも、本質を見通す能力を秘めながらも、それをはぐらかす。
二人は国は違えど、残された復讐と失った希望を取り戻したい意志は同じだった。
そんな二人を、人々の評判に惑わされずに見極めて愛そうとするバドとレーヴェ王。
バドとレーヴェ王は真実を見極める眼を持っていたし、悪と忌避される者が持つ善性を信じていた。
しかし、それ故に、それが仇となり人間が本来持ってしまっている悪意や邪に気付くことが出来なかった。
だからこそ、容赦なく命を奪われてしまった。
それを悔やむ暇もなく何とか、テリサリサを仲間に引き入れたロロだったが、仕えるべき主君はもういない。
しかも、依然として敵国であるアメリアが率いる魔術師たちの侵略は止まらない。
必死に生きようと足掻けば足掻くほど、陰鬱な最期を迎えてしまう。
その見えない悪意によって、心も身体も血を流す。
そんな真実に気付いたロロとテリサリサは、共にむせび泣く。
しかし、絶望に暮れる時間はもう残されてはいない。
祖国を守る為に、手を組んだ二人に託された世界に散らばる、残り六人の魔女を仲間にして、アメリア軍勢を返り討ちにする使命。
