【アプリで出会った“写真詐欺のプロ”】それでも、楽しかった。
マッチングアプリを始めて少し経った頃、僕はある女性とマッチした。
写真はすごく可愛くて、雰囲気もやわらかくて、「こういう人と出会いたかった!」って思った。
メッセージのやり取りも楽しくて、笑いのツボが合う感じ。
数日後、「よかったらご飯でも行きませんか?」という流れになった。
正直、少し浮かれてた。
当日。待ち合わせ場所に着くと、ひとりの女性が手を振ってくれた。
でも、一瞬わからなかった。
写真と全然違う…というか、**“別人”ではないけど“別モード”**だった。
写真の彼女は“柔らかい光の中の女神”みたいな雰囲気。
実際の彼女は、素朴で、ちょっと人見知りそうな普通の女性。
最初は正直、少し戸惑った。
でも「せっかくだし、普通に話してみよう」と思って、ランチへ行った。
話してみると、すごく気の使える人だった。
僕が話を詰まらせると「わかる〜」って笑ってくれたり、店員さんにも丁寧にお礼を言ったり。
写真の印象とは違ったけど、“人としてちゃんとしてる”感じがして、むしろ好感が持てた。
デートの帰り道、「写真とちょっと違うと思ったでしょ?」と彼女が笑いながら言った。
僕が言葉に詰まると、「よく言われるの。でも盛るのが楽しくて、つい(笑)」と正直に話してくれた。
なんかその瞬間、妙に好きになりかけた。
正直に言えるって、けっこう勇気いることだと思う。
結局、その後は続かなかったけど、
帰りの電車で思ったのは「写真詐欺って、悪意の問題じゃないな」ってこと。
誰だって、少しでもよく見せたくて写真を選ぶ。
僕だって、あの“奇跡の1枚”をずっと使ってた。
マッチングアプリって、結局は“期待と現実”の中で人と出会う場所。
でもそのギャップも含めて、ちゃんと向き合えば意外と楽しい。
彼女の笑顔は、写真より少し不器用だったけど、
あの日見たその笑顔のほうが、ずっと本物だった気がする。
