文芸神、カリオペー、その表情
文芸神の9姉妹であるムーサの逸話は、様々なギリシャ神話で伝えられます。
一般的には、記憶の神ムネモシュネの9人の娘とされ、アポロンが長兄となって連れ帰りオリンポスの神々の前でそれぞれの技芸を披露して、大喝采を浴びた話が有名です。
ちなみに音楽musicの語源は、ギリシャ語の、ムーサの技、から。
彼女たちは、文芸の守護神として多くの芸術家のモチーフとなってきました。例えば、フランスの中世の詩人、ロンサールは詩「己のムーサに」を始め、様々にムーサを詠っています。
長女で叙事詩を司るカリオペーは、多くの画家に描かれてきました。
その中でも、日本の泉屋博古館に収蔵されているギョーム=セニャックの「ミューズ」に、私は最も心惹かれます。
明示はされていませんが、筆と石板を持ち月桂冠をしていることからカリオペーだろうとされます。突如、想いついた詩想の天啓に、はっとしているその表情は紛れもなく叙事詩の女神です。優れた画家しか描けないであろう絶妙な筆致で、素晴らしく表現されています。
私も何度も何度も模写しましたが、決して近寄れない微妙さがあることに気付かされるばかりでした。
是非、一度、ご覧になってください。
