もうひとつの7月20日の物語。1957年フランス、夏の約束。
スマートフォンを数回タップすれば、一瞬で連絡が繋がり、既読がつく現代。今日は、そんな忙しい日常のスイッチをそっとオフにして。
今から69年前、1957年のフランス。
ある眩しい夏の午後へと時間を巻き戻し
旅してみませんか。
私の手元に、
一枚の美しいヴィンテージカードがあります。
表面に描かれているのは、
クラシカルな色彩で描かれた、
気品ある薔薇のリース。
その中央には、ゴールドの優しい文字で
"Bonne fête"(名前のお祝いの日、おめでとう) と記されています。
かつてのフランスには、365日の各日に守護聖人が割り振られていて、自分の名前にゆかりのある聖人の日を、まるで「もうひとつのお誕生日」のように家族や友人と温かく祝い合う美しい風習がありました。
このカードの裏面に流れるような青いインクで綴られていたのは、まさにその特別な日を祝う、いとこのジャンヌから、大好きなマドレーヌへの、飾らない夏の便りでした。
*
消印の代わりに書き込まれた日付は、
「1957年7月20日」。
当時のフランスは、誰もが心待ちにする本格的な夏のバカンスが始まろうとしている季節。 手紙を読んでいると、古いインクの行間から、当時の賑やかで温かい家族の気配がふわりと立ち上ってきます。
「アンドレのそばにいる機会があったので、彼と一緒にあなたにお祝いを伝えたくてペンを執っています。何よりも、健康でいてね」
「カミーユにも、少し遅れてしまったけれど同じくお祝いを。遅くなってごめんなさいね」
ジャンヌさんの周りには、今きっと家族や親戚が集まっているのでしょう。
実は、カードの中に一箇所だけ、向きの異なる筆跡と署名も確認できます。
「あ、マドレーヌのお祝いの日が近いね」
「カミーユへのお祝い、遅れちゃって悪かったな、よろしく伝えて」
なんて、弾むようなおしゃべりが聞こえてくるようです。
そして、手紙は当時のリアルな「夏の空気」へと移り変わります。
「さて、あいにくのお天気になってしまいました。でも、少し涼しくなって過ごしやすくなりましたね。けれど、田舎(そちら)にとっては、あまり気分の晴れないお天気かしら……」
うだるような夏の暑さの中、ふと降った雨。
「涼しくなって過ごしやすくなった」とホッとする都会暮らしのジャンヌさんと、「でも、美しい自然が広がる田舎のあなたの方では、この雨はちょっと退屈なものかしら」と、遠く離れた場所にいる大切な人の窓辺の景色を思いやる優しさ。
誰かを想うとき、私たちはその人が今見ているであろうお天気まで、愛おしく心配してしまうものなのかもしれません。
*
さらに手紙の後半、ジャンヌはこれからの楽しい夏の計画を、弾むような筆致でこう続けます。
「実は私の姉も義理の弟も今こちらに来ていてね、彼らは土曜日にアルザスへ出発するの」
「バカンスに入ったら、また改めて、
もっと長くお手紙を書くわね」
今はみんなが集まっていて、ちょっとバタバタと急いで書いているから。 でもね、もうすぐ始まるバカンスで、たっぷり時間ができたら、あなたのために便箋を広げて、もっともっとたくさんのおしゃべりを書くからね。
その、待つ時間さえも愛おしい「贅沢な約束」。
メールもSNSもない時代だからこそ、この「次に届く長い手紙」を心待ちにする時間のなかに、どれほど豊かで美しい心の余白が流れていたことでしょう。
*
今夜は、1957年の夏を旅したジャンヌの言葉をお守りに、自分自身の心にも、ほんの少しの「バカンス」をプレゼントしませんか。
「今すぐじゃなくていい。
落ち着いたら、もっとゆっくり話そうね」
そんな風に誰かと、あるいは自分自身と、
贅沢な時間を約束する優しさを。
このまばゆい夏の記憶と
家族の温もりを宿した薔薇のカードは、
本日よりショップにて
大切にお披露目しております。
日々の暮らしにそっと寄り添う、
あなただけの「眺めるお守り」になりますように。
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