アランを編むことは、祈ること。―Standúnの白いハンドニットが辿ってきた長い旅
1.このニットとの出会い

この店を始めるにあたって、
最初に迎え入れるアランニットは、
できるだけ“王道”でありながら、
その奥に物語を秘めた一着にしたい
と思っていました。
手に取ったときに、まず感じたのは、
しっかりとした重みと、やさしいやわらかさ。
まるでお父さんとお母さんのよう。
袖を通すと、
その重みが不思議と安心感に変わる。
家事や仕事で張り詰めた心身を、
優しく解放してくれるようなシルエット。
そして、乳白色とも言える、やわらかな白。
派手さはありません。
けれど、静かに視線を引き止める力がある。
このニットは、
アイルランド西部、ゴールウェイ近郊の老舗
「Standún」によるハンドニットです。
2.Standúnという「場所」の重み
Standúnは、アイルランド西端、
ゴールウェイ州スピダルにある小さな村の老舗です。
観光客向けの土産物店、
という言葉では、どうしても足りない。
ここは、アイルランドの伝統文化を
「残す」「売る」「世界に伝える」ことを、
長い時間をかけて続けてきた場所です。
その姿勢は、
ニットに付いた小さなタグにも表れています。
そこには、
“The Republic of Ireland”
と記されています。
多くの製品が
単に “Made in Ireland” と記す中で、
あえて「共和国」と書く。
1922年の独立以降、
自分たちがどの国であり、
どんな歴史を背負ってきたのか。
その自負が、わずか数センチのタグに
静かに縫い込まれているように感じます。

3.“Made in Ireland for RICH’S” が語る、海を越えた時間
このニットには、
もうひとつ、特別な背景があります。
“Made in Ireland for RICH’S”と書かれた、
もうひとつの白いタグ。
RICH’S(リッチズ)は、
かつてアメリカ南部を代表した高級百貨店です。
アイルランドの静かな家庭で編まれたニットが、
海を渡り、
アメリカの都市のショーウィンドウに並ぶ。
そして、半世紀近い時間を経て、
いま日本で、私の手の中にあります。
数千キロの距離と、
いくつもの持ち主を経てきたであろうこの一着。
ヴィンテージを扱うということは、
「物」を仕入れることではなく、
時間を預かることなのだと、
改めて思わされました。
4.編み目を読む――彫刻のようなリズム
このStandúnのニットには、
アランニットの代表的な模様が
はっきりと刻まれています。
ハニカム(蜂の巣)。
勤勉な労働が、やがて実りとなって
返ってくることを願う模様。
ケーブル(綱)。
海へ出る人びとの、
安全な航海と無事を祈る象徴。
これらの模様が、まるで彫刻のように深く、
立体的に浮かび上がっているのは、
ハンドニットならではの糸のテンションと
手加減があるからです。
そして、よく目を凝らすと、
この一着には不思議な「揺らぎ」が
あることに気づきます。
例えば、この袖を見てください。
リングが連なっているのがわかりますか?

通常は「蜂の巣」の形に整えられるはずの模様が、
ここではまるで**柔らかな「リング(輪)」**が
連なっているように見えます。
それは途切れることのない「永遠」や、
家族の絆を象徴するような、温かなリズム。
あるいは、本来なら「成功」を象徴する
完成されたダイヤ柄を描くはずのラインが、
交差することなく、
あえて「ギザギザ」のまま進む道を選んでいます。
アラン諸島の厳しい断崖のようにも、
あるいは、完璧ではないからこそ愛おしい
私たちの人生の道のりのようにも見える、
その自由な編み目。
伝統的なルールをなぞるだけではなく、
編み手がその時の感性で、
あるいはアメリカの RICH'S からの
特別なオーダーに応えて
紡ぎ出した、この世に二つとない旋律。
均一ではないからこそ、編み目に呼吸が残る。
それが、このニットに静かな、
しかし確かな存在感を与えています。
5.次に、この祈りを纏うあなたへ
忙しい日々の中で、
「守る」ための服を選ぶことは、
そう多くないかもしれません。
けれど、
この白いアランニットを羽織る時間が、
ほんのひとときでも、
自分を内側へ戻すきっかけになったら。
このニットは、
誰かに見せるためではなく、
着る人を守るために編まれてきた服です。
私の好きなフランス語に
「Patrimoine(パトリモワンヌ/遺産・継承)」
という言葉があります。
単に古いというだけでなく、
未来へ繋ぐべき価値。
このStandúnのニットは、私にとってまさに、
アイルランドから届いた大切なパトリモワンヌ。
着る人を守る**お守りニット**として
縁ある方にお迎えいただけますように。

ここに綴った物語の主人公である
アランニットは、
「白と祈りの洋品店」にて、
次の方との出会いを待っています。
ケルト的な不思議な図案、
そして「なりきらない模様」の愛おしさ。
写真やサイズなどの詳細は、
下記のオンラインショップにて
丁寧にお伝えしています。
あなたの日々に寄り添う、
「お守り」の一着となりますように。
▼この物語の主人公(ニット)に会いに行く
【お守りニット】Standún 一点物ハンドニットアラン|ケルトの守護獣と、米国百貨店別注の品格
祈りの力を宿した【お守りニット】を、
あなたの、いまの暮らしの中へ。
▼アランニットがなぜ白(生成り)なのか、
その背景をに辿る有料記事も、もしよかったら。
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