数学に愛された少年(7)
「啓太くんは全く正常です。何の問題もありません。ただし、とてつもない才能があります。それを私としてはなんとか伸ばしてあげたいのですが、学校教育という現場では、依怙贔屓になってしまうので、特別な指導はできなくて困っています。」
「啓太は別に特別にならんくてもええやろ。普通が一番やで。」
「父さん、そう言うけど、才能は伸ばしてやったほうがええんやないの?」
「母さん、そりゃそうやけど、どうすりゃええんやよ!!俺らには無理やよ!!」
「困りましたね...ご近所に学校の先生やっていた人とかおられませんか?」
「こんな山村に先生やってた...あっ!一人おる!!」
「父さん、ヒロナカ先生のこと?」
「そう、確か高校で数学教えとったとかおらんとったとか...」
「もしかして、弘中毅先生ですか?」
「先生、よう名前まで知っとるな。」
「私、弘中先生の教え子なんです。」
「もし、その人が私の知っている弘中先生だったら問題解決です。弘中先生が教えていただけるのなら大安心です。当時、弘中先生の授業に出ていた生徒はみんな数学好きになりました。弘中先生が高校3年の担任を受け持つことが多かったのですが、理学部志望がとても多く、数学科へ進んだ生徒の数が異常でした。ある意味、『数学の教え魔』でした。」
「へーーー...」
「人は見かけによらんな...」
「どうでしょう、今日の家庭訪問は啓太くんで終わりなので、早速、弘中先生のお宅へ行ってみませんか?」
「そんな大先生が、啓太に算数教えてくれるやろか?」
「そもそも、弘中さん今は「家庭菜園」に夢中で、啓太に算数教えとる暇なんてあるんやろかなぁ...」
「私の知っている弘中先生なら絶対大丈夫です。先程も言ったように弘中先生は『無類の教え魔』です。早速行きましょう!!ここから近いのですか?」
「先生、ちょっと待ってな。手土産に野菜とって来るで、10分だけ時間ちょうだい。」「かあさん、俺も行く!!先生、ここで待っとって下さい。」
「あのっ...行っちゃった(笑)啓太くんがせっかちなのは親譲りなのね(笑)」
