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数学に愛された少年(13)

「............................」

「先生どうしたん?」
「いや、啓太、いま啓太が言うたことはとてもとても凄いことなんやよ。実は、平行な直線は交わることもあるんやよ。先生が嘘ついてごめんな(冷汗)」
「えっ...やっぱり交わる時もあるんやね(笑)よかった(笑)」
「平行な直線が交わらやんのは、まっ平らな板の上での話なんやよ。啓太が普通の学校で習う算数や数学は、このまっ平らな板の上で考えとるんや。」
「でも、地球は丸いんやろ(笑)」
「そうや。まっ平らな地面っていうのはこの世にはなくて、実は丸いけど、大きすぎて平らに感じるだけなんや。」
「じゃあ、丸い地球とまっ平らな板って、二つの算数があるってことでええの?」
(この子はどこまでも論理的やなぁ...デカルトの言う"明晰判断"とはこのことか...)

弘中先生は悩みます。啓太くんが異常な――まさに異常としか言いようがない――数学の才能を持っていることは明らかです。啓太くんは、弘中先生がかつて教えてきた俊英達とは一線どころか二線も三線も画する存在です。今までの教え子たちへの教育方法で啓太くんの才能を本当に伸ばすことが出来るのか...先生の頭の中で、色々な考えが巡ります。

「このまま啓太くんの思うがままにやらせたほうがええんかな?」
「それやと我流に陥って、遠回りすることにならやんかな?」
「下手に教えると、型にはめてまい、能力を十分に発揮させることができんようにならやんかな?」
「.................!そうや!啓太くんに足らやんのは『道具』やないか?」
「方程式、三角関数、ベクトル、行列....いろんな道具が数学にあることを教えてあげたら、啓太くんは道具を使ってもっと自由に遠回りせんで、数学の力が伸ばせるんやないか?」

「先生?また考え事?」
「おっ、すまんすまん。啓太は自分で色々なことを試して、新しいことを発見するのが好きなんやね?」
「でも、僕が発見したと思ったことは、誰かが先に発見してるみたいで、それやったら、先に教えてもらっといたほうがええような気がしてるんや(笑)今日弘中先生に色々教えてもらってよかったと思っとる。」
「そうか、そうか...(笑)、、、おやおや、もうこんな時間か(笑)。啓太、そろそろ今日は終わりにしようか。来週の土曜日の3時にまた来てくれるかい?」
「えっ...明日、日曜日やで明日も来てはアカン?」
「アカンことはないけど、算数だけやのうて、友達と遊んだり、お手伝いするのも啓太には大事やで...。」
「分かった。じゃあ来週な。それまでにまた何か発見してくるで(笑)。」
こうして1日目の弘中先生との勉強会が終了しました。"等差数列"・素数・"非ユークリッド幾何学"を自分で発見した啓太の能力について先生は振り返ります。
「恐れ入ったなぁ。ガウスが1から100まで計算したのは7歳、啓太は8月生まれやで、今6歳やないか?ガウスより若うして等差数列を理解しとったことになる...。」
「さて、数学の道具を教えるっていうても、どこから手をつけるのがええやろか?........せや!啓太のお父さんが持っとる関数電卓がええぞ。関数電卓なら√もsinもcosもtanもある。この記号の意味を順番に教えるだけでも価値がある。早速啓太のお父さんに連絡や(笑)。」

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